東京五輪・パラリンピックが来年夏まで1年程度延びることになり、県内の小売りや観光業界からは25日、売り上げや入り込みを懸念する声が上がった。異例の事態に五輪ツアーを扱う旅行代理店は戸惑いを隠さない。新型コロナウイルスの感染拡大で足元の業績に深刻なダメージを受けている上、需要が先延ばしされた格好となっている。

 「ある程度のインバウンド(訪日外国人旅行者)需要を見込んでいた。1年後も同様の需要があるかは分からない」。富山駅前の商業施設「マリエとやま」などを運営する富山ターミナルビルの黒瀬俊英常務は売り上げへの影響を懸念する。

 目下の課題にウイルスの影響による交流人口の減少を挙げる。「海外だけでなく国内旅行も縮小している。立山黒部アルペンルートの開通までには落ち着いてほしい」と話す。

 延期決定は立山黒部アルペンルートの入り込みにも影響を与えそうだ。立山黒部貫光(富山市桜町)はこれまで、主力の国内客が観戦のため旅行を控えるなどして東京五輪に流れるとみていた。一転延期となったものの、感染拡大で訪日外国人客が見込めない中、今季の集客は苦戦が予想される。中川修専務は「国内からの集客に力を入れたい」と内需に活路を見いだす。

 東武トップツアーズ富山支店(富山市本町)は25日、チケットと宿泊、交通機関をパッケージにした公式観戦ツアーなどを予約した県内の顧客に予定通り開催できないことを電話連絡した。担当者は「かつてないことで全く分からない状況。返金方法など情報収集を進めている」と話した。

■経済団体トップ「中止より希望持てる」 新たな課題浮上心配

 「当然の判断」「中止よりも希望は持てる」。県内経済団体のトップは25日、東京五輪・パラリンピックの開催延期決定を冷静に受け止め、大会実施の方向性に変更がないことを前向きに捉えた。一方、延期に伴うさまざまな課題の浮上を心配する声もあった。

 金岡克己県経営者協会長は「感染が170を超える国に拡散し、感染者が40万人に達する以上、延期は当然の判断」と話す。高木繁雄県商工会議所連合会長は「延期はやむを得ない判断ではないか」とし「観光などで非常に厳しい状況が続くが、中止よりも1年延びた方が希望は持てる」と話した。

 高田順一県中小企業団体中央会長は「中止にならず、1年程度でできることになり良かった」と胸をなで下ろしつつ「実際にやってみるといろんな課題が出てくるのではないか」と異例の開催を心配。新田八朗富山経済同友会代表幹事は「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として開催されれば、より大きな意義のある大会になる」と話した。