虐待やいじめ、DVでも深刻な心的外傷に

災害や戦争、大事故などの苛酷な体験が精神に影響して起こるPTSD(心的外傷後ストレス障害)は、ようやく知られてきました。しかし、日常的に繰り返される暴力やいじめ、虐待などがトラウマとなって起こる「複雑性PTSD」のことをご存知でしょうか。どのような症状で、どんな治療が行われるのでしょうか。

◆災害などによるPTSD(心的外傷後ストレス障害)の原因は、いわば単回の限定的なものですが、複雑性PTSDの場合、長期性、潜伏性、頻回性をもつ、つらい体験が原因になるとされています。

◆おもに人間関係におけるトラウマ(心的外傷)の影響が強く、たとえば幼少時の虐待・暴力被害(目撃も含む)、いじめ、ネグレクト(育児放棄)、家庭での面前DV(両親のDV目撃)、兄弟姉妹間の確執、厳しすぎるしつけ、深刻な裏切りやさまざまなハラスメントなどが、長い間続いたり、何度も繰り返されたり、またいくつもの原因が重なったりすることが発症の原因となります。

◆複雑性PTSDの主な症状はPTSDと共通しています。すなわち、以下の3つに分けられます。
(1)再体験症状
(2)回避・精神麻痺症状
(3)過覚醒症状(覚醒亢進状態)

◆(1)再体験症状では、つらい体験の記憶が突然よみがえってきます(フラッシュバック)。また、その体験にまつわる悪夢を繰り返し見ることもあります。記憶がよみがえると、動悸や発汗、過呼吸、体の震えなどの身体症状をあらわします。

◆(2)回避・精神麻痺症状では、つらい体験について話したり考えたりすることを避ける、思い出させる物事や場所、状況を避ける、その出来事の重要な部分を思い出せないなど、外傷に関係する様々なことを日常的に回避するようになります。つらい体験のせいで時間が止まったように感じ、自分の感情がわからない、何事にも興味がわかない、周囲との疎外感を感じるなどの感情の鈍化や意欲の低下などがあらわれることもあります。解離症状をきたす場合もあり、一種の自己防衛反応と考えられています。

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(監修:東急病院 健康管理センター所長兼心療内科医長 伊藤克人)