仙台市ガス民営化は新年度に事業譲渡先の公募が始まる。名乗りを上げるのはどこか。エネルギー関係者の間では、有力とされる企業名が複数浮上している。前回応募した東北電力や東京ガスのほか、大阪ガス(大阪市)、石油元売り最大手JXTGホールディングス、オリックス(東京)、LPガス事業者が挙がる。市はグループでの応募を想定しており、企業連合の枠組みも注目される。
 応募が確実視されているのは東北電だ。同社以外の企業が市ガスを取得した場合、顧客基盤が揺らがないとも限らず、東北電関係者は「攻撃は最大の防御という考え方から、ガス参入はあり得る」と明かす。
 石油資源開発(東京)と共同出資する「東北天然ガス」は市ガスに原料を卸供給する。他社に譲った結果、調達先を変更されるリスクを避ける意味でも、市ガスの取得は欠かせない。
 東北最大のエネルギー企業だが、大規模なガス供給網の運営ノウハウはなく、大手ガス事業者との協調は必須要件とみられる。
 2009年に頓挫した前回の民営化では、東北電は東京ガスと企業連合を組んだ。両社は16年から、共同出資会社「シナジアパワー」で北関東の大口向け電力小売りを手掛けており、協調関係は今も維持する。
 公営ガスの民営化に詳しい関係者は「東ガスと東北電が組めば、市はそこに売るしかないという雰囲気になるだろう。落札価格が多少安かったとしても安心感が違う」と予測する。
 別の関係者は大阪ガスが競争に加わる可能性を指摘する。「国内で大規模にガス事業を伸ばせる最後の案件。大ガスにとって、仙台の規模は魅力的なはず」と解説。東ガス幹部もライバルの動きを警戒する。
 JXTGグループは昨年2月、首都圏で都市ガス小売りに参入した。太内義明取締役常務執行役員は今年2月の記者会見で「販売網を有効に使って伸ばす。仙台市ガス(取得)は検討するが、具体的な回答を控える」と述べるにとどめた。
 オリックスは関西、伊丹両空港、浜松市の下水道処理場など公的施設の運営に実績がある。同社関係者は「単独参入は難しく、協力企業が必要。あらゆる可能性を検討する」と語る。
 LPガス事業者では、にかほ市などで公営ガス継承の実績があるTOKAIホールディングス(静岡県)が関心を示すほか、地元のカメイ、日本ガス(東京)も有力視される。
 市は今後、最低譲渡価格を決めるが、18年度末時点の企業債残高375億円がベースになる。相場観を大幅に上回る金額となれば、多くの企業が応募を見合わせる可能性もある。
 「400億円に上積みして値付けしてほしい市側の意向が漏れ聞こえる」。あるコンサルタントはこう明かし「公営最大の案件を引き受けられる陣営が三つもできるとは考えにくい。最後は1、2グループに集約する」との見通しを示す。

[仙台市ガス民営化]市は公募型プロポーザル方式で事業譲渡先を決定する。2020年度前半に公募条件を公表し、同年度内に優先交渉権者を選び、22年度前半に民間によるガス事業運営に移行する。08年度にも公募し、東北電力、東京ガス、石油資源開発の3社グループが唯一応募したが、リーマンショックに端を発した景気悪化を理由に頓挫した。市ガスは仙台市、宮城県多賀城市など7市町村に供給。総需要家戸数は約34万戸と公営で全国最大の規模を誇る。