菅内閣の発足から1か月が過ぎた。「縦割り打破で規制改革」「デジタル庁新設」「不妊治療への保険適用」「携帯料金大幅値下げ」……さてどれが国民受けするのか? 「やるべきことをスピード感を持って、躊躇(ちゅうちょ)なく実行に移す」就任1か月の9月16日、菅義偉首相が取材に答えた。これまでの日本政治での、日本社会での問題点を解決すべく『スピード感』を意識している。

 これらの一環として、政府が行政手続きのうえで「ハンコ」使用の廃止を進めている。民間企業をはじめ多くの地方自治体でも電子化の波が『スピード感』をちらつかせながら押し寄せている。

老舗ハンコ店の「印影」サンプル
老舗ハンコ店の「印影」サンプル(神戸・新居文刻堂 提供)

 9月25日に河野太郎規制改革担当大臣が「正当な理由がない行政手続きについては、『ハンコをやめろ』ということを押し通そうと思う」と述べた。河野大臣によると、押印を求める行政手続きは1万1000種類もあり、このほかにも添付の書類で押印を求める手続きがあるという。10月9日には上川陽子法務大臣が、婚姻届や離婚届の押印の廃止を検討していることを明らかにした。さらには確定申告や保険料控除などの税務手続きにも……。

角印
角印の趣 ハンコの源流は中国とされるが・・・(神戸・新居文刻堂 提供)

 日本は世界でもトップクラスの「ハンコ文化」の国。この源流は中国にあるとされるが、その中国も『脱・ハンコ』が進み、韓国でも根付かなかったため、世界的にハンコ文化が生き残っているのは日本と台湾だけ。ただ、日本のハンコ文化も100円ショップで「三文判」が売られるようになってから衰退の一途をたどっていると言っても過言ではない。

 街の受け止めは? 法的に『脱・ハンコ』は問題ないのか? 神戸の老舗印章店はどう受け止めたか? ハンコと書に関わる人はどう思う?「ラジトピ」がシリーズで送る。

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姫路駅前
姫路駅前「『ハンコ』そのものに対しての批判はダメ!」

「『ハンコ』、大人のステータス?」(姫路市・40代男性 自営業)
『脱・ハンコ』必要ないと思うことが多いですが、ハンコがあったほうがいい場面もあるかなと思っています。議論されているのは、ハンコを押す必要がないと思われるものに慣習として押印することだったはずですが、『ハンコ』そのものに対しての批判になってきているように感じます。『ハンコ』って嗜好要素も含めた「商品」としての面もあると思うんですが。大人のステータス的な意味合いもあるかな。

神戸・三宮
神戸・三宮「海外じゃサイン文化でしょう?」

「花押のような『ハンコ』はどうでしょう?」(神戸市東灘区・30代女性 事務職)
『ハンコ』文化は好きです。自分のオリジナルのものがあれば。たとえば「花押(かおう)」。政治家が記すサイン。かつては戦国武将も使ってたじゃないですか。日本のこういう文化は必要です。ほとんどの書類にハンコを押すのはどうかと思います。何でもかんでもハンコは面倒くさい。省けるところは省くなり、工夫すれば仕事をスムーズに進めることができると思います。海外ではサイン文化でしょう? それでいいんじゃないんかと思う。

花押
「花押」小野道風(左側・一番上)・後鳥羽天皇(右側・一番下) 書道家・繁本香菜さん提供

「ある意味、覚悟する意味で」(大阪市淀川区・30代男性 音楽教師)
絶対的に必要です! いままで真剣に考えてなかったですが、今回の河野大臣の発言で(ハンコの是非について)意識はするようになりました。日本にハンコが必要、という固定観念はなかなか崩れない。便利になることがすべてではないと思うんですよ。少し無駄かな?という作業も必要ですよ。簡略化がすべてではないです。ハンコを押すというのは覚悟とか責任とかを問う、そういうけじめをつける瞬間なのかなと思います。

大阪・梅田
大阪・梅田「ハンコを押すことは覚悟とか責任の自覚」

「法的にはどうなんでしょうか?」(西宮市・20代女性 私立大学3年)
効率化になるとは思いますが、必要な『ハンコ』もあると思います。銀行届出の実印とか廃止になったら、好き放題されそうな気がします。法的にも必要な場面は多いと思うんです。私は大学で歴史を学んでいますが、そもそも、署名の簡略化のためにハンコができたという歴史もありますし。

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 日常生活やオフィスワークでは必要ないという意見もあるが、契約ごとをはじめ法的な手続きなど、日本でハンコを大胆に除外して本当に大丈夫なのか? 次回(10月22日)は藤本尚道弁護士に法的な観点でハンコの是非を聞く。