かつて「クーペ」と呼ばれるボディタイプのモデルは2ドアが一般的でした。しかし近年は、4ドアやSUVのクーペが登場しています。なぜ、かつての2ドアから多様化したのでしょうか。

クーペが2ドアは古い常識?

 クルマは、ボディタイプ毎に「セダン」や「ミニバン」、「SUV」などジャンルで分類され、そのなかで、「クーペ」と呼ばれるものがあります。かつてのクーペは、2ドアモデルを指す呼び方でしたが、最近では「4ドアクーペ」や「SUVクーペ」などと、さまざまなジャンルが登場。なぜ、クーペの定義が変わってきているのでしょうか。

 クーペという言葉の語源は、もともと馬車を指す言葉でした。「2人乗りの馬車」である「カロッス・クペ」というフランス語にルーツがあります。

 馬車は通常座席が向かい合っていますが、「カロッス・クペ」は、それを半分に切り詰め、対面2列4人乗りを、1列2人乗りにしたものでした。諸説はありますが、この馬車は18世紀には登場していたともされています。

「2ドア」「2人乗り」というクーペスタイルは、約300年前のヨーロッパの、馬車にまで起源を遡ることができるのです。

 しかし、近年は、2ドア以外にもクーペと称するクルマが登場しています。

 例えば、輸入高級車であるメルセデス・ベンツ「CLSクーペ」では、セダンと同じ4ドアでありながら、車名にクーペが使われています。

 同じくポルシェ「カイエンクーペ」は、5枚ドアかつSUVという本来のクーペとは似ても似つかないスタイルです。

 その理由はどこにあるのでしょうか。輸入車販売店の営業スタッフは、以下のように話しています。

「クーペのように美しいスタイルを持っているという意味で、一部の輸入車では『クーペ』という名前を使っています。

 セダンやSUVのような実用性を犠牲にすることなく、スタイリッシュな外観を保っているので、幅広いお客さまに人気があります」

 つまり、「4ドアクーペ」や「SUVクーペ」とは、自動車メーカーが自ら名乗っている名称のようです。また、別の中古車販売店のスタッフは以下のようにも話しています。

「おそらく、自動車メーカーは『実用的なクーペ』という意味で、4ドアやSUVに『クーペ』を使ってるのではないでしょうか。

 私の世代だと、クーペと言えば日産『シルビア』やマツダ『RX-7』のような、車高が低い2ドアスポーツカーでした。厳密な意味でのクーペは、どれも普通の乗用車のような、『四角い箱』ではなく、美しいシルエットをしていました。

 そうしたクルマに憧れた世代としては、『クーペのように美しいボディ』と、『セダンやSUVのような実用性』があるクーペに魅力を感じることはあります」

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 実際に、「4ドアクーペ」と呼ばれるクルマには、メルセデス・ベンツ「CLSクーペ」や、BMW「8シリースグランクーペ」など、一見すると2ドアに見える車種もあります。

 また、クーペのような低く美しいボディタイプとして「ファストバック」があります。これは、ルーフからリアバンパーに向かって、なだらかな曲線を描くクルマです。

 国産車では、マツダの「マツダ3」にファストバックモデルが設定されており、同じ5ドアスタイルである「ハッチバック」に比べると、クーペのように低く、デザイン性を重視した外観をしています。

 近年のクーペが2ドアではなく、美しいボディを持つという意味であれば、CLSクーペのような4ドアはもちろん、カイエンクーペのようなSUVでもクーペを名乗っても不思議ではありません。

 また、最近ではデザイン性を重視したクーペスタイルのSUVは少なくありません。

 国産車では、ホンダ「ヴェゼル」が、SUVとクーペのスタイルを融合したクルマとして新たなジャンルを築きました。ヴェゼル発売の三年後、2016年には、トヨタも「C-HR」を発売しています。

 海外に目を向ければ、BMW「X6」や、ランボルギーニ「ウルス」など、高級車やスーパーカーメーカーまでもが、SUVクーペをラインナップしています。

クーペに歴史あり! 1920年代にはクーペが存在していた

 辞書でクーペと調べてみると、「自動車の車種。2ドアで後部に荷物入れがある。」とあります。ですが、このようなクルマは一体いつから登場したのでしょうか。

 2ドア、2人乗りのクルマとして、もっとも古い車種としては、フォード「モデルT」の「モデルTクーペ」があります。

 同系の「モデルT」を常設展示する愛知県長久手市にあるトヨタ博物館によれば、クーペのボディタイプが設定された目的のひとつに、医者の往診のためというものがあったそうです。

 そのため「モデルTクーペ」は「ドクターズクーペ」という特別なニックネームがつけられていたともいわれています。

 1920年代は、鋼鉄製の屋根を持たないオープンカーが多く、クーペの形状はあまり一般的ではなかったとされていますが、雨などの悪天候でもキャビンが濡れないクローズドカーは次第に注目されはじめ、時代の流れと共にクーペスタイルのクルマも増えていきます。

 日本でも、1937年にはダットサン「16型クーペ」というモデルが発売されました。1967年にはトヨタ「2000GT」が、1969年には日産「フェアレディZ」も登場しています。

 海外に目を向けると、1954年にBMW「502」や、1963年にランチア「フルヴィア・クーペ」などのクーペが販売されていました。

 どのクルマも2ドアであり、メインとなるのは運転席・助手席の2名という構成は共通しています。

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 かつては、クーペは2ドアとして区別されていましたが、現代におけるクーペは、ドアの枚数ではなくスタイリッシュなシルエットや、美しい外観をしているクルマとして認知されつつあります。

 自動車メーカーもSUVクーペなどの新たなジャンルのクルマを数多く発売していますが、今後も「クーペのようなスタイル」をした、新たなジャンルのクルマが出現するのかもしれません。