「すべらない、神戸土産。」−。このインパクトのある広告が記憶に残っている人も多いのではないだろうか。広告主はチーズケーキで有名な観音屋(神戸市中央区)だ。神戸など関西を訪れた人にPRしようと、山陽新幹線の新神戸駅と新大阪駅の2カ所に掲示。担当者に話を聞くと、観光客だけでなく、芸人、受験生、ボクサーと多くの支持を集める意外なエピソードが続々と出てきた。(安福直剛)

 「神戸にはスイーツなどの土産物がたくさんありますよね。文字通り『観音屋の土産は間違いないですよ』という意味です」。そう答えるのは同社統括マネジャーの大重浩志さんだ。

 設置は約10年前。同社の河渕敏郎社長と広告会社の担当者が、印象に残るフレーズを目指した。「『すべらない』は“専門用語”では?」と問うと、大重さんは全国放送の人気バラエティー番組を引き合いに出し、「もはや共通語でしょう。皆さん分かってくれるはず」と自信たっぷり。販売促進用にカードも作った。

 実際反響は大きく、新大阪駅では多くの芸人が立ち寄るという。「お守り代わりに買ってくれるんでしょうか」と大重さん。千原ジュニアさんも突然店に来て、「すべらんなあ」と店員に声を掛けたことがあるという。

 芸人だけではない。受験生の保護者と思われる人から「カードをもらえないでしょうか」と問い合わせがあったり、「おかげさまで合格しました」とお礼が寄せられたり。「すべらない」のフレーズは、お守り代わりにもなっている。

 大重さんがさらに、驚きのエピソードを明かす。西脇市出身で、プロボクシング元世界3階級王者の長谷川穂積さんの「勝負ケーキ」だというのだ。

 ノーランカーの頃から同社のチーズケーキを好んでいた長谷川さん。減量前の「食べ納め」も、試合に勝った自分へのご褒美も必ずこれだったという。

 古くからの付き合いという大重さんは「途中からはリングの上でもすべらない(失敗しない)“験担ぎ”も込めて、食べていたようです」と話す。

 「すべらない」フレーズの威力、恐るべし。