戦前、「虎(とら)の画家」として知られ、海外でも評価された神戸ゆかりの日本画家・大橋翠石(すいせき)(1865〜1945年)が、明治天皇に献上した大作の下絵が、神戸市垂水区の遺族宅で見つかった。迫真の細密表現で虎を描き、“忘れられた名匠”のスケールの大きさ、確かな技量を伝える。兵庫県立美術館(神戸市中央区)で4月18日から開催予定の「大橋翠石展」で初公開される。

 翠石は岐阜県大垣市の生まれ。動物画の名手で、毛並みの1本まで描写したリアルで勇壮な虎図で名をはせた。1900(明治33)年のパリ万博で、日本人画家として唯一、最高の「金メダル(金牌(きんぱい))」に輝き、4年後の米セントルイス万博でも金牌を受賞した。

 12年に結核療養のため神戸へ移住。戦前は、巨匠横山大観らと並ぶ高い評価と人気を誇った。中央画壇と距離を置いたため、死後忘れられたが、近年再評価されつつある。

 下絵は、翠石を研究する村田隆志・大阪国際大准教授が発見した。02年の制作で、縦174・5センチ、横105・3センチ。原寸大の大下絵とみられ、貼り合わせた紙に描かれている。絵の上部には、パリ万博で金牌を得た翠石の経歴のほか、名声が宮中にまで届き、絵の献上を命じられた経緯などが翠石の師の手で漢文で記されている。

 献上された虎図は、寅(とら)年のたびに宮中に飾られていたと伝わるが、現存は確認されていない。「本画は下絵以上に迫力ある堂々たる絵だったろう。今後調査が進めば発見も期待される」と村田准教授。翠石は皇后や朝鮮の李王家へも絵を納めており、「県内も含め各地に知られざる傑作が眠っているはず」と話している。(堀井正純)