CESにはさまざまなウェアラブルデバイスが出展されていた。といっても、普通のスマートウォッチくらいになると、「オーダーがあればいくらでも作れます」というような中国メーカーがたくさん出展しているくらい当たり前のものになっている。そのため、ここではそんなありきたりなものではなく、ちょっと変わった機能や先進的な特徴を持つウェアラブルデバイスをピックアップしてご紹介する。■普段使いしやすいデザインのスマートグラス「Norm Glasses」

 Human Capabilityの「Norm Glasses」は、普通のメガネに近いデザインをしたスマートグラスだ。エンタープライズ向けとかではなく、一般消費者が一般生活の中で着用することを想定して作られている。

 CESのInnovation Awardsを8部門で受賞、Best of Innovationを1部門で受賞と、ひそかに注目を集めていたデバイスでもある。CESの展示での実機デモは予約制で、筆者がアポイントメントを取った最終日には動作実機がなかったため、残念ながら実機の動作をみることはできなかった。

 Norm Glassesは片眼・透過型・フルカラーのディスプレイを搭載する。デュアルコアのプロセッサーに1GBのメモリー、32GBのストレージも搭載し、Androidベースの独自OSを採用し、スマートフォンと連携するだけでなく、単体でもある程度の機能を利用できる。重量は36g未満でデザインもほぼ普通のメガネなので、日常生活で着用し続けるような使い方を想定している。

 昨年夏頃にクラウドファンディングが行われていて、仕様強化によって当初よりも発売は遅れているが、その代わりにスペックはクラウドファンディング開始時発表よりも強化されている。今年の第2四半期には出資者向けの出荷が行なわれ、そのあとに一般販売が行われる。一般販売価格は449ドルとなる予定。同社は日本にも何度も訪れて日本の市場や法規制についても調査していて、製品発売時には日本の技適を取得する予定だという。■すでに商用化されているスポーツ向けHMD

 Microoledの「ActiveLook」はヘッドマウントデバイス製品向けソリューション。同社自身がコンシューマー向け製品を作っているわけではないが、いくつかのスポーツブランドが同社のソリューションを採用した製品をすでに発売している。

 ActiveLookはサングラスの中央部(レンズとレンズをつなぐブリッジ部や鼻パッドの部分)に搭載するモジュール。ディスプレイだけでなく一通りの機能がモジュールに収められていて、Bluetoothでスマートフォンやサイクルコンピューター、スマートリストバンドなどと連携する機能がある。

 多くのヘッドマウントデバイスでは、ディスプレイを左右どちらかのテンプルフレームに搭載しているが、ActiveLookはブリッジ部に収まるので、テンプルフレームは通常のサングラスと変わらないのがポイント。ブリッジ部は大きくなってしまうが、主にマラソンや自転車向けのスポーツサングラスが採用するモジュールなので、デザイン上の違和感が少ないのがポイントとなっている。

 ActiveLookはJulboやuvexなどのブランドが採用予定で、たとえばJulvoの「EVAD-1」は499ユーロで発売される。

■完成度が高く商用化の近いスマホ接続用MRグラス「nreal」

 「Norm Glasses」と「ActiveLook」は、いずれも通知の表示やナビ、ラップタイムの表示など、スマートフォンのサブディスプレイ的な用途を想定したスマートグラスだが、「Nreal Light」は現実空間に3Dオブジェクトや映像スクリーンをオーバーレイ表示する、いわゆるMRグラスとなる。

 Nreal Lightは両目に透過型のカラーディスプレイを搭載し、スマートフォンと有線接続して利用する。Nreal自体はディスプレイとセンサーを搭載するだけで、グラフィック描写などは接続するスマートフォン側で行なう。接続できるスマートフォンはSnapdragon 855以降のプロセッサを採用するAndroidスマートフォン。

 情報表示用途のスマートグラスに比べると、ディスプレイモジュール部はやや分厚く、レンズ部の半分近くがディスプレイモジュールやカメラなどに占められている。常時装着するタイプのスマートグラスではないが、その分、ディスプレイは両眼搭載な上に視野角が約52度とスマートグラスに比べて破格に大きいのも特徴だ。

 ハイエンドクラスのスマートフォンのプロセッサパワーを利用するので、MRコンテンツのクオリティはそこそこ高い。また、3方向の回転に加え3軸の移動も認識する6自由度(6DoF)の仕様になっているため、3Dオブジェクトに顔を近づける、といったこともできる。

 Nreal Lightは昨年2月のMWCでも完成品に近い実機を展示しているなど、製品の完成度がかなり高く、商用化のかなり近い製品でもある。2020年の前半には一般向けに発売する予定で、Nrealは国内ではKDDIと提携していて、国内販売時もKDDIが協力する。一般向けの販売価格は499ドル。コンテンツ開発者など向けの開発キットは1199ドルですでに予約受付を開始している。国内では渋谷スクランブルスクエアなどのauの一部店舗で実機が展示されている。■指向性を持たせられるヒアリングエイドデバイス

 日本のスタートアップfreecleは同社のヒアラブルデバイス「αble」を展示している。一見するとただのBluetoothヘッドセットだが、前方の音だけを強調して再生するといった機能を搭載するヒアリングエイドデバイスとなっている。

 αbleは片耳に2個ずつ、合計4個のマイクを搭載し、アレイマイクを構成することで、マイクの指向性をコントロールできるのが特徴。ソニーの「Xperia Ear Duo」なども同様のアレイマイク構成でマイクに指向性を持たせているが、そうした製品のアレイマイクは着用者の声を正確に拾い、ボイスアシスタントや通話音声の精度を上げるのが主目的なのに対し、αbleは着用者の声は拾わず、目の前でしゃべっている人など前方の音声を拾えるのが特徴。

 主に聴覚障害者向けのヒアリングエイドデバイスとして開発されていて、専用スマホアプリでは利用者の聴力を測定し、音域ごとのゲインを調整するような機能も搭載している。通常のBluetoothヘッドセットとしても利用できる。

 αbleは最新のクアルコム製のBluetoothチップセットを利用していて、その機能を利用してアレイマイクの指向性制御などを行っている。将来的にはαbleの機能を公開し、サードパーティがαbleのハードウェアを活かしたアプリを作れるようにするといったプラットフォーム展開も検討しているという。■ヘッドセット型翻訳デバイス

 Waverly Labsの「Ambassador」は耳に装着する翻訳デバイス。こちらのデバイスもアレイマイクでマイクに指向性を持たせていて、着用者の音声を確実に聞き取れるようにしている。しかし装着者の声しか取らないので、会話をするには相手にも同じデバイスを着用してもらう必要がある。販売は2個セットとなっていて、予定価格は199ドル。3月から発売予定だが、Indiegogoでは先行割引販売が行われている。

 翻訳は接続するスマートフォン上で処理され、音声認識結果と翻訳結果は画面上でも確認できる。複数の言語に同時に翻訳することもできる。■周囲の音を振動化するリストバンド

 Neosensorの「Buzz」は、周囲の音に応じて振動するリストバンド。聴覚障碍者が周囲の音を体感する用途にも使えるし、ライブ会場などでより音楽を体感したいときなどにも使える。30分の充電で24時間以上動作するので、聴覚障碍者であれば就寝中も着用することで、火災警報などに気がつきやすくすることができる。スマートフォンとも接続可能で、動作モードを切り替えたり感度を調整したりできる。

 シンプルな機能しか搭載しない製品だが、障碍者向けというやや特殊な性質をもった製品なこともあり、価格は買い切りで589ドル、サブスクリプションだと初期費用で149ドル+月20ドルと特殊な販売形態となっている。すでに受注を開始していて、2月より出荷予定。■静電気で何にでも貼り付く不思議なテープ

 日本のCREATIVE TECHNOLOGYは同社の技術を利用した「ESC BIO-SONAR」を展示している。といっても同社はウェアラブル製品自体を作っているのではなく、同社が提供するのは「静電気でものを貼り付ける技術」だ。たとえばリストバンドであれば、一見するとなんの粘着力もないテープなのに、重ね合わせると貼り付いてバンドになる、というような製品を作れる。また、胸などに貼る各種バイオメトリクスセンサについても、通常は使い捨ての粘着テープなどを利用するが、同社の製品を使えば再利用可能な製品が可能となる。

 静電気を使うが、電気的な感触は一切なく、消費電力も微弱でウェアラブルセンサに採用してもバッテリ持続時間にはほとんど影響はないという。ウェアラブル機器全般に応用できる技術で、同社ではこの技術を使った製品を作るパートナーを探している。