スペインのヘレス・サーキットはホルヘ・ロレンソにとって最も特別なサーキットのひとつだ。彼はヘレスで5回と数多くの優勝経験を持ち、自身の名前もコーナーに刻まれている。しかし2010年に起こったあるストーリーは、彼を語る上で欠かせないものだ。

 2010年のMotoGPは、ロレンソが自身初のタイトルを獲得したシーズンだ。スペインGPでは同郷でライバルのダニ・ペドロサ(当時レプソル・ホンダ)との激しいバトルを制し、MotoGPクラスへ昇格して初めてヘレス・サーキットで勝利している。

 だが、その勝利を告げるチェッカーフラッグが振られた後に起こったことこそ、最も面白く記憶に残る出来事だった。

 ロレンソは勝利をスペシャルな行為で祝おうと、11コーナー付近に設置されている人工池にヘルメットを付けた姿のままダイブしたのだ。

 このロレンソの行動の愉快な点は、彼が池から上がるときのことを考えていなかったところだ。レース用のフル装備では池に飛び込むことは簡単でも、池から出ることは難しかった。そのためロレンソは付近の人々の助けを借りざるを得なかった。

「クレイジーなレースで、クレイジーな祝い方だったよ」と、ロレンソはMotoGP.comで当時を振り返った。

「木曜日にスクーターで何周かしているときにこのアイデアが頭をよぎったんだ。マシンには力強さを感じていて、レースで勝てるチャンスが高かった。だから祝い方について考える時間は十分にあったんだ」

「でも池から出る方法を準備していなかったのが問題だったね。素晴らしい計画じゃなかったよ! たぶん僕のキャリア全体の中でも一番有名なセレブレーションなんじゃないかな」

 そう語るロレンソ。ちなみに彼はそうした問題もありもう飛び込みはしたくないとしていたが、2011年にヘレス・サーキットで優勝した際には、池へのダイブを繰り返している。

 ヘルメットを脱ぎ、池へと駆け寄ったロレンソは、“飛び込むフリ”をしようとした。しかしレース前に降っていた雨で池の縁が滑りやすくなっていたことで、“つるり”と滑って再び池に落ちてしまったのだ。

 ロレンソもこれには懲りたのか、2015年に再びヘレス・サーキットで優勝した際には池へ飛び込むことはなかった。