「診療できぬ」町外移転決めた病院も 県道熊本高森線4車線化

「診療できぬ」町外移転決めた病院も 県道熊本高森線4車線化

 熊本地震からの復興の中核事業として熊本県と益城町が進める県道熊本高森線の4車線化をめぐり、地元医師会との溝が埋まらない。県道沿いには、町内17の医療機関のうち半数以上が集まっており、「拡幅で診療ができなくなる」と町外移転を決めた病院や、検討する医療機関もある。「このままでは町の医療が空洞化する」との懸念もくすぶり続ける。

 「協力して地域医療を充実させようとした矢先だったのに」。上益城郡医師会の永田壮一会長(66)は、憤りが収まらないままだ。

 同医師会は地震後、町内の全医療機関で仮設住宅を含めた在宅医療に取り組もうと準備を進めていた。昨年11月に明らかになった4車線化計画は「寝耳に水だった」という。

 同医師会は計画反対の意見書を提出したが、県は今年2月、4車線化事業を都市計画決定。在宅医療は頓挫してしまった。

 永田会長が院長を務める東熊本病院(同町惣領)も拡幅区域にかかり、町に近い熊本市東区へ2019年春の移転開院を決めた。

 町内で中心的な役割を担ってきた同病院は4階建て病棟が全壊判定され、52床の入院受け入れができなくなった。敷地内に新病棟建設を予定していたところに4車線化計画が発表され、断念せざるを得なくなった。

 現在は一部の外来のみで診療を続けているが、人件費や医療機器のリース代で毎月1千万円もの赤字が出てしまう。永田会長は「残念だが、移転しかなく、患者さんたちに迷惑がかからないよう、できるだけ近い土地を探した。地域医療をどう考えるのか、行政への不信感は大きい」と打ち明ける。

 高本脳神経外科(同町惣領)の高本憲治院長(66)も「道路をつくることが復興になるのか」と首をかしげる。熊本市東区の自宅も地震で住めなくなり、院内で寝泊まりを続ける。現在の計画のままなら駐車場が全く使えなくなり、経営は難しいという。

 おがた整形外科(同町福富)の緒方博司院長(58)も「町内に移転先はなく、町外へ行くしかない」。同医師会の意見書によると、10医療機関が4車線化の影響を受けるという。

 一方、県都市計画課は今月、更地から用地交渉に入った。建物が残る対象者との補償交渉などはこれからだが、「医療機関の意向をよく聞いて代替地を探すなど、町とも協力して丁寧に進めたい」と理解を求める。

 難しい立場に置かれるのは益城町だ。道路拡幅は地震前からの要望事項。半面、昨年末にとりまとめた町復興計画では「保健・医療・福祉の充実」を掲げている。同町復興整備課は「医療機関がないと、住民の生活基盤が崩れる。仮移転も含めて、町内で再建してもらえるよう、努力を続けたい」とする。

 かかりつけの医療機関が移転を検討している生花店経営の男性(67)=同町福富=は「地震後、持病の股関節痛が芳しくない」とため息をつく。「病院が近くにないと不安。なんとか、話し合いで残ってくれるとうれしいのだが…」(林田賢一郎、久保田尚之)

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