日産のスポーツカー「フェアレディZ」がフルモデルチェンジし、2021年11月までに新型モデル(Z35)が登場することが明らかになりました。しかし、手放しで喜べる状態ではないようです。それは一体どういうことなのでしょうか。

新型フェアレディZは2021年11月までに発売されることが確定

 ついにその姿を見せた、日産の次期「フェアレディZ」。登場は「2021年11月まで」に確定したことを、日産は明らかにしました。

 ところが、新型フェアレディZに関してスッキリしない点があるように感じます。それはなぜでしょうか。

 日産は日本時間2020年5月28日17時から、2019年決算と事業構造改革計画の発表をおこないました。

 決算では、売上高が前年比14.6%減の9兆8789億円。純損失が6712億円の大幅赤字公表。

 その理由について、日産の内田誠CEOは、世界的な新型コロナウイルス拡大の影響のほか、「自社固有の問題に直面している」と表現しています。

 この問題とは、ゴーン体制での経営計画「パワー88」などによる、より多くのクルマを売るための拡大路線による弊害です。

 現在、日産の生産能力はグローバルで約700万台ありますが、実際に売れているのは約500万台にとどまります。

 非効率な経営体質が、新型モデルの市場導入を遅らせた結果、例えばアメリカでは登場から年月が経ったモデルを大幅値下げで売りさばくような悪循環に陥っていました。

 こうした状況で、フェアレディZや「GT-R」などスポーツカーのフルモデルチェンジが先送りになってきたのです。

 そして今回、「日産ネクスト」と銘打ち、持続的な成長と安定的な収益を目指す、2023年までの4か年中期経営計画を発表。

 そのなかで、今後18か月(=2021年11月まで)の間にグローバルで12の新型車を投入することを明らかにしました。それが「From A to Z」です。

 会見の最後に流れた、「日産ネクスト」のメッセージ動画では、今後18か月(=2021年11月まで)に投入される12モデルのシルエットが浮かび上がりました。

 12モデルとは次の通りです。

・アリア(2020年7月、日本を皮切りに発売の新型ミッドサイズEV)
・アルマーダ(北米向け、フルサイズSUV)
・フロンティア(北米向け、ミッドサイズピックアップトラック)
・キックス(2020年6月、日本発売。世界戦略車でe-POWERはタイ生産で日本輸出)
・ノート(世界戦略Cセグメント)
・ナバラ(新興国向け主体、タイ生産のミッドサイズピックアップトラック)
・パスファインダー(北米向け、フロンティアベースのミッドサイズSUV)
・キャッシュカイ(主に欧州向け、コンパクトSUV)
・ローグ(北米向け、ミッドサイズSUV)
・テラ(新興国向け、ナバラベースのミッドサイズSUV)
・エクストレイル(日本など向け、ミッドサイズSUV、北米ローグ兄弟車)
・Z(日本ではフェアレディZ、海外では現行370Z)

 このように英語表記のモデル名をアルファベット順で並べて、アリア(A)からフェアレディZ(Z)としたのは、4か年計画のなかで早期にフルラインアップでモデル刷新をおこなうことを強調するためです。

 そのうえで、次世代日産のシンボルはアリアだと、内田CEOはいい切りましたが、フェアレディZについては具体的に触れることは一度もありませんでした。

 背景には、大きくふたつの理由があると考えられます。

 ひとつは、技術面です。日産の早期の事業再生で、技術キーワードはCセグメント(日本でのコンパクトクラス)以上の電動化と、「プロパイロット2.0」による自動運転技術を使った高度な運転支援システムです。

 これが、ルノー・日産・三菱アライアンスでの、日産の「リーダー」技術になり、ルノーと三菱は「フォロワー」になります。

 日産の発表に先立ち、5月27日のアライアンス3社共同会見で示された、3社による技術や販売地域の優先戦略が「リーダーとフォロワー」です。

 そのなかで、「技術の日産」の象徴となるのが、新開発のアリアとなります。

 フェアレディZについては、すでに海外の多数メディアが、日産関係者の証言としてV型6気筒ツインターボ搭載で、最高出力400馬力級の「400Z」説を報じています。

 そのなかで、エクステリアデザインに「レトロ」という表現がよく出てきますが、今回公開されたシルエットでは、フロント周辺の雰囲気は初代Z(S30) の雰囲気があります。

 日産次世代に向けて、原点回帰を主張するデザイン手法でしょう。

新型GT-R(R36)登場は日産の復活次第?

 日産が今回、アリア推しばかりで、フェアレディZ推しをしなかったもうひとつの理由は、大規模なリストラへの配慮ではないでしょうか。

 事業構造改革の柱として、グローバル生産能力を現在から20%削減し、年間540万台体制まで縮小します。そのなかで、スペインのバルセロナ工場とインドネシア工場の閉鎖を発表しました。

 内田CEOは記者との質疑応答で、今回の改革は「リストラがメインではない」と強調しましたが、会見後にはバルセロナ工場前で従業員がタイヤを燃やして抗議のデモンストレーションを実施。

 スペイン政府も日産撤退に遺憾の意を表すなど、2万数千人の雇用が失われることへの反発の動きが表面化しています。

 また、別の記者からは、会見中に触れられなかった日本の生産体制の見直しについて質問がありましたが、内田CEOは明言を避けました。

 このような厳しい経営判断を下した状況で、日産はユーザーに対して夢を売るスポーツカーである次期フェアレディZの存在を強調すること控えたのではないでしょうか。

 では、次期「GT-R」(R36) はどうなるのでしょうか。2007年に発売された現行R35は登場から13年目です。

 構造改革では、「選択と集中」としてグローバルで現在の69車種を55車種程度まで縮小するとしています。

 また、日産はアライアンスにおいて、C/Dセグメント、EV、そしてスポーツカーのリーダーとして集中的な投資をおこなうとしています。

 スポーツカーとして日産の発表資料に記載があったモデルが、フェアレディZ、GT-R、そして「スカイライン」の3モデル。R36誕生の可能性は、「アリ」です。

 ただし、スポーツカー各モデルの具体的な開発・発売のロードマップは示されていません。フェアレディZだけが2021年11月までのフルモデルチェンジ初期群に入ったことが分かっただけです。

 つまり、R36登場は早くとも2022年になるわけですが、今回の中期経営計画が2023年までの4か年計画であることから、構造改革が成功し、その祝福の意味で2023年登場なのか、それとも次期中期経営計画のスターティングポジションの象徴として2024年登場になるのか。

 R36の運命は、「日産ネクスト」の初動の成果に、大きく左右されることになります。