「2〜3回ほど契約の延長を打診したが、彼は受けつけなかった。マンチェスター・シティとは違うクラブでプレーしたいようだ。新しい冒険を望んでいるっていうことさ」

ジョゼップ・グアルディオラ監督が残念そうに語っていた。

レロイ・ザネの退団は避けられない事実になった、とみていいだろう。環境に不満があるのか、クラブ内に許せない人間がいるのか、そろそろドイツに帰りたくなったのか……。

ただ、有力な移籍先といわれていたバイエルン・ミュンヘンは、コロナ禍で補強戦略の見直しを迫られている。役員を務めるオリヴァー・カーンも、「ザネはあくまで選択肢のひとつ。コロナ禍なのだから、大規模な投資には慎重を期さなくてはならない」と、先走るメディアを牽制した。

ありとあらゆるクラブが絶望的な収入減を余儀なくされたため、この夏の移籍市場は規模が大幅に縮小される。推定9000万ポンド(約120億円)といわれるザネの市場価格も、20〜30%ほどダウンするだろう。それでも健全経営のバイエルンは、市場全体の動きを冷静に見極めるに違いない。

シティも駆け引きをする。「移籍金は妥協するが、その代わりにヨシュア・キミッヒを差し出せ」というプランを用意しても不思議ではない。バイエルンにすれば悩ましい条件だ。

また、移籍金で合意したとしても、バイエルンはザネの週給9万ポンド(約1200万円)を支払えるのだろうか。支払えたとしても、クラブ内の給与バランスは均衡を保てるのだろうか。例のファイナンシャル・フェアプレー騒動で、「シティの不正を暴くべき」とバイエルンが積極的にUEFAに働きかけたとの噂も気になるところだ。両クラブの取り引きは政治臭がキツすぎる。

とはいえ、ザネは十中八九シティに別れを告げる。無理をして引き留めると不満分子になりかねない。したがって放出は最善策となるが、前述した週給や移籍金を支払えるクラブは限られてくる。

マンチェスター・ユナイテッド? マーカス・ラシュフォードとポジションがかぶる。ましてシティの幹部が、ローカルライバルに手放す愚を犯すはずがない。

チェルシー? 来シーズンからの加入が決まったティモ・ヴェルナー(ライプツィヒ)に続き、カイ・ハベルツ(レバークーゼン)にも接触していた。ザネにも手を出すと予算繰りが狂いまくる。

また、レアル・マドリーの前線左サイドにはヴィニシウスとエデン・アザールがおり、バルセロナもアントワーヌ・グリーズマンを擁している。パリ・サンジェルマンではネイマールのバルサ復帰という身勝手なプランが頓挫し、キリアン・エンバッペの推定市場価格は2億ポンド(約266億円)だ。20〜30%ダウン(前述)だとしても180〜210億円前後だ。簡単に出せる金額ではない。両選手とも残留濃厚で、パリSGがザネの獲得に動く可能性はゼロに等しい。

すべて憶測に基づく内容だが、ザネの移籍は二転三転。決着がつくまでに時間がかかるのではないだろうか。実質、サウジアラビアの王室がオーナーに就任する公算大のニューカッスルは、ザネのプライドを満たすステイタスをまだ有していない。

文:粕谷秀樹