22日投開票の熊本県知事選。熊本市中央区で、投票した人数と票の総数が合わず、109票が“行方不明”になる前代未聞のトラブルが発生した。同区の選挙管理委員会は有権者が「持ち帰った票」として処理し、開票結果を確定させたが、数の差が生じた原因は解明できていない。専門家は「原因究明と市職員の意識改革が不可欠だ」と訴える。

 109票が消えた原因として想定できるのは、中央区選管の処理通り、有権者が投票用紙を持ち帰ったケースだ。だが、同区だけで109人もの人が持ち帰る事態は、通常では考えにくい。

 県選管が1995年から前回2016年まで、知事選7回の「持ち帰り」を調べたところ、県全体で最も多かったのは04年の40。前回は1だ。1選管で「109」という数の異例さが際立つ。

 別の原因としては、開票作業に当たった市職員が意図的に持ち帰ったケースも想定される。中央区選管は125人全員に聞き取り調査を進めるが、「目的が見当たらず、可能性は低い」とみている。

 開票作業で投票用紙を紛失したケースも考えられる。だが区選管は「開票所のどこかに紛れ込んでいないか何度も確認した」として「開票事務は正確だった」と強調する。

 今回、109もの差を「持ち帰り」で処理したが、不正が発覚しなければ法的に問題ない。総務省選挙部管理課は「数が多くても、選管の判断を問題視できない」との見解だ。

 熊本市の選管は、開票作業でこれまでミスを重ねてきた。09年衆院選では投票記録の転記を誤り、比例票を一時紛失するなど初歩的なミスを連発。12年衆院選は集票システムの設定ミスなどで、比例代表九州ブロックの議席確定に影響を与えた。19年の統一地方選でも、県議選と市議選の不在者投票を期日前投票所で受け付けたため、計11票が「不受理」となった。

 選挙事務に詳しい一般社団法人選挙制度実務研究会(東京都)の小島勇人代表理事(68)は、市選管の「持ち帰り」処理に関し「109は驚くべき数。仮に有権者が持ち帰っていたとしても、投票所で事務を担った市職員がすべて見逃したことになる」と指摘する。

 開票ミスの頻発や選挙結果判明の遅れについても、「職員が選管からの『頼まれ仕事』という感覚でいるとしたら改善しない」と手厳しい。「貴重な1票の民意を大切にする職員の意識づくりを、首長が主導すべきだ」と注文する。(潮崎知博)