悲願のJ2昇格を目指すJ3カターレ富山は28日、本拠地の県総合運動公園陸上競技場で約3カ月半遅れの開幕戦を行った。初戦はAC長野パルセイロと1ー1で引き分け、白星発進とはならなかった。

 富山は開始直後からボールを支配した。前半16分に右サイドパスを受けたMF椎名がペナルティエリアに進入し、そのまま左足を振り抜いて先制した。後半12分に失点を許したが、その後はDF林堂を中心に堅い守備を見せた。

 次節は7月5日午後5時、神奈川県のニッパツ三ツ沢球技場で観客を入れずにYSCC横浜と対戦する。


■椎名 逆境乗り越えゴール

 サッカーができる喜びを一番知る男が魅せた。

 新型コロナウイルスの影響で、約3カ月半遅れた開幕戦。右サイドハーフで先発したMF椎名伸志は、ペナルティーエリア右でパスを受けると、迷わず左足を振り抜いた。ボールは勢いよくゴール右下に突き刺さった。

 安達亮監督は「どんどん打てと言っていた。得点の場面は椎名がいいシュートを打ってくれた」と手放しに称賛した。

 椎名は、高校生の時からけがで何度も選手生命を絶たれそうになった経験があり、そのたびに挫折を乗り越え再起してきた。

 万全の状態で迎えられると思った矢先の中断だったが、気持ちは切れなかった。「開幕が決まり自然と気持ちも高まっていた。尽力いただいた方の思いに応えたかった」と自身2年ぶりのゴールを振り返った。

 「チームとして積み上げてきたことを出せたシーンもあったが、失点後に相手に流れを持っていかれた。自分ももっとゴールやチャンスメークができたと思う」。強敵の長野相手に善戦したが、満足はしていない。何度も逆境を乗り越えてきた男が、富山をJ2昇格に導く。(南貴大)


■「1プレー」の怖さ体験 堤´sEYE

 前半16分にMF椎名のシュートで幸先よく先制し、その後もFW平松のポストプレーやDF田中のオーバーラップなどでチャンスをつくり、相手を押し込んだ。

 後半も、前半の勢いのまま持ち味のパスワークで追加点を奪いにいったが、DF今瀬のGK齋藤へのバックパスがミスになり、57分に長野に決められて同点とされた。その後は勢いに乗った長野が逆転ゴールを目指し、怒濤(どとう)の攻撃で終始、カターレを押し込み続けた。

 結局1−1のドロー決着だったが、「あの1プレー」が無ければ、カターレが勝ち点3を獲得していた可能性が高かったのではないか。

 何気ないプレーがゲームの流れを大きく変えてしまう怖さを、身を持って体験する形となった。(元カターレ富山DF・堤健吾)

 1978年生まれ、大分県出身。カターレ富山創設時のメンバーで、守備の中心選手として2009年のJ2昇格に貢献。現在は黒部市で活動する「KUROBE FC」の監督を務め、育成年代の指導に当たる。