かつてはオシャレなクルマとして若者にも人気があったホンダ「アコード」は、近年は上級セダンに路線変更しました。そして、2020年2月に発売されたホンダ新型「アコード」は、アメリカよりも約3年遅れて日本に投入されましたが、それはなぜなのでしょうか。

44年にもおよぶ、ホンダの初期から続く古株「アコード」

 2020年2月21日、フルモデルチェンジした新型「アコード」が、ホンダから発売開始されました。コロナ騒動のまっただ中ということもあり、その登場は、どこか“ひっそり”とした感さえあります。

 しかしアコードといえば、現在、販売されているホンダ車のなかでシビックにつぐ古株。ホンダにとっては非常に重要なクルマです。アコードとは、どのようなクルマなのでしょうか。

 アコードの初代モデルが誕生したのは1976年のこと。現存するホンダ車のラインナップで、アコードよりも古いクルマは1972年誕生の「シビック」だけですから、アコードは文句なしでホンダのなかでは古株です。

 最初のアコードはハッチバック車で、まさしくシビックの兄貴分という雰囲気でした。すぐにセダンを追加しますが、基本的な立ち位置はシビックの兄貴です。

 そして、シビックと同じように、アコードはすぐに世界に向けて販売されます。1982年からはアメリカでアコードの生産を開始。当時からホンダは「売れるところでクルマを生産する」という方針でした。

 ちょうど、オイルショック後のアメリカでは、燃費の良い小型車が求められていたこともあり、アコードなどの日本車は非常に高い人気を集めます。あまりに人気が高すぎて、日米貿易摩擦を引き起こすほどでした。

 そんななかでも、現地生産であるアコードは人気を維持し、1986年にカナダでも生産を開始するようになります。

 そして、1988年の「アコードクーペ」から、北米で生産された車両が日本に逆輸入されて販売されることになります。

 最初はクーペだけでしたが、すぐにステーションワゴン版の「アコードワゴン」も北米モデルが輸入・販売されるようになりました。

 アメリカで人気のモデルがそのまま日本でも売られているということで、1990年代のアコードの逆輸入モデルは、若い人を中心に人気を集めます。とくにステーションワゴンは、「アコードUSワゴン」の通称名で、おしゃれなクルマと認識されていました。

日本専用モデルになって上級路線へ変更した訳とは?

 ところが2000年代に入ると雰囲気が変わります。日本で販売されるアコードはすべて国産になりました。それは、北米でのステーションワゴンのニーズが小さくなり、北米でステーションワゴンを作らなくなったという理由もあります。

 また、北米向けということでアコードがサイズアップしたため、日本国内市場にもっと小さなクルマが良いだろうという意向もありました。そのため、日本向けのアコードは北米モデルとは別になったのです。

 ちなみに、北米のアコードは、日本で「インスパイア」の名称で販売されました。しかし、1990年代まで人気を集めた北米モデルも、大きくなりすぎたせいか、日本での販売は減ってゆきます。

 それまでのアコードは、アメリカン・テイストという魅力がウリでしたが、日本向けになった2000年代以降は、やや大きめの上級セダンという路線に走るようになったのです。

 今回、日本で発売開始された新型アコードは、初代から数えて10代目となります。最大の特徴は、新開発のプラットフォームを採用してできたロー&ワイドでクリーンなルックスでしょう。

 また、日本仕様には2リッターエンジンと2モーターを使った「e:HEV(イーエイチイーブイ)」搭載のハイブリッドのみとしました。

 このハイブリッドシステムは「インサイト」に搭載されたものと同様で、走行の大部分をモーター駆動でまかない、エンジンの力を直接にタイヤに伝えるのは高速走行の一部だけにするという仕組みです。モーター駆動車らしい、なめらかな加速感が最大の魅力となります。

 また、10代目となる新型アコードは、北米市場に2017年秋に先行して投入されましたが、ここでもしっかりと結果を出しています。

 2019年のアメリカでのモデル別販売ランキングを見ると、アコードは約26万8000台を売って順位は11位。ホンダ車のなかでは、5位のCR-V(約38万4000台)、9位のシビック(約32万5000台)に続く3番目に売れています。

 年間26万台も売れるというのは、すごい数字です。同じ2019年に日本で一番売れたホンダの軽自動車「N-BOX」が約25万4000台、登録車のトヨタ「プリウス」でも約12万6000台です。

日本で一番売れているN-BOXよりもアコードは北米で売れているのです。全世界を考えれば、さらに数多く売れています。まさに、ホンダを支える屋台骨のひとつといえるでしょう。

 では、日本市場でのアコードの販売はどうなのでしょうか。

 驚くのは、その販売の目標数です。月販がわずか300台で、年間では3600台と、あまりにも少ないのです。逆にいえば、それだけ日本市場で、ホンダのミドルセダンの販売力が弱いといえます。

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 いま日本で人気のホンダ車といえば、N-BOXや「フリード」「フィット」といった、小さなクルマやミニバンなど、実用度の高いモデルばかりです。

 一方、アメリカ市場では、CR-V、シビック、アコードが売れていて、「NSX」もアメリカ製です。ちなみにアセアンでのホンダは、「シティ」や「ブリオ」といった、専用の小型車が人気を集めています。

 そういう意味でアコードは、北米市場にスポットを当てて生み出されたモデルで、アメリカのユーザーの希望を形にしたセダンだといえます。

 日本への導入が遅れたのは、歩行者保護のためのバンパー形状変更や足回りのセッティングなど、日本向けに改良を加えたことも理由となっているのです。

 ホンダをはじめ各自動車メーカーは、世界各地域のニーズにあわせて多彩な商品ラインナップを用意するというのが現在の販売戦略です。

 日本では軽自動車や小型車、ミニバンが人気。一方の北米では、セダンの人気が高いことから、そのジャンルに力を入れているのです。