<転機の米作り 秋田の産地は今>第2部 盛夏、伸びる穂(下)増収へ新モデル模索

<転機の米作り 秋田の産地は今>第2部 盛夏、伸びる穂(下)増収へ新モデル模索

広い水田で無農薬栽培に取り組む大潟村の農家と、委託で栽培面積を広げてきた美郷町の農家。秋田県では田植え後の天候に恵まれ、稲は順調に出穂の時期を迎えた。第2部は、夏の作業に汗をかくそれぞれの農家の姿を追った。
(秋田総局・渡辺晋輔、鈴木俊平)

◎美郷町 兼業農家照井勇一さん(64)

<担い手足りず>
 真夏日が続いた8月上旬、秋田県美郷町の照井勇一さん(64)は町内10カ所に散らばる水田計10ヘクタールを回り、稲穂の成長を入念に確かめた。重さ30キロを超える肥料散布機を背負い、成長に遅れが見られた約3.5ヘクタールにまいて歩いた。
 「おおむね順調だけど、収穫しないとコメの質は分からない」と大粒の汗をぬぐう。出来秋に期待し、品質管理に手を抜かない。
 数年前から、後継者不在に悩む同じ集落の農家から水田を引き取ってきた。
 地域営農を支えようとできるだけ応えてきたが、60歳を超え体力の限界を感じ始めた。これ以上の栽培面積の拡大は考えていない。
 「今後は所有者がいない田畑が増えるだろう」。不安を募らせる。
 2015年の農林業センサスによると町内の農家2284人の約7割が65歳以上だった。担い手不足は深刻化しており、耕作放棄地の増加が懸念される。
 照井さんは「水田が手入れされずに放置されれば、再びコメを作るにしても回復に時間や費用が大きくかかってしまう」と漏らす。

<「自立」目指す>
 地域営農の存続を懸け、自立した農業経営を目指す。自宅敷地内にもみの乾燥機や精米機、冷温保存庫を備え、収穫から出荷までを一貫して自分で行うなど収益を増やす工夫を重ねる。
 国の生産調整(減反)が廃止された今年は、直接支払い交付金がなくなることなどの影響で約120万円の減収を覚悟する。
 そうした中、コメ以外の収入源として昨年からセリの栽培を始めた。地元スーパーを通じた売り上げは約50万円。手応えを感じ、生産拡大も視野に入れる。
 コメ作りの面積や方法を変えずに済む多収穫米の生産も考えている。ただ、乾燥や精米を自前で担うため、収量の増加に比例して燃料代が上がることには割り切れなさも感じる。 「将来的な導入は考えないといけないが、いつ折り合いを付ければいいかは見当がつかない」と悩ましげに語る。

<「第二の減反」>
 国は需要の高まる業務用米に補助金を出し、主食用米からの誘導を図ろうとしている。「補助金に支えられた稲作は第二の減反でしかない」と照井さん。いっときの流れに身を任せた方向転換には抵抗感が強い。
 将来的には長男(37)に本格的に稲作のバトンを渡す予定だ。「コメ作りを引き継ぐため、なんとか自分の代で稼げるモデルを確立したい」と模索を続ける。

[美郷町の農業人口]15年農林業センサスによると、農業就業人口2284人のうち65歳未満は629人。経営耕地規模が10ヘクタール以下の稲作農家は全体の9割弱を占める。水田約4875ヘクタールのうち食用約4738ヘクタール、飼料用約137ヘクタール。


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