フットブレーキを使わずに減速できるエンジンブレーキですが、信号で停止する際にも積極的に使った方が良いのでしょうか。

フットブレーキで停止が基本だが…

 クルマを運転する際、慣れている人であればATやMTに限らず、エンジンブレーキを多用して減速することがあります。基本的には、フットブレーキで減速する人が多いですが、信号などで停止する際にはどちらが良いのでしょうか。

 AT車は、通常「Dレンジ」に入れて走行します。しかし、長い下り坂などでは、「Lレンジ」や「Sレンジ」、車種によっては「オーバードライブ(O/D)ボタン」などを使うことも推奨されています。

 これら「Dレンジ」以外にシフトレバーを動かすと、足で作動するフットブレーキではなく、エンジンの力によって減速するエンジンブレーキが使えます。

 MT車でも、走行中にひとつ低いギアにシフトダウンすると、エンジンブレーキを使って減速することが可能です。

 エンジンブレーキはフットブレーキを使わずに済むことから、ブレーキパッドの消耗を抑えられるというメリットや、ブレーキの利きが悪くなる「べーパーロック」の予防にもなります。

 では、信号待ちなどの減速でも、エンジンブレーキを使った方が良いのでしょうか。

 全国でロードサービスを展開するJAFによると「減速時のエコ運転技術」として、「フューエルカット」を推奨しています。

 JAFは、「赤信号などで停止することが分かったら、自分のエンジンブレーキの聞き具合に応じて、適当な位置でアクセルから足を離し、エンジンブレーキで減速します。停止位置が近づいたら、フットブレーキでしっかり停止します」と説明しています。

 つまり、シフトダウンはせず、アクセルから足を離してエンジンブレーキを利かせ、停止線に近づいたらフットブレーキを使う方が効率は良いようです。

 JAFによれば、長い坂をクルマで下る際もエンジンブレーキを併用することが理想とされ、「MT車であれば、2速や3速といった低めのギアを使い、AT車も同様で、2レンジ、もしくは3レンジを使う」とされています。

 近年のクルマには、「2」や「3」など、数字で表示されるシフトポジションが見られなくなりました。そのため、「2レンジ」や「3レンジ」がどこのことを指しているのか、一見するとわかりません。

 例えば、トヨタ「プリウス」のシフトレバーポジションは、上から「R」「N」「D」「B」となり、「P」はボタンとなっています。

 トヨタ「ヤリス」では、「P」「R」「N」「D」「B」、日産「ノート e-POWER」では、「R」「N」「D/B」となり、やはり数字は存在しません。

 その理由は、AT車のトランスミッションがCVTであるからとされているようです。

 CVTは「無段変速機」と呼ばれるATの一種で、ギアのシフトアップ・ダウンによって変速するのではなく、プーリーと呼ばれるベルトを回す部品の外径を変化させることで変速をしています。そのため、CVTには「2速」や「3速」といった概念がなく、スムーズな加減速が可能になっています。

 そして、プリウスやヤリスなどのハイブリッドカーやコンパクトカーでは、効率やコストなどの観点からCVTが採用されています。そのため、「2レンジ」や「3レンジ」が無く、「Bレンジ」や「Sレンジ」となっているのです。

エンジンブレーキの多用は壊れる?

 必要以上にエンジンブレーキを多用する操作方法は、問題ないのでしょうか。

 自動車修理工場のスタッフは以下のように話しています。

「信号待ちのたびにエンジンブレーキを使うのは、トラブルの原因になる可能性があり、おすすめできません。

 走行中にシフトダウンをするのは、ある程度までは良いと思います。ただ、信号停止で常にシフトダウンをしていると、『ATF』というオイルの温度度が上がってしまいます。そうなると、オイルの冷却性能や潤滑性能が下がり、トランスミッションが壊れる原因にもなります。

『ブレーキパッドを減らしたくないから、エンジンブレーキを使う』という人もいるかもしれませんが、ブレーキパッドはそう簡単には減りませんので安心して欲しいです。

 私の工場では、最近、コンパクトカーのミッション不調でご入庫されたお客さまがいらっしゃいましたが、マニュアルモードでのシフトダウンを多用していたらしく、調べてみるとCVTが壊れていました。工賃と部品代を合わせた修理金額が10万円以上になったことから、廃車を選ばれました」

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 シフトダウンによるエンジンブレーキでは、フットブレーキを使わない減速ができます。しかし、不必要にエンジンブレーキを多用すると、クルマが壊れる原因にもなってしまいます。

 適切な操作を、必要に応じて使うことで、クルマの寿命や燃費は伸ばすことができます。しかし、誤った操作を頻繁におこなえば、燃費の悪化やクルマが壊れることもあるため、注意が必要です。