かつて、クルマのカーナビは後からでも交換可能なタイプが主流でした。しかし、最近ではクルマと一体型のディスプレイオーディオなどが定番化しています。なぜ、後付けナビはNGなクルマは増加したのでしょうか。

専用ナビの機能はカーナビゲーションだけじゃない?

 クルマのナビは、これまでメーカーやディーラーなどでのオプションや、社外製などの後から付け替えられるものが一般的でした。しかし、近年は交換できないタイプのメーカー専用ナビが増えています。なぜ後から交換出来ないような専用ナビが増えているのでしょうか。

 国産車に装着可能なカーナビの多くは、「DIN」と呼ばれる規格を用いています。

 ナビを後付けするスペースは、この「DIN」によって統一されており、どの自動車メーカーでも共通の後付けナビを使うことができます。そのため、極端な例では「トヨタのオプションに設定されている後付けナビ」を、日産やホンダのクルマに付けることも可能でした。

 しかし、近年のメーカー専用ナビディスプレイは、それができないものも増えています。

 例えば、マツダ「ロードスター」のナビは、DIN規格の後付けナビとは大きく異なる、台形のディスプレイを採用。クルマと一体化していて、取り外すことができない専用形状になっています。

 また、トヨタ「プリウス」では、タブレットのような縦長ディスプレイを装着しており、DIN規格の後付けナビとは、形状が異なります。

 さらに、トヨタ「カローラ/カローラツーリング」や「ヤリス」でもディスプレイオーディオという専用のものが採用されました。

 交換できる後付けナビは、機種によってカーナビの機能やオーディオの機能が充実しているほか、価格も3万円から10万円以上と、多彩なラインナップが存在。それに比べると、専用ナビを不便に感じることもあるはずです。なぜ、自動車メーカーはこのようなナビを装備しているのでしょうか。

 あるマツダ販売店のスタッフは、以下のように話します。

「専用ナビを装備する理由としては、『マツダコネクトサービス』を使えるためです。

 専用ナビには、アプリとの連携、オーディオ関係の設定、ハンズフリー通話、燃費計を表示する機能のほかに、事故が起こった際にオペレーターと通信するサービスが付いています。また、SDカードを別途購入していただければ、カーナビとしての機能も使うことができます。

 現在マツダでは、CX-5とCX-8には後付けナビが付けられると思いますが、そのほかの車種では専用のナビを装備しています」

※ ※ ※

 専用ナビでは、カーナビは追加機能の一部のようです。スマートフォンが広く普及するようになった現代においては、アプリなどでの連携が必須となっているため、クルマ側がスマホと通信するための装備として、専用ナビが付いているのといえます。一方で、後付けナビへ対応する車種は減りつつあるようです。

 トヨタ販売店のスタッフは、以下のようにも話しています。

「プリウス用の専用ナビは11.6インチの大型ナビとなり、エアコン操作といったカーナビ以外の機能を持っています。

 従来よりも大画面で地図が見やすくなっているほか、車両の周囲360度を俯瞰するように見ることができるパノラミックビューとも連携しています。また、大型ナビは、JBLプレミアムサウンドシステムを選択することができ、最大10個のスピーカーをコントロールする機能もあります。

 しかし、従来のナビに比べると高額で、約45万円ほど高くなります。操作感もいままでのカーナビとは少し異なります。お客さまの用途に合わせて選ばれた方が良いかもしれません。

 また、プリウスにはオーディオレス仕様が選べるグレードもありますので、従来の後付けタイプナビを装着することが可能です。その場合、エアコンのコントロールはボタンタイプになります」

 最近では、後付けナビにもBluetoothによってスマホと通信する機能を持った商品が登場し、プリウスの場合ではスマホと通信するために高額な専用ナビが必要というわけではないようです。

 トヨタの専用ナビには、後付けナビには無い「コネクティッドサービス」の端末としての機能もあります。

 コネクティッドサービス機能を持つナビは、「T-connectナビ」と呼ばれ、10インチ、9インチ、7インチサイズをラインナップ。

 コネクティッドサービスでは、ウィンドウの閉め忘れや、駐車中のクルマの異常を知らせてくれたり、ニュースや天気予報の案内や、運転手に休憩を促すエージェント機能など、多彩なサービスを提供しています。

 従来のナビは、文字通りナビゲーションをメイン機能とし、オーディオ機能などが付加価値として付いていたものでした。

 しかし、コネクティビティが進む現代においてクルマと繋がるさまざまな機能(ナビゲーション、オーディオ、エアコン、車両情報など)を複合的に活用するためのツールへと進化するため、クルマと一体型のものへと代わっているのです。

メーカー純正のカーナビには、こんなタイプもあった!

 日産「GT-R」は、専用ナビを標準装備しています。DIN規格ではない専用ナビとなっており、後付けナビへの交換ができません。

 しかし、専用ナビならではの機能として、エンジン内部のオイルや冷却水の温度、そして、エンジンに大量の圧縮空気を送り込む「ターボチャージャー」の過給圧力をリアルタイムに表示する機能があります。これは、GT-Rならではの機能をいえます。

 同様の機能を持つ車種として、ホンダ「S660」があります。

 S660は、ホンダによれば「走る喜びを追求したスポーツカー」とされており、S660の6.1インチのディスプレイに「Gメーター表示」機能が搭載されています。

 これは、クルマが加速したり、コーナリングした際にかかる重量、「G」を可視化してドライバーに伝えるもので、スポーツカーにふさわしい機能です。

 こうしたナビの機能について、ある中古車販売店のスタッフは以下のように話します。

「カーナビは、もともとラジカセやCD・MDが入るDIN規格のスペースを利用してきました。昔はDIN規格のスペースがひとつ分しかない「1DIN」のものあったため、ナビ画面がスライドして展開される後付けナビも販売されていました。

 ただ、現在は専用ナビが主流となっているため、中古車によってはナビを取り外したり、選べないという問題があります。最新の高級車や輸入車のナビは非常に良くできているので快適なのですが、年式の古いクルマの専用ナビだと、画面が小さくて見づらかったり、動作が遅くストレスも溜まります。地図データも最新のものではないので、結果的にスマートフォンの地図アプリを利用する場合が多いです。

 そうした古い純正ナビを取り外し、後付けナビを装着する商品などもありますが、高額になります。気軽に後付けナビにする、ということは難しくなるかもしれません」

※ ※ ※

 クルマのナビは、ラジカセから発展し、現在は通信技術の発達に伴って「繋がるために必要な装備」となりつつあります。

 自動車メーカーでは専用ナビと、自社のコネクティッドサービスを連携させることが一般的となっており、今後も専用ナビはさらに増えていくかもしれません。

 一時期は、クルマを購入する際に「どのナビにするのか」を選ぶ楽しみもあったといわれますが、今後はそうした楽しみは無くなってしまうのでしょうか。