スマックダウンで初勝利をあげるサーシャ(左)とベイリー

世界的な感染拡大を続ける新型コロナウイルス。この事態に、WWEはロウ、スマックダウン、NXTの全番組を無観客でフロリダ州オーランドにあるパフォーマンスセンター(WWE専用の訓練施設)で収録することを決断。さらに「レッスルマニア(WM)36」も同様の形態で行うことを発表し、コロナ対策に万全を期す姿勢を明確に打ち出した。しかし、一人でも感染者が見つかった場合にはパフォーマンスセンターでの収録すらできなくなる可能性もあるため、試合前には全ての選手やスタッフに対してドクターチームが検査を実施しているようだ。3月13日放送のスマックダウン#1073は、こうした厳戒態勢で収録された最初のエピソード。「パフォーマンスセンターへようこそ。フライデー・スマックダウンは今日、ここから皆さんに素晴らしいエンターテインメント・ショーをお届けする。」冒頭、HHHの前説で始まった、この歴史的番組はパイロ(火薬装置)もタイタントロンもない、質素な入場ゲートから姿を現したベイリー&サーシャ・バンクス、アレクサ・ブリス&ニッキー・クロスのタッグ戦からスタートした。もちろん、レフェリーも実況・解説(マイケル・コール/HHH)もついているので試合自体はいつもと変わらない様式だが、視聴環境的には、チャント(掛け声)もブーイングもない静かな会場に選手のバンプ(受け身)音がひたすら響き渡る独特の雰囲気をどう捉えるかで評価が分かれる内容だ。目の前の映像を通常モードに補正するには、我々受け手の側に若干の集中力とイマジネーションが要求される。逆に、この仕様を通常モードと仮定すれば、普段は歓声でかき消される技の衝撃音がクリアに聞こえ、選手の痛みをリアルに感じ取れるドキュメンタリー的な視聴(=今回はフィニッシュのリプレイもない)も可能だ。練習試合ではなく、あくまでTVマッチなので乱入もある。このタッグ戦では、かねてから「カブキ・ウォリアーズ!私たちの王座挑戦から逃げるな!」と、挑発していたアレクサに応える形でアスカが試合を妨害。この乱入でアレクサ&クロス組が敗れたため、くすぶっていた抗争に火がついた。意味不明の関西弁で支持率急上昇中のアスカは、今なおストーリーラインの最前線にいる。シングルが一段落した今後は、カイリと共にタッグの王座戦線を引っ張っていく気配だ。

アレクサを妨害したアスカ


番組後半には、IC新王者サミ・ゼイン擁する中邑真輔軍も登場。バックステージでドリュー・グラックと3・8「エリミネーション・チェンバー」を振り返るダニエル・ブライアンの前に異常なハイテンションで現れたゼインは、「あんたは我が軍への協力を拒否したが、俺は今やIC王者だ。それに引き換え、あんたはベルトも失い、こんな奴とつるんでいる。ま、焦らずやれよ。」と小ばかにしたような発言を繰り返し、一触即発状態に。ブライアンがゼインのボディガード役であるセザーロに、「やるつもりなら、やってやる。」と言い返したため、即座にこの二人のシングル戦が組まれた。いわゆるU系の技術体系を持つ、この両者の闘いは大会場よりむしろパフォーマンスセンターの方が適しているようで、打撃とサブミッションの応酬を固唾を飲んで見守る、往時のUWF後楽園大会を思い出させる静寂の中、スモールパッケージでブライアンが勝利すると、中邑が乱入。無観客の会場で果てしない乱闘を繰り広げる両者は、IC王座をめぐる新たな抗争劇に突入する見込みだ。最終セグメントを締めたのはジョン・シナ。WMでのワイアットとの試合についてマイケル・コールに質問されると、「今度の試合は6年前に端を発するが、ワイアットは今後のWWEに必要ない存在だ。WWEの未来はマッキンタイア、リドル、リプリーらが支えるんだ。」と返答。すると、大きな笑い声と共にブレイ・ワイアットが姿を現す。「すごく真剣にWWEの未来について語っているけどさ、君は自分が目立つことしか考えていないね。6年前のレッスルマニアで君は僕から多くのものを奪っていった。それを・・・“フィーンド”は忘れていないんだ。次のレッスルマニアで、彼は君に何をするつもりなのかな?」照明が暗転する演出はなく、“フィーンド”ではなくブレイの姿でシナを追い詰めるワイアット。WM本番では、どのような魔界空間にシナを引きずりこもうというのか・・・。こうした紆余曲折の末、どうにか通常放送が維持できた本エピソードの現地視聴者数は258.8万人。コロナ不安による在宅率向上の影響なのか、前週の245.6万人を大きく押し上げる結果となった。