クルマの販売を左右する重要な要素のひとつはデザインです。多くの人はクルマの外観を見て、好みに合うか合わないかを判断し、購入の決断をします。そのデザインがかなり理解に苦しむモデルが存在。そこで、難解なデザインのモデルを5車種ピックアップして紹介します。

常人では理解できないクルマがあった!?

 クルマを購入する際に、スペックや価格、ボディサイズ、ボディ形状などを総合的に見て、欲しい車種を決めますが、重要な要素としてデザインがあります。

 見た目が好みに合うか合わないかで、購入を決断するという人も多いのではないでしょうか。

 デザインは時代による流行があり、メーカーが異なっても近い世代のクルマは似ていることがありますが、なかにはどのクルマにも似ていない、個性的なデザインのモデルも存在。

 そこで、個性的すぎて難解なデザインの欧州車を5車種ピックアップして紹介します。

●ランチア「テージス」

 イタリアの老舗自動車メーカーのランチアは、「ストラトス」や「デルタインテグラーレ」といったスポーツモデルが日本で有名ですが、じつはコンパクトカーからセダン、スポーツカーと、さまざまなモデルを生産してきました。

 なかでもユニークなデザインだったのが、2001年に発売された大型セダンの「テージス」です。サイズ的にはメルセデス・ベンツ「Eクラス」と同等で、ランチアのなかではフラッグシップに位置していました。

 テージスの最大の特徴はフロントフェイスにあり、クラシカルな印象を目指したといいますが、どう見てもげっ歯類のようです。その反面、リアのデザインはシンプルで、前後の見た目に大きいギャップがあります。

 デザインのベースとなったコンセプトカーがありましたが、ほとんどそのままのデザインで市販化されました。

 テージスはフルモデルチェンジすることなく2009年まで生産され、日本では正規販売されませんでしたが少数が輸入されており、いまも中古車が流通しています。

 なお、現在ランチアはFCAグループの傘下ですが、車種は縮小され、消滅の危機にあるようです。

●フォード「Ka」

 フォードはアメリカのビッグ3のひとつで、長い歴史のあるメーカーです。北米以外への進出も古くからおこなっており、欧州に総合的な開発と生産の拠点を置いたのは50年以上も前になります。

 これまで、欧州フォードは北米とは異なる独自の車種を展開してきましたが、その1台が「Ka(カー)」です。

 Kaは1996年に欧州で発売された3ドアハッチバックのコンパクトカーで、内外装は曲面と曲線によって構成された、個性的かつユニークなデザインだったため、市場の評価が分かれした。

 当初、搭載されたエンジンは60馬力の1.3リッター直列4気筒OHVと、当時としてもかなり前時代的なものでしたが、後にSOHCエンジンに換装されます。

 日本にも1999年に右ハンドル仕様が正規輸入されました。国産コンパクトカーと同等のサイズで装備も充実し、価格も150万円と戦略的な価格設定でしたが、トランスミッションが5速MTのみの設定だったことが致命的で販売は低迷し、2001年には日本での販売を終了。

 後にスポーティ仕様の「スポーツKa」や、オープン2シーターの「ストリートKa」が欧州でラインナップされましたが、2008年に第2世代へとバトンタッチしました。

●フィアット「ムルティプラ」

 1956年に発売されたフィアット初代「ムルティプラ」は、同社のコンパクトカー「600」の派生車として誕生。リアエンジンのRR駆動で、約3500mmの全長ながら3列シート6人乗りを可能にした優れたパッケージのクルマで、いまのコンパクトミニバンの元祖のような存在です。

 そして、時を経て1998年に発売された2代目ムルティプラは、6人乗りのミドルサイズミニバンとしてデビュー。

 話題になったのがデザインで、フロントマスクはまるで両生類のように見え、キャビンのデザインはクルマにクルマがめり込んだようだと揶揄されます。

 ムルティプラは2列シートながら、前席に3人、後席に3人が乗車可能で、それを実現するため全長3995mmに対して全幅1870mmと極端に幅が大きくなっており、この縦横比率もバランスが悪く不評でした。

 ムルティプラのデザインはとくに欧州で酷評されたため、フィアットも無視することができず、2004年のマイナーチェンジでフロントフェイスのデザインを一新します。

 しかし、後期型はあまりにも普通すぎて、あえて前期型を好むファンも多いという皮肉な結果となりました。

 なお、日本にも2003年から正規輸入されました。5速MTのみの設定だったため販売は低迷しましたが、イタ車ファンには前期型の方が人気があるようです。

さすがフランス車と思わせる難解なクルマとは!?

●ルノー「アヴァンタイム」

 ルノーは、かつてデザインが迷走していたことがあり、その代表格が2001年に発売された「アヴァンタイム」です。

 アヴァンタイムは3ドアクーペで、全体のフォルムは未来感あふれるコンセプトカーのようでした。

 特徴的なのはドアで、長さが1.5m近くあり、狭い場所での開閉のためにヒンジをドア1枚に2か所設け、2段階に開く機構を採用しています。

 トップグレードは3リッターV型6気筒エンジンをフロントに搭載したFFで、室内はミニバンほど広くなかったようですが、ファミリーカーとして使われることを想定していました。

 アヴァンタイムは斬新なコンセプトながら巨大なドアの使い勝手が悪く、わずか2年で生産を終了。日本にも正規輸入されていましたので、いまも中古車が流通しています。

●シトロエン「C6」

 これまでもシトロエンのクルマといえば、ほかにはない個性的なものばかりでした。たとえば「DS」や「SM」といったモデルは、いまでもコアなファンが存在します。

 そして、2005年に発売された「C6」もかなり難解なデザインでした。

 大型セダンのC6は、極端に前に張り出したフロントフェイスに、シトロン伝統の「ダブルシェブロン」をあしらったグリルが特徴的な印象で、リアはフロントとは対照的にオーバーハングが短く、リアウィンドウは普通とは逆に凹面となっています。

 2006年から2010年にかけて日本にも正規輸入されており、フロントマスクの奇抜なデザインや、5m近い大柄なボディは、まるで陸を走るクジラのようだと評されましたが、やはりコアなファンが存在していました。

 C6は2016年にフルモデルチェンジして現在も中国で販売されていますが、デザインはスタイリッシュながら普通のセダンとなってしまい、かつてのシトロエンらしさは薄れてしまっています。

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 デザインには正解が無いといわれますが、クルマの場合は多くの人に好まれたデザインが、優れたデザインだと判断できるのではないでしょうか。

 実際に、あるディーラーのセールスマンに聞いたところ、もうすぐ発売される新型車の写真を見せられた瞬間に「これは売れる」と確信し、実際に大ヒットしたそうです。

 クルマでもひと目惚れがあるということで、やはりデザインは重要だということでしょう。