技術開発が進む自動運転車は、社会的課題の解決手段としても期待される一方、これまでの法律では責任の所在が不明瞭で、自動運転車の普及を阻害する要因となっていました。では、自動運転中に発生した事故の責任は誰にあるのでしょうか。

レベル3までの自動運転ではドライバーに責任がある

 自動車事故の削減に加え、交通渋滞の緩和やドライバーの不足、地方における交通弱者の移動手段など、社会的課題の解決手段としても期待される自動運転は、日進月歩で技術開発が進んでいます。

 すでに運転操作の一部が自動化されたクルマが街を行き交っており、今後はドライバーが関与しないレベルにまで普及するといわれています。しかし、万が一自動運転中に事故が発生した場合、責任は誰にあるのでしょうか。

 自動運転はレベル0からレベル5まで分類されており、内閣府が公表している「官民ITS構想・ロードマップ2019」では、レベル2までは操縦の主体を「運転者」、レベル4以上を「システム」とし、レベル3については「システム(作動継続が困難な場合は運転者)」としています。

 では、加入が義務付けられている自賠責保険では、責任の所在はどのように考えられているのでしょうか。

 2016年、政府は「自動車損害賠償保障法」に基づく損害賠償責任について「自動運転における損害賠償責任に関する研究会」を設けて検討を開始し、2018年3月に報告書を公開しています。

 この報告書では、自動運転レベル0からレベル4までの自動車が混在する当面の過渡期においては、運行供用に関わる責任は変わらないとしています。つまり、たとえレベル4の自動運転車により自動運転中だったとしても、運行供用者に賠償責任があるということです。

 自動運転システムがハッキングされるなどで引き起こされた事故については、盗難車による事故と同様に政府保障事業で対応することが適当としていますが、自動運転システムのソフトウェアやデータなどをアップデートすることや、自動運転システムの要求に応じて自動車を修理することなどが運行供用者の注意義務になるとされています。

 また、自動運転車は外部データに誤りがある場合や、通信遮断などの事態が発生した際も安全に運行できるべきとしており、こうした安全性を確保することができていないシステムは、「構造上の欠陥又は機能の障害」があると判断される可能性を示唆しています。

 一方、いわゆる「任意保険」の損害保険会社で構成される日本損害保険協会は、2016年6月に「自動運転の法的課題について」という報告書を公開。

「自動運転の法的課題について(概要)」では、自動運転の各レベルにおける事故時の損害賠償責任の考え方について、「レベル2およびレベル3については、現行法に基づく損害賠償責任の考え方が適用可能」としています。

 レベル4については「レベル4における損害賠償責任については、従来の自動車とは別のものとして捉え、自動車の安全基準、利用者の義務、免許制度、刑事責任のあり方など自動車に関する法令等を抜本的に見直したうえでの論議が必要」と、今後のさらなる議論の必要性を述べています。

 また、自動運転中の事故について、交通事故に詳しい法律関係者は以下のように話します。

「過去、自動運転中の事故が関係するトラブルをいくつか扱いましたが、今のところは基本的にドライバーの責任と考えて良いでしょう。

 その要因のひとつとして、事故の際に事実証明として有効なドライブレコーダーは、流通しているほとんどのものが、前方または後方の映像しか撮影することができないためです。たとえシステムの誤作動を主張しても、多くの場合は立証が難しく、運転手の誤操作とされます。

 しかし、自動運転のレベルが上がって運転のほぼすべてが自動化した場合や、システムの作動記録などが簡易的にわかるようになれば、状況によってはメーカー側に責任が問われることは十分考えられます。今後ポイントとなるのは、『どうやって証拠を残すか』という点でしょう」

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 実現が間近とされる自動運転ですが、普及まで自動運転レベル0のクルマが混在しつづける状況を考えると、しばらくは自動運転の状況であっても、そのクルマを運転するドライバーが責任を追うことになりそうです。

自動運転中は「ながら運転」も可能?

 保険だけではなく、法律の整備も進んでいます。

 2019年5月に可決・成立し、同年12月に施行された改正道路交通法は、いわゆる「ながら運転」の厳罰化が話題となりましたが、そのなかには自動運転に関する法案も盛り込まれています。

 まず、道路運送車両法に規定する「自動運行装置」を使用する場合も、道路交通法上の「運転」に含まれる旨が規定されました。

 これにより、緊急時には運転者が運転操作を引き継げる状況下において、速度や天候といった一定の条件ではシステムが運転操作を担う「レベル3」の自動運転が可能となります。

 また、一定の条件から外れた場合は、自動運行装置を使用した運転が禁止され、運転者が運転操作を引き継がなければならないとされています。

 あわせて、自動運行装置を適切に使用する場合には、携帯電話などを保持しての使用や、カーナビの画面注視を一律に禁止する規定が適用されないようです。

 つまり、いつでも運転を引き継げるレベル3の自動運転中であれば、スマートフォンを手に持って使用することも可能ということになります。

 さらに、自動運行装置を備えた自動車については、整備不良車両に該当するか否かを確認したり、交通事故などの原因究明をおこなうため、作動状態記録装置が必要な情報を正確に記録することができない状態での運転は禁止です。

 装置に記録された記録の保存も義務付けられており、違反した場合の点数や反則金も規定されています。

 これらの法律は2020年5月23日までに施行され、夏頃にはレベル3の自動運転車が公道を走行し始めるかも知れません。

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 自動運転の実現・普及のため、クルマの技術開発や法整備が進められていますが、クルマを使うのは感情を持つ人間です。

 法律が整備され、責任の所在が明文化されても、人間が法律を遵守しなければ安全は確保できません。自動運転が普及した未来でこそ、徹底した遵法精神が必要なのかも知れません。