マツダを象徴する技術として「ロータリーエンジン」があります。2020年4月現在、現行モデルには搭載されていないものの、マツダは開発を継続していることを明言しています。なぜマツダのロータリーエンジンはなかなか復活しないのでしょうか。

ロータリーエンジン復活は「マツダの夢」だが…

 今も昔もマツダを象徴するキーワードといえば、「ロータリーエンジン」といえます。実用化は西ドイツ(当時)のNSUが先で、でマツダは二番手でしたが、量産化をおこないビジネスとして成立させたのはマツダです。そういう意味ではロータリーエンジンの「育ての親」といってもいいでしょう。

 しかし、マツダの現行モデルにロータリーエンジン搭載車は存在しません。マツダの手によって、今後ロータリーエンジンが復活する可能性はあるのでしょうか。

 量産化が困難なロータリーエンジンについて、かつてライバルメーカーは研究・試作レベルで発表はおこなったものの、マツダを追うものはなく、結果的に唯一無二の存在となりました。

 ロータリーエンジンをザックリ説明すると、燃焼エネルギーを往復運動から回転運動に変換して動力を得るレシプロエンジンとは異なり、回転運動するローターにより動力を得る機構となります。

 レシプロエンジンに対して「シンプルな構造」、「軽量でコンパクト」、「高いレイアウト性」「回転バランスに優れる」、「高出力を引き出しやすい」などのメリットを持つ一方で、燃焼室形状の問題から不完全燃焼を起こしやすく、「実用域のトルク不足」、「燃費の悪さ」、「排ガス対応の難しさ」というような欠点もあります。

 しかし、マツダは1967年にロータリーエンジンを実用化して以降、オイルショックやバブル崩壊、燃料高騰など色々な苦悩を乗り越え、着実に進化を遂げてきました。耐久性に関しては1991年のル・マン24時間レースにおける日本車初優勝をはじめ、数々の耐久レースで実証されていますし、燃費や環境性能、ドライバビリティもデビュー直後から考えれば大きく向上しています。

 しかし、2012年の「RX-8」生産終了以降、ロータリーエンジン搭載モデルは未だに誕生していません。

 ただ、2007年には新ロータリーエンジンと呼ばれる「16X」の開発に着手し、2015年の東京モーターショーで「RX-VISION」というコンセプトカーのパワーユニットとして次世代ロータリーエンジン「スカイアクティブR」を搭載といったニュースもありました。実際にマツダの関係者は、「ロータリー復活はマツダの夢」、「我々が存在する意義、挑戦する価値があるユニット」と語っています。

 あれから5年が経ちましたが、スカイアクティブR計画はどうなったのでしょうか。当時、自動車メディアの多くはマツダ創立100周年となる2020年に何らかのアクションがあると期待していましたが、残念ながら2020年4月の時点では何もアナウンスはありません。

 ただ、その筋の関係者によるとプロジェクト自体は存在しているようです。

 では、なぜなかなか市販化に進まないのでしょうか。レシプロエンジンは世界中の自動車メーカーが研究開発をおこなっていますが、ロータリーエンジンは基本的にはマツダのみです。当然、開発スピードに限界があることやベンチマークが自分自身であること、更に社内ではライバルであるレシプロエンジンの開発もおこなわれていることなど、「孤高の存在」ならではの悩みも数多く抱えています。

 また 「CX-5」からスタートしたスカイアクティブ商品群は高い評価で販売も好調と聞きますが、経営的にいえば「どん底から脱出した…」といった状態なのも事実です。そう考えると、まずは経営基盤をシッカリと安定させることが第一であり、「マツダの夢」とはいっても、そう簡単にロータリーエンジン復活とはならないのでしょう。

次世代ロータリーエンジン「スカイアクティブR」の実力は?

 そんなスカイアクティブRですが、どのような技術が盛り込まれているのでしょうか。

 ベースとなるのは「16X(800cc×2)」でしょう。従来の13B(654cc×2)に対してトロコイド曲線の変更やローター幅の縮小などにより、燃焼室の体積に対して表面積が小さくなっており、ロータリーの問題のひとつであった冷却損失が大幅に低減されています。このような構造的な進化に加え、スカイアクティブ技術が随所に盛り込まれているようです。

 スカイアクティブ技術により生まれたガソリン/ディーゼルエンジンは「たくさん吸う」、「綺麗に燃やす」、「たくさん排出」という内燃機関の基本に立ち返って開発がおこなわれています。そんな内燃機関の究極の姿が、次世代スカイアクティブ技術のひとつとなる「スカイアクティブX」です。

 スカイアクティブXはガソリンをディーゼルのように自己着火させる究極の燃焼方式で、マツダ独自のSPCCI(火花点火制御圧縮着火)により世界で初めて実用化に成功しましたが、筆者(山本シンヤ)はこのスカイアクティブXの要素技術こそがロータリーエンジン復活の秘策だと思っています。

 つまり、ロータリーエンジンで自己着火が可能になれば、たとえ燃焼室形状が悪くても綺麗に燃焼させることが可能となり、ロータリーエンジンのデメリットは解消できるというわけです。

 その一方でマツダの電動化計画のなかでは、ピュアEVにすべてを託すのではなく、距離を求めるなら内燃機関と組み合わせてレンジエクステンダー/プラグインハイブリッド/シリーズハイブリッドと適材適所で応用する考え方「マルチソリューション」を発表済みですが、ここで組み合わされる内燃機関としてロータリーエンジンが挙げられています。

 現時点では1ローターであること以外は解りませんが、恐らく2013年に技術説明がおこなわれた「マツダREレンジエクステンダー」に搭載されていたロータリーエンジン(330cc:技術のベースは16X)の進化版でしょう。

 ロータリーエンジンが持つメリットが時を超えて電動化技術に役立つと思うと感慨深い物がありますが、個人的には夢のロータリーエンジンを実用化させたマツダが、夢の技術(圧縮着火)を用いてロータリーエンジンを復活、それを搭載するモデルはフラッグシップスポーツとなる“RX-7後継車”というストーリーを期待したいところです。