東京と大阪の真ん中あたりに位置する愛知県豊橋市。人口約38万人の中規模都市だが、日本のゲートウェイ(玄関口)としてトヨタやスズキ、三菱のクルマがここから輸出されるほか、フォルクスワーゲングループやボルボ、プジョー・シトロエン、FCAグループ、メルセデス・ベンツなど世界各国からクルマが輸入されていて、日本を走る輸入車の2台に1台が豊橋に入ってくるという。なぜ豊橋は「輸入車の聖地」といわれるような街になったのか。

三河港全体の自動車輸入台数は2019年で20万3050台

 日本にはドイツメーカーだけでなく、アメリカやフランス、イタリア、スウェーデンなど、各国のメーカーがつくるモデルが数多く輸入・販売されている。

 直近でいうと、2019年度では輸入車は29万741台(出典:日本自動車輸入組合・乗用車のみ)となっている。リーマンショックの2009年には大幅に落ち込んだが、それ以降は年によって多少の増減はあるが、だいたい30万台前後で推移している。

 そんな輸入車は当然、外国から日本へ輸入されるが、日本のどこにクルマが陸揚げされるか知っているだろうか? 

 じつは輸入車の大半が集中して陸揚げされる都市がある。それが愛知県の豊橋市なのだ。

 愛知県といえば日本一の貿易港、名古屋港が知られるが、その東側の三河湾を臨む都市が豊橋市だ。

 ここにはフォルクスワーゲングループジャパンの本社もあり、日本で販売される輸入車ブランドの多くが豊橋の港を経由して、日本各地へ出荷されている。

 陸揚げされる港も、渥美半島に位置する田原市から内陸部の豊橋市と豊川市、そして蒲郡市まで及んでおり、それらの港湾エリア全体で三河港と呼ばれている。

 三河港を管轄する豊橋市の「みなと振興課」によると、2019年の三河港全体の自動車輸入台数は20万3050台とのことで、直近1年間の輸入車の販売台数と比べると、約70%もの台数がここ三河港で陸揚げされているのだ。

 では、なぜ豊橋を中心とした三河港が輸入車の一大拠点となったのだろうか?

 みなと振興課は「日本列島の中心地であり、需要が望める大阪へは200km圏内、東京には300km圏内と、比較的アクセスが良いことが挙げられます」とコメントする。

 豊橋市に本社を置くフォルクスワーゲングループジャパンも同様に「日本の中央に位置しており、全国のディーラーへの輸送に適した場所であることと、専用埠頭を確保できたことで豊橋に拠点を置きました」(フォルクスワーゲングループジャパン広報部)という。

 フォルクスワーゲングループジャパンの陸揚げ施設は1992年から本格稼働したそうで、今ではテクニカルサービスセンターや中央部品倉庫、トレーニングセンターといった施設を備えている。

 ちなみにテクニカルサービスセンターは、ディーラーに出荷される前の型式完成検査から最終検査までおこなっており、出荷前の点検と品質チェックを兼ねた検査態勢を敷いている。そして、トレーニングセンターでは全国のディーラーに勤務するメカニックが集まり、車両整備などの研修施設として利用されているという。

日本の中央に位置するという場所的な利便性の高さ

 ところで、フォルクスワーゲングループジャパンだけでなく、他の輸入車ブランドも三河港を拠点にしている。メルセデス・ベンツ日本もそうだ。

 同社は1990年から三河港も拠点にしており、当時は「候補地を選定しているなかで、日本の中央に位置し東名高速道路などへの便利なアクセスなど、物流拠点として優れた立地であり、また行政による積極的なインフラの整備もあったことで拠点に選んだ」(メルセデス・ベンツ日本広報部)と、やはりアクセスが良いことで他の輸入車ブランド同様、三河港を選んだという。

 こういった拠点は三河港だけはなく、日本にはほかにも陸揚げ港として利用されている港がある。茨城県の日立港だ。

 メルセデス・ベンツ日本は三河港だけではなく、1992年から茨城県・日立港も陸揚げ拠点として利用を開始している。

 日立港にした理由だが「販売台数が大きく伸びたことで整備能力を強化するために日立港も拠点として利用し始めたという」(同)。また、各港の近くには陸揚げされた車両を検査・整備する新車整備センターも設置している。

 今では三河港と日立港を併用しているが、「首都圏を含む東日本エリアは日立港、三河港は西日本と、区分けして利用している」(同)という。

 ほかに陸揚げ拠点として、神奈川県の横浜港や千葉県の千葉港なども挙げられるが、一大拠点としてはやはり三河港が筆頭だろう。

 輸出国がドイツだと、車両は約40日間かけて専用船に積まれて日本へ到着するという。

 VWやメルセデス・ベンツ、BMWなどのドイツブランドでも、ドイツだけに工場があるわけではなく、南アフリカやオーストリアなどにも工場があるため、世界各国からこの豊橋に向けて専用船がやって来る。たとえば2019年に生産が終了したVW「ザ・ビートル」は、遠くメキシコから太平洋を超えて来ていた。

 遠くの国からやって来て、新車整備センターで厳重なチェックを通し、ようやく手元に届いた愛車だということを考えると、喜びもひとしおではないだろうか。