日本市場では、2019年4月に「RAV4」、2020年6月に「ハリアー」が登場したトヨタのSUVですが、北米では、2019年に「ハイランダー」というRAV4&ハリアーと同じプラットフォームを使用した3列SUVが存在します。日本で販売していないSUVながら日本の公道での乗り味とは、どのようなものなのでしょうか。

日本に無いトヨタSUV「ハイランダー」とはどんなクルマ?

 日本市場ではSUVらしさを強調したワイルド系の「RAV4」、逆にSUVらしさを排除した都会派の「ハリアー」と2トップ体制でミドルクラスSUV市場を戦うトヨタですが、ワールドワイドで見るともう1台兄弟モデルが用意されています。

 それが今回紹介する「ハイランダー」です。初代は2000年に登場、日本では「クルーガーV/L」として発売されていましたが、2代目以降は海外専売モデルとなり、現行モデルは4代目です。

 そんなハイランダーにハリアー/RAV4 PHVの公道試乗会のタイミングで試乗することができました。

 トヨタは日本で売っていない海外専用モデルをなぜ用意したのでしょうか。

 RAV4/ハイランダー/ハリアーのチーフエンジニア・佐伯禎一氏は筆者(山本シンヤ)にこう語ってくれました。

「1台のモデルに『あれもこれも』と欲張ると、結果として中途半端になる……という反省の裏返しです。10人いれば10通りの人生・価値感があります。

 すべての人に満足させようとすると、どこかに嘘をつかなければならない…。それならば性格をシッカリ分けるモデルを複数設定、『これは私のお気に入り!!』と満足いただける商品にすることが、我々のミッションだと考えたのです」

 そんなハイランダーの最大の特徴は「3列シート仕様」であることです。実はトヨタはクルーガー、そして事実上の後継モデルであるヴァンガードで3列シートSUVを国内導入していましたが販売面では苦戦を強いられました。

 その理由のひとつとして「3列があればいいでしょ?」といったユーザーのニーズと、かい離したパッケージングが挙げられます。

 佐伯氏は「3列シートを設定するならば、どの席もシッカリ使えなければ意味はありません。となるとRAV4の3列仕様ではダメで、独自のモデル(=ハイランダー)が必要でした」と語っています。

 そんなハイランダーですが、とにかく「デカい!!」の一言です。ボディサイズはRAV4の全長4600mm×全幅1855mm×全高1685mmに対し、全長4950mm×全幅1930mm×全高1730mmとひと回り大きなサイズとなっています。

 外観デザインは全体的なフォルムはRAV4に近い印象ですが、RAV4よりフォーマルでハリアーほど都会に染まっていないという、オン/オフのバランスが絶妙なデザインに仕上がっています。

 内装も同様の印象で、インパネ周りはRAV4と同じ操作レイアウトながらもモニターと空調操作系が一体化された独自のデザインです。

 全幅が広いのでセンターコンソール部の幅は大きめで、運転席/助手席は独立した空間になっています。2列目は今回試乗したモデルは左右独立のキャプテンシートを採用。

 RAV4よりも長いホイールベース(RAV4:2650mm、ハイランダー:2850mm)を活かした足元スペースや、RAV4よりも余裕ある頭上スペース、そして開放感ある空間設計も相まって、下手なプレミアムセダンやミニバン顔負けの居住性が備わっています。

 3列目は体育座りになってしまうものの、160cmくらいの人であれば頭上はもちろん、2列目スライドを最後端にしなければ足元も十分なスペースが確保されています。ちなみに3列目を収納すればステーションワゴン顔負けのラゲッジスペースも確保。

 メカニズムはRAV4/ハリアーと若干異なります。パワートレインは2.5リッター直列4気筒+モーターのハイブリッドに加えて、295馬力/357Nmを発揮する3.5リッターV型6気筒+8速ATの組み合わせのふたつを設定しています。

 プラットフォームはRAV4やハリアーと同じ「GA-K」ですが、重量増に対応するために強化された物(GA-Kラージ!?)が採用されています。

 サスペンションはフロント:ストラット、リア/ダブルウィッシュボーンですが、セットアップはハイランダー独自です。タイヤは今回の試乗車には235/55R20サイズのBSアレンザ(オールシーズン)を履いていました。

RAV4やハリアーとも違う「ハイランダー」の味とは

 その走りはどうだったのでしょうか。一言でいうと、RAV4は「軽快でキビキビ」、ハリアーは「重厚でシットリ」なのに対し、ハイランダーは「穏やかで優しい」でした。

 具体的には、基本的な部分は意のままの走りを誰でも気負いなく体感できるといった基本性能に関してはRAV4/ハリアーと共通です。

 しかし、ステアフィール、ギャップの吸収の仕方、旋回時のクルマの動きなどに、いい意味で薄皮一枚挟まっているような心地よいダルさと重量級ならではドッシリした印象を受けました。

 ただ、誤解してほしくないのは大陸系モデルによくある“大味”な走りではなく、正確なハンドリングのなかで穏やかで優しい「味」に仕上げられている点です。

 そういう意味では、RAV4とハリアーの真ん中、つまり「SUVの王道」といえる味付けだと感じました。クルマのサイズやキャラクターなどを踏まえると高速道路をゆったり走るのが最も得意だと思いますが、RAV4/ハリアーと同じくサーキット/ワインディングでもクルマなりに気持ちよく走れる素性は持っているはずです。

 加えて、実際に運転していると視界の良さや前後左右の見切りの良さなどから、大柄なボディサイズを感じさせない取り回しの良さに驚きますが、さすがに駐車場や細い路地でのすれ違いなどでは細心の注意が必要です。

 この走りに3.5リッターV型6気筒が実にいい仕事をしてくれています。トヨタの2GRシリーズの最新作「2GR-FKS」は、2トン越えの車両重量を感じさせない力強さと過給機やモーター付とは違う素直な特性、心地よいサウンド(静粛性が高いので遠くから聞こえるイメージ)など、「やっぱりV6の自然吸気はいいよね」と感じさせてくれます。

 燃費はストップ&ゴーの多い一般道はさすがに厳しい値でしたが、速度変動が少ない高速道路ではボディサイズや車両重量を考えると優秀だと思いました。

 個人的には日本市場でも「3兄弟ラインアップされてもいいのでは?」と思う所はあるものの、現実を見るとこのボディサイズは日本の道では持て余すのも事実です。

 そのため、そのまま右ハンドル化させて導入をというのは厳しいでしょう。ただ、仮に全幅を抑えたナローボディ仕様を開発できれば“アリ”だと思います。その際には「クルーガー」もしくは「ヴァンガード」の名で復活してくれることを期待したいです。