兵庫県洲本市で2015年3月、自宅近くの男女5人を刺殺したとして殺人などの罪に問われた平野達彦被告(45)と弁護人が、一審神戸地裁の裁判員裁判による死刑判決を破棄して無期懲役とした大阪高裁判決を不服とし、それぞれ10日付で上告した。検察側の上告断念で死刑判決の可能性は消えている。事件で亡くなった男性=当時(82)=と妻=同(79)=の遺族(夫妻の長女、孫)は13日、代理人弁護士を通じてコメントを出した。全文は次の通り。

 1月27日に言い渡された大阪高等裁判所の「無期懲役」の判決に対して、検察庁が上告せず、一方で、被告人側が上告期限の日になり上告をしたと聞きました。

 私たちは、検察庁に対して、上告をして最高裁判所の判断を仰いで欲しいと強く申し入れをしていました。それが叶わず、検察庁が上告をしないとする結論に対して、私たちは、「納得がいかない、なぜなのか」という強い憤りと疑問を感じています。

 5人の生命を奪っておきながら、死刑判決を免れるという非常識な結論が許されるのか。私たちは、納得がいかない気持ちと憤りのみならず、このような結論が通ってしまい、事件が起きてからの約5年、この時間は一体、何だったのかと、空しささえも感じています。

 平野達彦については、この事件が発生する以前から、洲本警察署に相談するなどしていましたが、警察からの援助もないままに本件が発生し、警察からも裏切られた気持ちです。平野達彦の家族らも、結局、私たちに対して何らの対応もすることなく、今まで経過し、嘘をつき逃げるのみです。

 第一審の死刑判決に対して即日控訴した弁護団、今回の控訴審でわざわざ死刑判決を覆し、無期懲役判決を出した村山裁判長ら、我々被害者の味方はいないということが分かりました。

 さらに、被告人側が上告をしたと聞き、未だに自らの犯行を正当化し、さらに上告までしたという被告人に対しては、衝撃と激しい怒りを感じるのみです。さらに、被告人の馬鹿げた主張のためのだけに、裁判がさらに続いていくという事態も耐えがたいことで、この怒りをどこにぶつけたらよいのか、どこに向けたらよいのか、分からない状態です。

 この世界のどこかに、私たちの家族を殺害した人間が生活していると思うと、苦痛で仕方ありません。平野達彦に死刑の可能性がなくなったことで、私たちは一生その事実に苦しみ続けなければなりません。

 また、平野達彦が、いつか生きて社会の戻ってくる可能性があると考えるだけでも、私たち遺族は恐怖でしかありません。平野達彦は、今なお、自らの犯行を正当化しており、そのような平野達彦が社会に出てきたとき、同じ思考に基づいて、再び私たちに危害を加えるのではないかと、今から、本当に恐怖に怯えています。

 平野達彦が死刑にならないとしても、絶対に社会に戻ってきてもらいたくない、これ以上、私たち遺族を恐怖に陥れないで欲しい、一生を刑務所で終えて欲しい、と強くおもっています。