クルマのカスタム業界でよく聞く「コンピュータ・チューニング」とは、いったいなんのために、どのような手法でおこなわれるのでしょうか。コンピュータ・チューニングの基本を簡単に解説します。

エンジンの出力アップのために、コンピュータをセッティングする

 現在のクルマのエンジンは電気的に制御されるようになりました。それをコントロールするためのコンピュータ(以下ECU)は、クルマを走らせる上で欠かせない存在になっています。
 
 そこで、エンジンの出力アップを追求するためにも「コンピュータ・チューニング(ECUチューニング)」が必要となってくるのですが、ECUチューニングとは一体どのようなものなのでしょうか。

 エンジンの出力をアップするために、最近では「エアクリ(エアクリーナー)・マフラー・コンピュータ」の三種の神器と呼ばれるチューニングパーツに交換することが定番です。
 
 出力アップには、スポーツタイプのエアクリーナーに交換し、より多くの空気をエンジン燃焼室に取り込むことで燃焼効率を高め、排気ガスを素早く大口径マフラーで抜かなければなりません。
 
 この時にECUチューニングによって、燃料噴射量と点火時期をベストにセッティングしなければならないのです。つまり、理想的な空燃比(空気とガソリンの比率)を引き出すために、コンピューターのプログラムを書き換えて条件に応じた調整をおこなう必要があるのです。
 
 自動車メーカーのECUセッティングは、絶対にエンジンが壊れない、ゆとりの安全マージンを確保しています。
 
 そのため、燃料噴射量が薄くなることで発生するノッキングという異常燃焼を避けるために、あらかじめ燃料を濃く噴射し、点火時期を遅らせて本来引き出せるはずのパワーを抑えていることがあります。
 
 また、トラクションコントロールの普及によって、電子制御スロットルが当たり前になった現代のクルマでは、これらの制御もECUでおこない、あえてスロットル開度が100%にならないようにもしています。
 
 つまりECUチューニングは、こうした自動車メーカーが定めた安全マージンを少し削って、走るステージに合わせてエンジンのフィーリングをよくし、パワーアップにつなげるように再プログラムして、データを書き換えるというものです。
 
 ただし、すべてのクルマが同じ条件ではありません。装着するエアクリーナーやマフラーといったパーツが変われば、その特性も違ってきます。
 
 また、同じエンジンでもオーナーの使い方次第で、エンジンの個体差も生じてきます。そうした細かい部分を専用の機器で確認しながら、「アクセルの開け方」や「負荷のかかり方」を各回転域、走るステージに合わせて、地道に現車合わせしてECUをセッティングしてきます。
 
 このようにして、クルマの特性に合わせたベストなパワーを引き出せる専用のECUを作り出すことをECUチューニングといいます。

コンピュータ・チューニングの3つの方法

 ECUチューニングには、大まかに分けると、3つの種類があります。ひとつ目が純正コンピュータのデータを書き換える方法、そしてふたつ目がサブコンと呼ばれる別のECUをコンピュータに接続する方法、さらに、すべての制御を純正コンピュータではなく、新たに用意したコンピュータでおこなう方法です。

●純正プログラムの書き換え(ROMチューン)

 もっとも一般的なECUチューニングが、ECU内の燃料噴射と点火時期を調整している個所のデータを書き換えるROMチューンと呼ばれる手法です。
 
 ひと昔前は、純正ECU内に追加基盤と呼ばれるCPUをセットし、そこに新たなデータを入れて読ませるという方法で、クルマに合わせてリセッティングをおこなっていました。

●サブコンピュータ(サブコン)

 サブコンとは純正ECUと併用するサブのECUのことを指します。純正ECUには多種多様の制御データが収められています。
 
 それらの機能はそのまま残して使い、チューニング時に必要になるデータのみをサブコン側で制御するという方法です。
 
 仕組みとしては、クルマに数多く存在するセンサーのなかから、チューニングに必要になる箇所のみをカットして、純正コンピュータを介さずサブコンによって制御するという方法です。
 
●フルコンピュータ(フルコン)

 フルコンとは純正のECUを外して、独自にプログラムさせたECUですべての制御をおこなう手法のことです。
 
 サーキット専用車やドリフト専用車などでは、快適装備や安全装備などの制御は必要なくなり、エンジン制御だけに特化することができます。この方が性能を追及しやすく、きめ細かなECUのセッティングが可能です。
 
 サーキットなど、クルマが走るステージを限定したセッティングをおこなえば、フルコンを使った方がパワーも出て燃費もよくなる傾向にあります。その理由は、理想空燃比を常に追求した走りが可能になるからです。

※ ※ ※

 一番スマートなのは、純正ECUの一部のデータ書き換えをおこなうROMチューンです。しかし、ターボチューンやメカチューンなど、よりチューニングが進むと、それに合わせてデータを細かく分析、調整できるECUが必要になります。
 
 そのため、走らせ方や走るステージなど、目的に応じたより優れたECUが、アフターパーツ業界では用意されています。たいていの場合、専門のチューニングショップでセッティングしてもらうことになります。