1976年の5月2日、ハラマ・サーキットで行なわれたF1スペインGPで、前例のないF1マシンがデビューした。ティレルP34である。このP34は前輪が4つ……合計6輪を持つF1マシンである。

 当時のF1は、ほとんどのマシンがコスワースDFVエンジンとヒューランド製のギヤボックスを採用していた。そのため、ライバルを出し抜くため、各チームは様々なアイデアを生み出そうとしていた。

 そんな中、ティレルのテクニカルディレクターのデレク・ガードナーは、空気抵抗を削減するために、小型化したフロントホイールを4つ搭載し、その全てをフロントウイングの後方に隠すアイデアを思いついた。その上、マシンの俊敏性も向上させることを目指したはずだ。

 10インチに小径化されたフロントホイールをコントロールするため、ステアリングコラムを前方のフロントホイールのアクスルに取り付け、ベルクランクの構成を使って後方のフロントホイールを操舵した。

 さらにフロントホイールが4本になることで、ブレーキングも改善することができたはずだ。ただ、その冷却は頭痛の種である。この問題を解決するためには、多くの問題が存在していた。

 また、前もしくは後ろのフロントホイールいずれかが、先に負荷が抜けたり、ロックしてしまったりした場合には、ホイールベースが変わってしまう可能性があるということにもなった。

 このことにより、P34はドライビングとセットアップが実に難しかった。

 さらに小径のフロントホイールは、大径のリヤホイールよりも回転する数が必然的に多くなる。そのため、タイヤのライフの問題にも大きな影響を与えることになった。タイヤサプライヤーであるグッドイヤーは、リヤタイヤの改善には取り組んだものの、P34専用のフロントタイヤについては、開発が遅れることになった。そのため前後ホイールの摩耗問題はさらに顕著なモノとなっていくことになった。