「オフサイド!」ホイッスルと共にレフリーの片手が高く上がった。
相手陣内深くで得たペナルティ。
「いーち、にー、さーん」。コンバージョンのボールをピッチに置いた背番号15の彼がスタンドからの掛け声に合わせるかのようにゆっくりと下がりセットに入った。
スタンドが一瞬の静粛に包まれ、次の瞬間、乾いた音とともに彼の右足から蹴りだされたボールは放物線を描きゴールポストに吸い込まれていった。再び上がった大歓声を背に受け彼は淡々と自陣に戻ってゆく。秩父宮で、そして国立競技場でも見慣れた光景だった。
早稲田大学 今泉清。
力強いランとロングキック、時として奔放にも見える大胆なプレーでスタンドからひときわ大きな歓声を受けてきた大型フルバックだ。
全勝同士の対決となった1990年の早明戦、6点のビハインドで迎えたロスタイムでの同点に結びつく独走トライはまさに彼の真骨頂ともいえるプレーだった。
これまで撮影してきた数多の早稲田の名選手の中で真っ先に想い浮かぶのは、赤黒のジャージをまとい慶應をそして明治を相手に、大地を蹴りつけるような大きなストライドでフィールドを駆け抜けていった彼の姿である。


文:井田 新輔