高齢ドライバー向けの実技講習会を定期的に開催しているJAFが、65歳以上のドライバーを対象にした座学講習会を初めて開催しました。高齢ドライバーの事故に対する社会的関心の高まりを受けて開催された「シルバードライバーセミナー」とは、どのようなものなのでしょうか。

運転に関する能力は加齢とともに低下 高齢者が気を付けることとは?

 昨今、高齢ドライバーによって引き起こされる事故に対し社会的な関心が高まっていますが、年代別の交通事故件数における割合としては20代がトップだといわれています。その次に多いのが40代で、20代と40代を合わせると、全体の約4割を占めるそうです。

 問題視されがちな65歳以上のドライバーの事故は、2割程度とのこと。高齢者が起こす交通事故は悲惨なものが多く、ニュースなどでも取り上げられることで記憶に残りやすいことから、高齢者が多く交通事故を起こすようなイメージがありますが、統計的に見ると若い世代も交通事故を起こしていることがわかります。

 そんななか、JAF東京支部は「シルバードライバーセミナー」を2020年1月18日に開催しました。このセミナーは、65歳以上のJAF会員とその家族を対象としたものですが、参加条件を「65歳以上」に設定した講習会は、JAF東京支部では初の試みだといいます。

 なぜこのような講習会が開催されたのでしょうか。

 シルバードライバーセミナーを開催した理由についてJAF東京支部は、「高齢のドライバーによって引き起こされる事故への社会的関心の高まりや、それにともなうお客さまから多数の要望を受け、年齢を重ねても安全にドライブを楽しんでいただくためにシルバードライバーセミナーを開催しました」と説明しています。

 運転に関する能力は年齢とともに低下する傾向があることから、JAFではこれまで高齢ドライバーに対し、実技を通じて自身の運転技術を確認する講習会を定期的におこなってきました。

 一方、シルバードライバーセミナーは実技を伴わない座学のみの講習会で、講話のほかに、ドライブレコーダーの映像を見てディスカッションするプログラムなども用意。高齢ドライバーの事故の要因である判断力の低下を補うべく、自分の運転スキルを正しく掌握し、能力に応じた運転を心掛けてもらうということを目的としています。

 高齢者の運転の特徴は、加齢で低下した判断能力を補うため、「スピードを出さない」、「車間距離を長く取る」、「夜間は視界が悪くなるから昼間だけ運転する」など、状況や体調などを考えて運転する「補償的運転行動」を実施している人が多いといわれています。

 事故の危険要因のひとつである「急ぐ気持ち」など、自分の心理状態を見極めつつ、そうした心理状態を自覚したうえで運転をするのは、若年者よりも高齢者のほうが得意なようです。

 年を取って経験を重ねるということが、ドライバーにとってはマイナス要因だけではないといえます。

自分の運転を客観的にみることが大切 それができなくなったら免許返納へ

 講話のあとは、運転にも関わる目の機能や認知機能をチェックするゲームをおこないました。

 JAFの「エイジド・ドライバー総合応援サイト」でも紹介されているものですが、画面に現れる数字のなかから指定の数字を数えたり、画面に表示される文字の「いろ」か「よみ」を答える、目の体操・頭の体操をおこなうことで、自身の能力レベルが自覚できます。

 さらに、実際のドライブレコーダー映像を見ながら、事故回避のヒントを探っていきます。

 JAFが製作した交通安全を学ぶための映像集「セーフティシアター」より、「直線道路にて」「生活道路にて」「交差点にて」「駐車場にて」の動画を見ながら、ヒヤリとしたところやなぜヒヤリとしたか、そのほかに気づいたことなどを記入します。

 そして4種類のドライブレコーダー映像を再び見ながら、「どうすればもう少し余裕のある事故回避ができたか」ということについて、ほかの参加者とディスカッションをおこないました。

 ほかの参加者の意見を聞くことで、最初に見た時点では気づかなかった心遣いや油断、ドライバーの焦りの気持ち、周囲とのコミュニケーション不足といった意見が出ていました。誰もが、映像から自分の運転を振り返り、新たな気づきを発見することができたようです。

 さらに別のドライブレコーダーの映像を見ながら、「気づく運転、優しい運転」を意識します。

 たとえば、「信号機のない横断歩道を歩行者が渡ろうとしているときは必ず一時停止する」や、「信号で停車するときは後続車のことを考えて車間を詰める」など、思いやりのある運転を意識することで、より危険を予測することができるそうです。

 具体的な映像を見ることで、自分自身の運転を振り返り、欠点や癖に気づくことができます。そうした気づきがトレーニングとなり、運転することによって、脳を活性化させる効果があるそうです。

 今回開催されたシルバードライバーセミナーでは、最高齢の77歳の参加者2名を含めた13名が参加しました。

 参加者の多くは受講の動機として、「自分の運転を見直したい」ということを挙げていましたが、なかには「右左折時のウインカー出しが遅くなった」と能力の低下が心配で受講した人もいました。

 このようなセミナーに参加する人は、もともと高い安全意識を持っています。「自分の運転マナーの見直しができた」「1年から2年後にまた受講したいと思います」など、さらに意識を高めるような感想が聞かれました。

※ ※ ※

 高齢者の特性である補償的運転行動を常に意識しつつも、逆にそれを意識できなくなってきたら、免許返納の時期が訪れたということです。

 自分の運転を客観的に見て、気づくことができれば、やがて訪れる免許返納の時期も見極められるはずです。

 高齢者の運転に対してネガティブなイメージが先行していますが、自分の運転を振り返り、無理のない運転を心掛けることが大切だといえます。