新型コロナウイルスのパンデミックにより、2020年シーズンのF1は、世界中の他のスポーツと同様、大幅なスケジュール変更を余儀なくされている。

 F1は各国間の渡航制限が緩和され次第、できるだけ早い段階でのレース開催実現を目指している。現在のところ、7月5日決勝のオーストリアGPがシーズン開幕戦の候補であり、イギリスGPも当初の日程通り、7月19日に決勝レースを実施する方向で議論が進められている。

 暫定的な計画では、オーストリアGPで2レースを実施した後、イギリスGPでも2レース行なうことが検討されているようだ。

 シルバーストン・サーキットは今週に入って、もしイギリスGPを開催する場合、イベントは無観客で実施されると明言している。オーストリアGPも、同じく無観客イベントになる可能性が高いだろう。

 しかし計画が実現するためには、オーストリアGPがスムーズに実施され、無観客レースのコンセプトが安全に機能することが確認されるだけではなく、多くのパズルのピースが正しい場所に収まる必要がある。

 まずイギリスGPを開催するためには、フェラーリやアルファロメオ、アルファタウリのスタッフを含め、イギリス外から渡航するスタッフが安全に出入国できる必要がある。

 肝心なのは、7月のイギリスやヨーロッパ周辺で新型コロナウイルスの状況がどうなっているか、誰にも予想できないということだ。

 シルバーストン・サーキットの代表であるスチュアート・プリングルは、グランプリ開催に向けて「まだまだ細かい作業が必要だ」と語っている。

「我々は、この国で何ができるというだけでなく、それがシーズンにどのようにフィットするかという点についても、とても慎重になる必要があると思う」

「機能する解決策を見出そうという意志はみんなにある。しかし、まだやるべきことがいくつもある。これは決定事項ではないんだ」

 シルバーストンがイベントを無観客で実施すると発表したのは、重要な一歩だった。開催権料を支払うためのチケット販売など商業的な要素を失う一方で、イギリス政府の規制に対処することができる。

 また、時間を稼ぐことにもつながる。レースに参加する各チームやオフィシャルのための準備を整えれる必要はあるが、通常のグランプリ開催時よりもはるかに簡単に準備を終えることができる。

「イギリスでは、公共イベントが許可されていない」とプリングルは付け加えた。

「そしてそれはすぐに変わるとは思えない。間違いなく、我々がレースを実施しようとしている期間内には変わらないだろう」

「イギリスGPは英国で最大のスポーツイベントであり、常設のインフラはたくさんある。一方で一時的なインフラも多くあり、それらの準備には長い時間がかかる。だから我々は、強い決意を持って、ファンの前でイギリスGPを実施することはできないと言ったんだ」

 無観客レースにすることで物流の負担は軽減されるものの、レース実施に向けて、準備すべきことはたくさん残っているとプリングルは言う。

「それは単純作業ではない。観客はいないが、それでもかなり規模の大きい集まりになるんだ。FIAも参加するし、サーキットは基準に準拠していなくてはいけない」

「それには(当初予定していた)スタッフの70%が必要だ。現時点ではそれほどの人材はいないので、呼び戻す必要がある。それには少し時間がかかる」

「それから地方自治体の許可も必要となる。観客がいなくても、それなりの規模の集会になるため、我々は新たな手順とプロトコルに従わなければならない」

「我々はそれが何なのか、どうやって従えば良いのかまだ分からない。テレビ映りを良くするため、縁石の色を塗って草刈りをする基本的な方法は習得している。それだけじゃないがね! シルバーストンがみすぼらしく見えないようにしなくてはいけない」

「F1は、ケータリングを一元化することを検討している。毎日数千人に食事を提供できるよう、大変な作業が必要だ」

 グランプリを開催する上で重要な要素のひとつは、医療サービスの提供だ。観客がいないことで必要なスタッフは減るが、コロナウイルスの検査ができるようにする必要がある可能性もある。医療サービスの貴重なリソースを、スポーツイベントのために振り分けることが適切なことなのかも議論の対象となるだろう。

 プリングルは「医療サービスの観点から、自己完結型であることが非常に重要だと認識している」と話した。

「それは政府が設定している条件のひとつだ。スポーツが医療サービスを浪費してはならない。そうなるリスクがあるならば、イベント実施を検討しない」

「我々の医療責任者は、NHS(イギリスの国民保健サービス)に負担をかけることなく、複数のレースを行なうことができるかについて、すでに多くの作業を行なっている」

 カレンダーの状況は非常に流動的で、何が起こるか予想もできない。プリングルは仮に7月にグランプリが実施できなくても、他の日程でレースを実施する可能性があると語った。また仮に日程通りにレースを実施した場合でも、他のレースがなくなった場合、年内に別の日程で再びレースを開催する可能性もあると言う。

「通常、3月から11月にかけてシーズンが行なわれるため、日程を調整するのは簡単なことではない」

「しかし、1950年にF1世界選手権の第1戦を開催したシルバーストンは、F1に非常に忠実だ。必要であれば、別日程での開催を実現する方法も見つけることができると確信している」

「8月30日に予定されているMotoGPのレースは動かしたくないが、他の全ての日程は可能性がある」

 シルバーストンを巡っては、コースを逆走してレースを実施する案も話題となった。しかしシルバーストンで2レース行なわれるとしても、どちらのレースも通常のグランプリと同様のレイアウトで実施されるようだ。

 以前、コース逆走案について「実現可能かもしれない」と語っていたプリングルは、「逆走案を否定しなかったのは私のミスだ」と振り返った。

「全てのサーキットと同じように、短縮レイアウトはオリジナルほど良くはない。逆走することもできるが、素晴らしいレースがTVで見られるとは思えない!」

 2020年シーズンにイギリスGPを開催しようとする上で、多くの課題に直面することは明らかだ。だが、無観客イベントにすると決断したことで、事態が進展したことは間違いない。