日本ではセダンモデルの人気が低迷しています。しかし、中国では日産「シルフィ」が爆発的な人気を得ています。なぜ、日本と中国ではセダンの人気にここまで差が開くのでしょうか。

イケてる日産の海外セダンは日本に来るのでしょうか。

 日産は、海外向けに相次いでセダンモデルを投入。2019年2月には、中国にて「シルフィ」を発表、同年11月にはシルフィの兄弟車にあたる「セントラ」などを北米で公開し、セダンモデルに力を入れています。

 一方の日本市場では、セダンモデルの人気が低迷し、日産でも「ティアナ」が2019年内に生産終了。「フーガ」や「シーマ」は安全装備などを改良するほどに留まるようです。デザインが刷新された日産の海外セダンは日本に入って来ないのでしょうか。

 シルフィは、2018年の中国市場で販売台数47万5696台を記録。この数字は、2019年4月に開催されて「上海モーターショー2019」で新型モデルが発表される前の先代モデルの台数です。

 しかも、モデル末期という新車が売れにくい状況にも関わらず、2017年の40万5854台から18.6%も増加するほど、日産の中国市場には無くてはならないモデルといえます。

 新型シルフィのボディサイズは全長4641mm×全幅1815mm×全高1450mmとなり、日本仕様の全長4615mm×全幅1760mm×全高1495mmと比べて一回り大きいサイズになっています。

 実際に中国市場で、新型シルフィを購入したユーザーには若年層も多いといい、先代モデルよりも向上した質感が好評のようです。

 新型シルフィは、燃費性能を向上させた新しいパワートレインを採用し、より低重心でワイドなスタンスとともに空力性能を向上させた外観のデザイン、そして広く質感の高い内装を実現しています。

 また、パワートレインは、1.6リッターガソリンエンジンにCVTを組み合わせたもので、プラットフォームは、新設計のものが使われた結果、従来モデルでも特徴的だった広い後席足元空間はさらに拡大されました。

 中国と日本のシルフィ人気の差について、日産の担当者は次のように話します。

――中国で人気の理由を教えてください。

 2006年に中国市場への投入以来、シルフィは中国の家族をターゲットとして、業界をリードする空間の快適性、燃料効率、信頼性でニーズを満たしています。

 さらに、マーケティングによってシルフィのコアアドバンテージを強調することで、中国の家族層においてユニークな製品の位置づけを確立しました。

 これらの理由から、シルフィは中国での自動車市場の激しい競争のなかで支持いただいております。

――日本で中国ほどヒットしていない理由とは?

 2019年8月までの累計で、初代ブルーバードシルフィ(初代G10型)からの累計は29万1277台です。3代目のシルフィ(B17型)からの累計は3万7172台になります。

 中国では、セダンが人気なのに対して、日本では市場の3割から4割を軽自動車が占めております。また、独立したトランクスペースを持たず、より空間効率が優れているSUVやミニバンが人気を高めていることも要因のひとつと考えられます。

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 日産と同様に、日本と比べてセダンの販売が海外で好調なのがホンダです。日本市場では、フラッグシップ「レジェンド」を始め、北米市場でも人気の高い「アコード」や「シビック」、教習車などにも使われる「グレイス」など幅広いセダンのラインナップを持っていますが、販売台数では苦戦を強いられているのが現状です。

 しかし、中国市場ではシビックの2018年の販売台数が20万台を超え、日本の同時期と比べて20倍差になります。ホンダの担当者は、中国市場のセダン人気について次のように話します。

「中国では、北米同様にシビックやアコードが人気です。その要因としては、セダンそのものが人気なのもありますが、両車の質感の高さが好評だとも聞いています。

 他車でも他国と比べて高級感ある内装を中国市場向けに設定しているという話もあるので、恐らくいまの中国人のニーズが『セダン×高級感』というところにあるのではないでしょうか」

 中国市場の新型シルフィのように高級感(高品質)でありながら手が届く価格帯であれば、もう一度「セダンの復権」はあるかもしれません

2020年に新型「ノート」登場? 今後の日産はどうなる?

 最近の日産は、主力モデルの「ノート」や「セレナ」が電動パワートレイン「e-POWER」の成功によって好調ですが、新型モデルとしては、2019年に軽自動車「デイズ」を発表したのみです。

 軽自動車市場では好調ですが、主力となる登録車で商品力低下が懸念されていました。そのため日産は、2020年に現在のラインナップを刷新して、5車種を国内市場に投入する予定です。

 それらのモデルとは、主力の「ノート」や「エクストレイル」を始め、東京モータショーで発表された「アリア」や南米を中心に販売されているSUV「キックス」ではないか、といわれています。

 また、日産は今後のラインナップについて、「高品質」をテーマにしています。新型シルフィの内装は、日本で市販されている日産車と比べると、細かな部分で質感が向上していることがわかります。主な改良点について、開発担当者は次のように話します。

「いままで日産車は内外装の質が低いといわれていましたが、それらを払拭するためにも、『人を科学し、感性に訴える機能、形状の作り込み』をテーマに、車両の機能・形を定量的に結び付けて設計し、お客さまの期待を上回る高品質感を提供できるように開発に力を入れました。

 具体的には、ボンネットとボディの隙間を均等にして見栄えを良くする工夫や、ドアハンドルの握り心地や操作性を同社SUVの『エクストレイル』よりこだわっています

 また、ドアの開閉音の乗り込む瞬間から乗り込んだ後の車内空間で高品質感を意識して開発しており、メッキパーツやブラックの加飾パネルを各所にあしらっているほか、エアコンパネルスイッチの操作感など頻繁に触る部分や目に見える部分の質感は凄く向上したと思います」

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 では、中国市場で爆発的な人気を誇るシルフィなどの海外セダンは、日本に投入される見込みはないのでしょうか。

 新型シルフィの価格は、日本円に換算して約150万円から設定され、装備差などはあるものの、各部品の品質に差はないようです。なお、発売後では月間2万台ほどを販売するほど好調だといいます。

 日本市場への導入について、日産の担当者は次のように話します。

「日本へ導入を要望される声は聞きますが、日本ではセダンモデルの需要はあまり多くありません。そのため、中国仕様を日本仕様に変更するコストなどを考えると、難しいのでは無いでしょうか」

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 日産が海外で販売するセダンモデルには、前出のセントラをはじめ日本未導入の「ヴァーサ」、「アルティマ」、「マキシマ」などがラインナップされています。

 どのモデルも現在、日本でラインナップされているセダンとはキーデザインの「Vモーション」など共通する部分はあるものの、日本のモデルよりスタイリッシュな印象です。

 2019年7月に「スカイライン」がビッグマイナーチェンジを経て、フロントデザインを変更したことなどの影響もあって、販売台数は堅調だといいます。

 日産のセダンが前述の「低価格×高級感×スタイリッシュ」という要素を合わせれば、今以上に販売台数を伸ばすことができるのかもしれません。