日本の自動車メーカーやベンチャー企業など、近年各社が開発を進めているのが超小型EVです。モビリティ大国である日本で、さらなるカテゴリーのモビリティは今後普及するのでしょうか。

なぜ超小型EV? 課題は?

 日本には数多くの自動車メーカー、二輪車メーカーが存在しているだけでなく、鉄道や飛行機も含めた公共交通機関や道路網が整備されるなど、乗り物で移動するには不便のない国とされてきました。

 そんななか、近年各社が開発を進めているのが超小型EVです。モビリティ大国である日本で、さらなるカテゴリーのモビリティは、今後普及する可能性はあるのでしょうか。

 各自動車メーカーが開発を進めている超小型EVですが、その定義はまだ曖昧です。広義には文字通り超小型で1人から2人乗りのモーター駆動車を指しますが、「軽自動車」や「3ナンバー車」のような厳密な規格があるわけではありません。

 国土交通省は「自動車よりコンパクトで小回りが利き、環境性能に優れ、地域の手軽な移動の足となる1人から2人乗り程度の車両」を「超小型モビリティ」と定義していますが、EVに限定しているわけではありません。

 そんななか、東京モーターショー2019では、トヨタから「超小型EV」という名で超小型EVが発表されました。プロトタイプということもあり非常にややこしい名前ですが、2人乗りが可能で、全長2490mm×全幅1290mm×全高1550mmという、軽自動車をさらに短く、そしてスリムにしたサイズ感です。

 また、最小回転半径は3.9m、最高速度は60km/h、そして最大航続距離は100kmと発表されました。

 また、トヨタは以前から日本国内の超小型EVの先駆け的存在である「コムス」を販売しています。コムスは1人用ではありますが、コンビニエンスストアの配達車両として多く活用されるなど、すでに実用されています。

 さらに、ホンダは以前から「MC-β」という電動のマイクロコミューターの開発を進めており、熊本県熊本市や沖縄県宮古島市などで実証実験をおこなっています。

 加えて、日産も「ニューモビリティコンセプト」の名で超小型EVの実用化を進めており、同社が提供するラウンドトリップ型のカーシェアリングサービス「チョイモビ」を利用することで体験することが可能です。

 いずれの超小型EVも大人2人が楽に乗れるうえ、公道走行が十分可能な動力性能を持っていることが特徴です。上記の大手自動車メーカー以外にも、多くのベンチャー企業などが超小型EVの開発を進めているといわれています。

 では、なぜいま各社が超小型EVの開発に力を入れているのでしょうか。

 欧米でも同様の動きは見られますが、とくに日本は超小型EVが必要である切実な状況があります。ここでキーワードとなるのは「超高齢化社会」と「地方の過疎化」です。

 すでに日本は、世界でも前例のない超高齢化社会となりつつあり、寿命が伸びたことによって高齢者は増え続け、一方で少子化によって生産年齢人口が増えないという状況があります。

 さらに、若年層の都市部への移住が進むことで地方の過疎化も進んでいます。結果として、地方に多くの高齢者が住み続けることになるのです。

 地方であればあるほど、生活のために移動は必要不可欠ですが、高齢者は身体機能や認知能力の低下によって、これまでのように自動車を運転することが困難です。

 高齢者による交通事故が日々メディアを騒がせていますが、こうした痛ましいニュースは今後も増え続ける可能性があります。

 これまではバスなどの公共交通機関が地方部の移動ニーズをカバーしていましたが、近年では採算が合わず、ほとんどが行政の補助金を受けなければ運用できないといわれています。

 このように、高齢者による地方部の移動ニーズは今後ますます増え続けることになりますが、公共交通機関でカバーできる範囲には限界もあり、ある程度の移動は個人で行えるような社会システムが求められている状況です。

 そこで提案されているのが超小型モビリティとなり、加えてバッテリー技術の進歩や環境への配慮、エネルギー補給のしやすさといった観点から、EVの超小型モビリティ、つまり超小型EVが求められています。

 今後の日本社会においてますます重要となる超小型EVですが、課題も少なくありません。
 
 ひとつは法整備上の課題です。現在の制度では、上に挙げた2人乗りの超小型EVは「ミニカー」に区分されます。

 ただ、道路交通法上は自動車であるため、現実的には普通自動車免許が必要となります。したがって、普通自動車免許を返納した高齢者は乗ることができないことになってしまうのです。
 
 また、日本は軽自動車という独自規格の自動車が非常に発達している国であり、今後軽自動車のEVも登場してくると思われます。

 そうした自動車と比べると、走行性能や居住性、安全性の面で超小型EVのメリットは見えづらくなるかもしれません。

 そして、現在官民一体となって進めている各実証実験ですが、導入に向けた明確な成功例が出ていないということも課題のひとつです。

 超小型EVがヒット商品となれるかはどうかは、法整備や補助金・助成金制度の構築、充電や整備のインフラ構築、そして軽自動車やコンパクトカーをもしのぐ商品性の獲得など、さまざまな課題が山積みであり、まだまだ時間が必要だといわざるを得ません。

 とはいえ、遅かれ早かれ社会全体が超小型EVのようなモビリティを必要とする時代が来るのは間違いないでしょう。