日本の新車市場で人気の高いコンパクトカーは、人気モデルの多くが後部ドアにヒンジドアを採用しています。一方、ほかの人気カテゴリである軽自動車やミニバンは、スライドドアの採用モデルが多いです。なぜ、コンパクトカーはヒンジドアでも問題ないのでしょうか。

コンパクトカーはヒンジドアで問題なし? なぜ売れ筋モデルがスライドドアではないのか

 国内の新車市場において、コンパクトカーは長年人気のカテゴリとなっていますが、売れ筋車種の大半は後部ドアにヒンジドア(開き戸タイプ)が採用されています。2020年2月発売予定のホンダ新型「フィット」やトヨタ新型「ヤリス」も後部ドアがヒンジドアです。

 一方、同じく人気カテゴリの軽自動車やミニバンでは、売れ筋車種の後部ドアにスライドドア(引き戸タイプ)が採用されていることが多いです。なぜ、コンパクトカーの大半において、スライドドアではなくヒンジドアが採用されているのでしょうか。

 スライドドアには、隣のクルマにドアをぶつける心配がなくなる点や、大きな荷物を車体側面から積載しやすくなる点など、数多くのメリットが存在します。

 しかし、日本自動車販売協会連合会が発表した2019年度上半期(4月から9月)の登録車販売台数ランキングによると、この期間でもっとも販売台数が多かったコンパクトカーである日産「ノート」も後部ドアがヒンジドアであるほか、コンパクトカーの販売上位10台のうち7台が、ヒンジ式の後部ドアを採用します。

 また、上位10台に含まれるフィットは、前述の通り2020年2月に第4世代となるほか、トヨタ「ヴィッツ」も新型ヤリスへ名前を変えて全面刷新されますが、どちらもスライドドアへ変更されることはなく、ヒンジドアのままです。

 なぜ、軽自動車やミニバンで定着しているスライドドアは、コンパクトカーでは定番とならないのでしょうか。ホンダの販売店スタッフは次のようにいいます。

「弊社のラインナップのなかには、ヒンジドアのフィットと比較対象となるクルマとして、後部ドアにスライドドアを採用するコンパクトミニバン『フリード』が存在します。

 両車の価格を比較すると、フィット(現行型)の売れ筋グレードがガソリン仕様で160万円前後、ハイブリッド仕様で200万円前後となるのですが、フリードではガソリン仕様の売れ筋が210万円前後、ハイブリッド仕様の売れ筋が260万円前後となり、フィットのハイブリッド仕様とフリードのガソリン仕様はそれほど差がありません。

 お客さまが気にされる違いのひとつもスライドドアの有無となることから、比較対象にもなり得ます」

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 現行型フィットのボディサイズは、全長3900mm×全幅1695mm×全高1525mm(標準仕様)となる一方、フリードは全長4265mm×全幅1695mm×全高1710mm(標準仕様)と、タワー式立体駐車場に入庫しづらい車高となっていること以外は、実用面にそれほど影響のないサイズ差といえます。

 またフリードには3列シート仕様のほかに、2列シート仕様の「フリード+」も設定されており、多人数乗車はしないものの後部スライドドアは欲しいというユーザーに適しています。

 つまり、コンパクトカーを検討しているユーザーが後部スライドドアに魅力を感じた場合コンパクトミニバンを選択することが、コンパクトカーにスライドドアのクルマが少ない理由のひとつといえるのです。

 トヨタにも3列シート仕様/2列シート仕様を設定する後部スライドドアの「シエンタ」というコンパクトミニバンがラインナップされており、トヨタ内の「アクア」やヴィッツなどのヒンジドアのコンパクトカーとシエンタは、価格差やボディサイズ差などでフィットとフリードの関係性と似ています。

 コンパクトカーとコンパクトミニバンは、重複する特徴を持ちつつもそれぞれの足りない部分を補い合う関係にあるといえます。

数少ない後部両側スライドドアのコンパクトカーがランキング急上昇! いったいなぜ?

 後部ヒンジドアが主流となるコンパクトカー市場ですが、数少ない後部両側スライドドアのコンパクトカーが、人気を博しています。それが、トヨタ「ルーミー/タンク」です。

 ルーミー/タンクは、ダイハツ「トール」のOEMモデルという立ち位置となり、ルーミーはトヨタ店・カローラ店で、タンクはトヨペット店・ネッツ店で販売されています。

 前出の2019年度上半期の登録車販売台数ランキングでも、ルーミー/タンクはともにコンパクトカーの販売台数上位10台にランクインしているほか、総合順位でもルーミーが5位、タンクが12位となっています。

 そんななか、2019年10月のランキングで、ルーミー/タンクはランキング順位を急上昇させます。ルーミーはコンパクトカー首位となる総合3位、タンクもコンパクトカーで2位となる総合5位につけて、単月ではあるもののルーミー/タンクはコンパクトカーの販売ランキング1位・2位を独占したのです。

 2019年10月は消費税増税があったこともあり、コンパクトカー販売台数首位のノートが9月の1万3183台から10月の5263台へ販売台数を急落させたことをはじめ、ほかの人気モデルも軒並み販売台数を落としました。

 しかし、ルーミーは9月の9046台が10月は6962台、タンクは9月の7569台が10月は5420台と、減少はしたものの下落幅が小さかったことから、相対的に順位を上げました。

 後部ドアにスライドドアを採用するコンパクトカーは、両車のほかにはそれほど車種が存在せず、ルーミー/タンクと同じくトールのOEMモデルとなるスバル「ジャスティ」のほか、スズキの「ソリオ」など数える程度しかありません。

 そのため、ルーミー/タンクの販売台数が好調であることをもって、コンパクトカーにおいても両側スライドドアが必要と断定することはできないものの、一定のニーズがあることは確かです。

 2020年2月に登場する新型ヤリスや新型フィットをはじめとしたコンパクトカーはヒンジドアで登場しますが、今後コンパクトカーやコンパクトミニバンなどのカテゴリで、後部両側スライドドアのモデルがはたして登場するのか、2020年以降の新型車ラインナップが注目されています。