安全運行への強い思いを乗せ、いよいよ本格始動する。21日から富山駅の南北を直通運転する路面電車の低床車両で、富山地方鉄道の整備士、森薫さん(48)が中心となって改良した。「人を乗せる以上、絶対に故障は起こさせない」。一貫して車両整備の道を歩んできた者としてのプライドを胸に、大きな節目を迎えた「我が子たち」を送り出す。


 森さんは富山工業高校を卒業した1990(平成2)年に富山地鉄に入った。7年ほどの「修行期間」を経て、路面電車の車両整備を担当。富山駅北側で「ポートラム」を運行していた富山ライトレールへの出向も経験し、駅南北を走る車両や路線の特徴を頭にたたき込んだ。

 「駅南で運行している低床車両を駅北でも走れるようにする」。南北接続に向け、森さんに課せられた仕事だった。駅南側で道路上に敷かれた軌道を走るサントラムや環状線のセントラムは、駅北の鉄道区間も走ることになるため、自動列車停止装置(ATS)への対応を迫られた。

 受信機は40センチ四方の板状で、台車部分に取り付けなければならないが、サントラムで比較的古い車両は十分なスペースがなく、他の機器を別の位置にずらさなければならなかった。森さんは何本もの配管や配線を正確につなぐ場面を想像し、「大変な作業になる」と直感した。

 昨年7月、同僚4人と共に改造に着手し、約3カ月間、時には土日も作業に当たった。地鉄本線など他の車両の修理や整備も日々担うだけに、多忙な日々が続いた。

 点検ピットで台車を下からのぞき込み、手持ちのライトで照らす毎日。猛暑の中、汗がしたたり、長袖の作業着は1日に何度も着替えた。「改造方法を考えるのに1日、2日と頭を抱えることもあった」

 11月から12月にかけ、試験機でATSが正常に作動することを確認すると、安心感がこみ上げた。「電気系統は少しのミスで壊れてしまう。日頃の修理を含め、手を加えた時はどきどきです」。常に抱く緊張感は、人の命を預かる仕事に対する責任感の現れだ。

 「もうこの日になっちゃうのか」。駅南北の直通運転開始を間近に控えた今月19日、南富山車両基地でサントラムを眺めながらつぶやいた。

 異なる路線が結ばれ、新たな挑戦が始まることもあり、これまで以上に「安全」に対して気を抜くことはできない。これからも縁の下の力持ちとして、新時代の路面電車を支えるつもりだ。 (市江航大)


 ■歩行者用通路が完成

 路面電車の南北接続事業の完了に合わせ、富山駅の南口と北口をつなぐ幅38メートルの歩行者用の自由通路が20日、完成した。

 自由通路は昨年4月に幅5メートルの仮通路が開通し、その後は拡幅工事を進めていた。広々とした空間でより快適に南北を行き来できるようになった。

 通路では22日まで富山市のまちづくりや鉄道の歴史を紹介する写真パネルが展示されている。