<あなたに伝えたい>感謝を込めた歌 天まで届け

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◎音楽への道 背中を押してくれた父/稲辺隆大さん(塩釜市)恵一さんへ

 稲辺恵一さん=当時(54)= 宮城県多賀城市宮内1丁目の自宅で妻(60)、次男隆大さん(29)と暮らし、仙台塩釜港近くの運輸会社に勤めていた。東日本大震災当日は透析のために市内の病院へ。徒歩で病院へ向かう途中、津波に巻き込まれたとみられる。1週間後、宮城県利府町の遺体安置所で、衣服の特徴から身元が分かった。

 隆大さん 無口で優しい父でした。私は多賀城中生の時に同級生2人とラップグループ「GAMISM(ガムイズム)」を作り、音楽活動を始めました。自宅が練習場になっても「気にしなくていいから」と応援してくれ、楽器を買う頭金まで出してくれました。
 歌ができてCDになると、まず父に聞いてもらいましたね。「このさびいいね」「いい曲作るなあ」。背中を押してくれる言葉ばかりでした。
 震災の1週間ほど前、父から「もみあげを整えてくれないか」と声を掛けられ、電気シェーバーでそってあげました。糖尿病の影響で目が見えにくくなっていて、大好きな車の運転からも遠ざかっていました。
 父の遺体が見つかったのは、自宅近くの八幡神社でした。車好きが導いたのでしょうか、自宅にあった愛車も同じ境内で見つかりました。思い出の品の多くが津波に流された中、車内にあった愛用の眼鏡が大事な遺品になりました。
 震災時、自宅にいた母は2階に逃れて助かりましたが、家屋は津波で大規模半壊。父に一番なついていた飼い猫「ミント」も津波に流されました。1カ月後、自宅近くで奇跡的に見つかり、今では震災前よりも家族になついています。
 音楽活動は今も続けています。震災後、父への思いを込めて「花火」という歌を作りました。区切りを付けるために、感謝を込めて。プラス思考で心が広く、まっすぐ歩む父の生き方を受け継いでいきます。

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