約40年前に一大ブームを巻き起こした「デコトラ」。近年では、さまざまな規制などによって減少傾向にあるようです。そんななかでも、現代でも残るデコトラ文化とは、どのようなものなのでしょうか。

かつて一大ブームを起こした「デコトラ」とは

 かつて映画などを筆頭にブームを巻き起こした「デコトラ」という文化がありました。近年、その姿を見かける回数は減りましたが、いまの「デコトラ事情」はどうなっているのでしょうか。

 デコトラとは、キラキラのステンレスや、電飾などの派手なデコレーションが施されたトラックを指します。もともと、雪国の水産輸送トラックが、融雪剤の影響によるボディの劣化を修復するため、ステンレス製の板を打ち込んでいたことが発祥といわれています。

 1975年に公開された映画「トラック野郎」が火付け役となりデコトラブームが起き、デコトラを乗り回す長距離トラックの主人公を描いたこの作品は、全10作品にも及ぶ大ヒットシリーズとなりました。

 また、主人公の乗るトラック「一番星号」はプラモデル化もされ、当時の子どもたちに絶大なる人気を集めるなど、社会現象を起こしました。

 しかし、トラック野郎のヒットにより、デコトラのイメージは大きく一転します。作中では、デコトラを使って警察の追跡を追い払ったり、パトカーを横転させるなど、過激なシーンも数多く登場します。

 その結果、警察庁からのクレームが入り、トラック野郎は打ち切りになったりました。同時に、派手な装飾をするトラックの取り締りも強化され、デコトラブームは徐々に衰退していったのです。

 現在のデコトラ市場はどうなっているのでしょうか。トラックパーツを扱うトラックアート歌麿のスタッフは以下のように話します。

――現在でもデコトラ愛好者はいますか。

 現在も、デコトラ愛好家は大勢います。デコトラブームが起こった当時に比べて、その絶対数は減っているものの、全盛期の半分以下ほどではありません。また、デコトラ愛好家たちのなかには、20代をはじめとする若い人もいます。

 その独特のデザインも、マーカーランプの電球がLEDに変わったくらいで昔と今で大きく変わりません。その代わり、時代とともに進化する技術を装飾に取り入れているため、より一層派手さが増しています。

――派手な装飾をしたデコトラ愛好家は、どのように趣味を楽しんでいますか。

 デコトラ愛好家のなかには、日常生活でカスタムしたトラックを楽しむために、全長や幅、高さなど、構造変更をおこなって公道を走る人も多いです。

 また、規制に引っかかるパーツについては、一時的に取り外し、イベントのときに合わせて装着しているケースも目立ちます。

――デコトラのデコレーション費用はどれくらいですか。

 こだわる度合いによって変わりますが、デコトラでよく使用される中型4トン車の場合、1000万円以上かかるのが一般的です。

 なかには、プライベート使用として小型2トン車をベースにしたデコトラも存在しますが、こちらも4トン車と値段は大きく変わりません。通常のトラックをカスタムする際は、車体の規模によって金額が大きく変動することはないです。

 ただし、近年は軽トラのデコトラも流行っています。4トン車や2トン車のトラックに比べると、手軽にデコレーションできることから、多くのデコトラ愛好家に親しまれています。また、普通のトラックに比べて、装飾する範囲も小さくなるので、費用も200万円から300万円程度まで抑えることができるでしょう。

デコトラ減少の背景にはコスト面の影響が大きかった?

 映画の影響でブーム化し、取り締まりなどの強化によって減少していったデコトラ文化ですが、それ以外にも派手な装飾をやめるトラック運転手が増えているようです。

 デコトラの運転手の大半は個人事業主となります。個人事業主が多い理由には、自らの所有物として自由にトラックをデコレーションできるためですが、トラック運送会社もデコトラを禁止する動きが目立ちました。

 さらに、デコトラを見かけない理由には、「維持費」の問題もあげられます。まず、デコトラの改造費用は、1台につき家一軒が建てられる額だといわれます。

 燃料のコスト面もデコトラ離れの大きな要因です。一般財団法人日本エネルギー経済研究所 石油情報センターのデータによると、ディーゼル車で使用される軽油価格は、1999年の段階で1リッターあたり76円から79円でした。

 その後、2004年以降は1リッターあたり85円から88円になり、2010年代に突入すると100円以上に上がりました。

 こうなると、改造パーツで重量がかさむデコトラは燃費悪化に繋がり、改造費用や燃料コストによる採算が合わなくなった結果、近年その姿を見かける回数も減っていると考えられます。

 しかし、かつてのデコトラ文化が完全になくなったのかといえば、そうではありません。令和に突入する現代も、その文化は根強く生きています。

 また、大手自動車系の出版社は、全国各地で年に数回のイデコトラベントを開催。デコトラ愛好家たちは、こうしたイベントで自慢のデコトラを発表するなど、その趣味を楽しんでいるようです。

 また、現在のデコトラは装飾の規制に応じて、外観だけでなく内装にも力を入れています。座席シートは豪華絢爛なデザインとし、荷台にシャンデリアを設置したり、電子レンジや冷蔵庫の導入など、キャンピングカーさながらの内装を作り上げるデコトラも登場しています。

 長時間クルマに乗るトラック運転手にとって、充実した室内空間は仕事へのモチベーションにも大きく繋がっているのでしょう。

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 大ヒット映画「トラック野郎」を火付け役に、ブームを巻き起こしたデコトラは、そのイメージや改造車に対する取り締まり強化によって、見かける回数も減りました。

 しかし、令和に突入した現代にも、デコトラ文化は脈々と受け継がれているようです。