干ばつが頻発するカンボジアの人々の暮らしを守ろうと、ゴムメーカーのシバタ工業(兵庫県明石市魚住町中尾)は、日本のため池技術の普及に向けた取り組みを7月から現地で始める。同国は農業が主要産業でありながら天候不順の影響で収量が安定せず、生産基盤の整備が長年の課題。同社は「日本とカンボジアの懸け橋の一つになれば」と力を込める。(長沢伸一)

 同社によると、カンボジアは、農業人口が労働者の半数以上を占めるとされる農業国。年間通じて気温が高く、かんがい設備も整っていないことから水不足による干ばつが多発。2004年には49万ヘクタールの農作物が被害を受け、収穫量が82%減少した。

 シバタ工業は1923(大正12)年の創業。掘削したため池の底に敷くゴム製のシートは国内で40年以上の販売実績があり、水の蒸発を防ぐため、池の水面を覆う技術も開発している。

 今回の技術支援は、同国に進出していた取引企業から深刻な干ばつに見舞われている現地の苦境を知ったのがきっかけ。農業用水などの確保を目的に土を掘っただけのため池はあるが、高気温で水が蒸発したり、地面に吸収されたりと貯水機能を十分には果たせていなかったという。

 そこで16年にカンボジア西部のバッタンバンに3カ所のため池を造り、調査や実験に着手。17年には国際協力機構(JICA)の中小企業海外展開支援事業に採択され、現地法人も立ち上げた。

 政府開発援助(ODA)の一環として、今回普及を目指すのは「天蓋(てんがい)付シート式ため池」という貯水技術。同社が琉球大と共同研究し、工法の一部は特許も取得した。

 池の底にゴム製シート、池の表面にビニール製の天蓋を設置。同社の調査によると、水の蒸発量は天蓋のないため池に比べ、5分の1に減らせることが可能になった。さらに光を遮断することで植物プランクトンの発生を抑制し、水質維持にも効果があるという。

 計画では、雨水に依存する同国内の農村4カ所に同方式のため池を造成する計画。事業は22年9月までの約2年間。掘削場所の選定などを調整後、シバタ工業から技術指導員を派遣。施工を行う現地の建設業者にシートの張り方などを指導する。

 設備の維持管理に向け、現地住民組織にシートが破損した際の補修方法を教えるセミナーや、現地の非政府組織(NGO)組織と連携した研修も計画する。

 カンボジア事業に取り組む同社の山本一夫さん(45)は「カンボジアにとって、ため池は重要な存在。農業発展や生活用水の改善が豊かな暮らしにつながるよう今後も支援を続けていきたい」と話している。