普段、意図的に使う機会の少ない「エンジンブレーキ」。どのような場面で使うのが有効的なのでしょうか。

そもそもエンジンブレーキの仕組みは? なぜ下り坂で有効?

 普段からクルマを運転している人でも、意図的にエンジンブレーキを使用する機会は少ないです。では、どのような場面で有効に使えるのでしょうか。

 クルマのブレーキには、俗にフットブレーキ、サイドブレーキ、エンジンブレーキというものがあります。

 フットブレーキとサイドブレーキは、回転しているタイヤを物理的に停止させるのに対し、エンジンブレーキはエンジンの回転数に負荷をかける原理で減速させる方法です。

 走行中にアクセルペダルから足を離すと、エンジンの力ではなく主にタイヤの回転力を使って進みます。その際、ピストンやタイヤによる摩擦抵抗など、クルマにかかる負荷が大きくなることで減速します。

 また、タイヤを1回転させるためのエンジンの回転数はギヤによって異なってくるため、ひとつ下のギヤへとシフトダウンをした場合には、さらに減速させることができるのです。

 エンジンブレーキを使うタイミングは道路状況によっても変わってきますが、一番有効的に使えるのが「下り坂」です。とくに長い下り坂では、多くの人がフットブレーキを常に効かせ一定の速度を保とうとします。

 しかし、フットブレーキの連続使用では「フェード現象」や「ベーパーロック現象」といった現象を起こす可能性があるのです。

 フェード現象とは、ブレーキの「摩擦熱」で起きるトラブルです。連続使用されたブレーキパッドは、加熱されるとガス膜を作る性質があり、そのガス膜がローターとパッドの間に入り込んでしまうと、摩擦力を奪うことになります。これによってブレーキの効きが悪くなり、いくらブレーキを踏み込んでも減速しないといった現象が起こります。

 2013年に、大分県の山道で大型バスが路外に落下した事故では、このフェード現象によりブレーキの効きが悪くなっていたことが原因とされています。

 また、ベーパーロック現象とは、油圧を利用したブレーキに起きる現象で、フェード現象と同じく摩擦熱が関係しています。

 ブレーキで発生した摩擦熱がブレーキフルードに伝わると、液体が沸騰し気泡が発生することがあり、気泡が混ざったブレーキフルードは油圧を十分に伝えることができないため、結果としてブレーキの効きが悪くなるのです。

 長野県のカー用品店の整備スタッフは以下のように話します。

「店舗が山道に近いこともあり、ブレーキの効きが悪くなったと来店する人や、事故時には処理を協力することがあります。

 最近では漫画の影響もあり古いスポーツカーで峠を走る人がいるため、そういった車種のトラブルは多いです」

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 では、下り坂を走行中にトラブルが起きたときは、どのように対処すれば良いのでしょうか。

 山道などの下り坂には、「緊急避難所」と呼ばれる場所があります。走行車線から枝分かれした脇道の様な見た目です。

 使用方法は、ブレーキが効かないクルマを砂利路面の上り坂に突入させ、強制的に停止させる方法で、速度が出ているクルマを突入させた場合、クルマが破損しない保証も必ず止まれる保証もありません。

 しかし、大きな事故を起こすよりは最小限の被害で抑える事ができるため、緊急時には思い切って飛び込む勇気が必要です。最善策は、日頃からエンジンブレーキを適切に使用することと、日常的にクルマを点検することでしょう。