オンライン○○――。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、耳にする機会が大きく増えた言葉だろう。会議や飲み会、握手会から料理教室まで......。

ついには「オンライン人力車」なるものまで登場したらしい。東京・浅草の雷門近くで発見されたその存在が、ツイッターで注目を集めている。

客を乗せていないのに一生懸命喋っている人力車の車夫。
練習かな? と思ったら座席にタブレットが...
リモート乗車かよ! pic.twitter.com/y2TDR4IqXg
- 地下生活者の映画日記 (@hjgTFGrbXA5a1Cg) August 2, 2020

こちらはツイッターユーザーの「地下生活者の映画日記」さんが2020年8月2日に投稿したもの。雷門前の交差点付近で撮影したという写真には、人力車を引く車夫の姿が見える。

ところがお客さんが乗っていないのだ。こんなご時世だからお客がいない...、というわけではないようで投稿者は

「客を乗せていないのに一生懸命喋っている人力車の車夫。練習かな? と思ったら座席にタブレットが...リモート乗車かよ!」

と呟いている。

お客さんが乗るはずの席に、黒い画面のようなモノが見えるだろうか。そこに向かって車夫が話しかけていたそう。

どうやらオンライン上から人力車を体験できるサービスがあるようだ。おうち時間に乗車気分が味わえるなんて、最高ではないだろうか。

この投稿を見た他のユーザーからは、ツイッターに

「ガチでいいなこれ。コロナ自粛後も旅行に行きたいけど体がとか仕事で行けない人がリモートで参加して質問などもできると面白いかも」
「タブレット通してっていい案ですね。旅行気分味わえるし、ちょっと気になります」
「お年寄りへのプレゼントとしてもかなり良いかも!」

といった反応が寄せられている。

人力車×Zoomで人を笑顔に

2020年8月3日、Jタウンネットがオンライン人力車に遭遇した地下生活者の映画日記さんに、目撃時の感想を聞くと

「びっくりしました。そんなのアリか?楽しいのか?と...。でも冷静に考えると、巷にあるリモートが出来ないことの代替であるのに対して、これは拡張だな、と。コロナが終息しても伸ばしていけるのではないでしょうか。感心しました」

と話す。確かにオンライン人力車はコロナ禍でなくても面白い試みだ。身体が不自由な人でも、気軽に参加することができるだろう。

座席にはパソコンが(画像は地下生活者の映画日記(@hjgTFGrbXA5a1Cg)さんから)

オンライン人力車のサービスを提供しているのは、以前から人力車の車夫をしている三浦翔平(26歳、写真本人)さんだ。

3日、Jタウンネットが本人を取材すると、Web会議ツール「Zoom」を用いて人力車の乗車体験を提供しているという。自宅にいながら世界中どこからでも浅草の風景を楽しむことができるのだ。

サービスは6月1日からスタート。人力車の背もたれ部分にWebカメラやスマートフォンを設置し、乗客はそこから撮影した景色を楽しむことができるという。三浦さんは、座席に置いたパソコンから参加者の顔を確認しつつ、浅草周辺の魅力を話しながら巡るそうだ。

元々消防士だったという三浦さん。仕事を辞めて16年頃に、とある人力車の会社で働き始めたという。そんななか、自分で人力車の会社を作りたいと思った三浦さんは、資金作りのために18年夏頃に会社を退社し、建設業へ。

その資金作りの最中に新型コロナウイルスが流行し、家にいる時間が増えたという。

「(建設業の)仕事が減って家にいる時間が増えました。そうなると人と会話する時間が減り、笑顔でいられる時間も減りました。気持ちも下向きになっていました。
今の自分に出来ることってなんだろうと考えた時に、人を笑顔にすることだと思いました。世の中が不安になっている時に、人力車とZoomを使えば、人を笑顔に出来るなと。こういった経緯でオンライン人力車というサービスを始めました」(三浦さん)

8月末まで無料で「乗車」できる

「オンライン人力車」公式サイトトップ(画像はスクリーンショット)

周遊ルートは雷門から浅草寺まで。スカイツリーの絶景スポットやお寺などを40分かけて案内するという。予約方法は「オンライン人力車」公式サイトからLINEのQRコードを読み取り、LINE上で日時と名前を送信。出発の1時間前にZoomのURLが送られ、予約時間の5分前に開くと参加できるという仕組みだ。

支払いはスマホ決済アプリ「paypay」。8月末までは無料で、9月以降は料金(値段は検討中)がかかる。

「とにかく沢山の人に人力車を体験してもらいたいですし、今は経済的に世の中が厳しい状況だと思います。『500円あるなら子供にご飯を食べさせてあげたい』と思う人もいると思いますので、そういう人にこそ、乗ってもらって元気を与えたいです」

3日時点で週2日、月曜日と日曜日に3便ずつサービスを提供しているという。利用人数は一回につき6人まで。予約状況によっては便を増やすことも検討中だそうだ。一度に100人、1000人「乗り」も可能とのことだが...

「人力車は、お客さんと会話するのが、魅力や醍醐味だったりします。あまり人数が多いと、お客さんと、しっかりと会話が出来なくなってしまうんですね。話せないと、お客様の満足度が下がってしまうと思います。いろいろな人数で試した結果、6人という人数になりました」

という。外国人も利用しているようで、タイやフィリピン、マレーシアなどから参加した人もいるそうだ。お客さんからの反響は良いようで

「すごく楽しかった、浅草に行ったような気分になれてよかった、絶対に三浦さんに会いに行きますとか...、感想は様々です。昨日も午前中にオンライン乗車してくれた方が午後に実際に乗ってくれました。うれしい限りです」

と話す。三浦さんは、実際に客を乗せる「オフライン人力車」もしているとのこと。

サービス開始時は同業者や観光客から「あの人椅子に向かって話してるよ」と言われたこともあるそうだ。しかし最近は町の人にも受け入れてもらい、お店の人も外に出て、画面に手をふったりすることもあるという。

新たな浅草の魅力をオンラインから発見できるかもしれない。