兵庫県洲本市で2015年3月、自宅近くの当時59〜84歳の男女5人を刺殺したとして殺人などの罪に問われた平野達彦被告(45)側が、一審神戸地裁の裁判員裁判による死刑判決を破棄して無期懲役とした大阪高裁判決を不服として、最高裁に上告した。10日付。

 被告本人と弁護人がそれぞれ同日付で上告した。検察側は上告せず、法的に高裁より重い刑を言い渡せないため、死刑判決の可能性はない。

 一、二審で弁護側は、刑法で刑罰を科さないと定める「心神喪失」か、刑を軽くしなければならない「心神耗弱」だった−と主張してきた。

 一審判決は被告を「薬剤性精神病」とする精神鑑定を踏まえ「完全責任能力」を認定した。一方、二審判決は「妄想性障害」と診断した控訴審の鑑定が「病状の特徴から説得的」と指摘。被害妄想が深刻になり、衝動性や攻撃性が極めて高まっての犯行で「(被告は)心神耗弱状態だった」と判断した。

 高裁判決後、遺族らは「5人もの尊い生命を奪った被告を死刑にしないという結論はあまりに非常識」などとコメントし、大阪高検による上告を望んできた。上告期限の10日に高検は「適法な上告理由が見いだせなかった」として、上告しない方針を明らかにした。

 市民らが審理に加わった裁判員裁判の死刑判決が二審で破棄されたのは洲本の事件で7件目。いずれも二審で無期懲役とされ、うち5件が最高裁で確定した。

 残る2件は二審が心神耗弱を認めた事件。埼玉県で15年に児童ら6人を殺害したとして、強盗殺人罪などに問われたペルー人の男の控訴審判決は、統合失調症による心神耗弱を認めて無期懲役に。2件とも被告側のみが上告しており、死刑判決の可能性はない。