クルマは性能や実用性も大切ですが、エクステリアデザインも重要なポイントです。そこで今回は、美しさや独創性にあふれたスタイリングで話題となった個性派モデルを、5台ピックアップして紹介します。

バブル期前後は自由な発想の名車が登場

 クルマを選ぶときに重視することとして、燃費やラゲッジルームの広さ、インテリアなど、基準はさまざまありますが、最終的には見た目で選ばれることが多いようです。

 そこで今回は、過去の名車たちからスタイリングの独創性や美しさで人気となったモデルを5台ピックアップして紹介します。

●日産「シルビア」(5代目・S13型)

 1988年に登場した日産5代目「シルビア(S13型)」は、非常に人気の高い名車です。以前ほどは街で見かけなくなりましたが、現在でもカスタムベースとして相変わらず高い人気を誇っています。

 当時はバブル期の真っ只中で、「デートカー」や「スペシャリティカー」と呼ばれるスタイリッシュな2ドアクーペに人気が集まっていました。

 近未来的なデザインのシルビアは、全長4470mm×全幅1690mm×全高1290mmの5ナンバーサイズで、低い車高が特徴です。

 余計な出っ張りの少ないロー&ワイドなデザインへの評価は高く、昭和63年度グッドデザイン大賞にも輝いています。

 また、デートカーとして人気だったホンダ「プレリュード」とは異なり、シルビアは初代からFRを採用。当時熱狂的な盛り上がりを見せはじめていたチューニングのベース車両としての人気も獲得していくことになります。

 改めて見てみると、5ナンバーサイズのコンパクトさがありつつ、いまでも十分通用する美しいフォルムなのがよく分かります。

●ホンダ「プレリュード」(2代目)

 現在では安全基準の観点から採用されていませんが、かつては「リトラクタブルヘッドライト」と呼ばれる形状のヘッドライトが流行りました。

 1980年代は先進性を感じさせるアイテムとして多くの車種が採用していましたが、もっともリトラクタブルヘッドライトが似合うオシャレなクルマがホンダ「プレリュード」(2代目)です。

 初代は1978年にノッチバッククーペとして誕生しましたが、国内では注目される存在ではありませんでした。

 その状況が一変したのは1982年にフルモデルチェンジして2代目になってからです。リトラクタブルヘッドライトを採用した2代目は、全長4295mm×全幅1690mm×全高1295mmというサイズでしたが、伸びやかでクリーンなデザインで人気を集めます。

 そのスタイリッシュさが女性にも大人気となり、「ドライブデートで乗りたいクルマNo.1」といわれるまでになり、デートカーの代表格として君臨していました。

●トヨタ「エスティマ」(初代)

 いまで人気ジャンルのミニバンですが、1980年代までは商用バンのイメージが強く、1BOXカーと呼ばれて一部のファミリー向けと捉えられていました。

 しかし、1990年に誕生したトヨタ初代「エスティマ」は、近未来的なフォルムと全長4750mm×全幅1800mm×全高1780mmという堂々としたサイズが話題を集め、「格好いいミニバン」という新定義を生み出しました。

 当時のトヨタには「ライトエース」や「タウンエース」「ハイエース」といった1BOXカーのラインナップは完成していましたが、北米で安全基準が強化されたことを受け、新たな多人数乗車モデルの開発がスタート。

 エスティマの独創的なデザインは、米・カルフォルニアにあるトヨタのデザインスタジオ「CALTY」によるもので、商用車をベースとしない、完全に独立した新設計のモデルとして開発されました。

 とくに、全幅1800mmもある幅広く丸みを帯びたデザインは、「天才タマゴ」なるキャッチフレーズが用いられて大ヒット。

 1992年には全幅を5ナンバーサイズに縮小した「エスティマ エミーナ/ルシーダ」という派生車が登場したことで、一気にミニバンのトップモデルへと成長したのでした。

 このデザインにこだわった結果、ミニバンなのにミッドシップという世界的にも珍しいレイアウトとなり、現在でもその独創性が際立っています。

スポーツクーペは独創的なデザインで個性を主張

●フィアット「クーペフィアット」

 1度見たら忘れられないフォルムを持つクルマとして有名なモデルがあります。それは1993年に誕生したフィアット「クーペフィアット」です。

 ボディサイズは全長4250mm×全幅1766mm×全高1340mmで、2リッター自然吸気エンジンと同ターボエンジンを搭載。

 4座席を持つFFクーペと、スペックだけでは飛び抜けたものがあるわけではありませんが、このクーペフィアットに乗る理由はただひとつ、個性的なデザインです。

 ふくよかなボリュームを持たせつつ、ワニのようなフロントマスクや、ホイールアーチ上部の跳ね上がったキャラクターライン、ナイフで切り落としたかのようなリアエンドなど、どこを見ても斬新なデザインで大胆さに満ちています。

 心臓部は223馬力まで引き上げられた2リッターターボエンジンを搭載し、速さも折り紙つきでした。

 しかし、その独創的なフォルムの代償は大きく、整備性は非常に悪いともいわれていました。

●アウディ「TT」(初代)

 最近では国産メーカーも大胆なデザインを採用するケースも増えましたが、輸入車はエモーショナルで独創的なデザインの車種が多い印象があります。

 とくにスポーツカーやクーペは、美しいスタイリングが肝といっても過言ではありません。

 かつてのスポーツカーといえばフロントノーズはシャープで、ボディ後半分に厚みを持たせた「くさび」のようなフォルムの「ウェッジシェイプ」が主流でしたが、そんな常識を打ち破ったのが1998年に誕生したアウディ「TT」です。

 プラットフォームは当時の「A3」と共有しながらも、まるで半円を3つ重ねたかのような曲線でまとめられたボディは、いま見ても近未来的なデザインです。

 またインテリアにも、この円をいくつも重ねたようなデザインが採用されています。

 ボディサイズは全長4041mm×全幅1764mm×全高1346mmで、1.8リッターターボエンジンを搭載。FFと4WD(クワトロ)が選べました。

 しかし、独創的なフォルムゆえ、時速180km以上の超高速域で車体にかかる上向きの力(リフト)が大きくなることが判明。

 それが原因で車両が横転する事故が起きたことから、アウディは急遽リアスポイラーの追加やサスペンションの設定変更、横滑り防止装置「ESP」を採用するという対策が取られます。

 また、すでに販売した車両に対しても、無償でリアスポイラーが提供されました。

 さらに、この特徴的なフォルムは実用面では不利でした。シートは2+2の4座ですが後部座席は大人が座れるような頭上空間はなく、あくまで2シーター+補助2席と割り切るなど、スタイリングを重視したスポーツクーペでした。

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 好き嫌いはあるものの、やはり個性的なクルマは後世に語り継がれるような魅力があるものです。

 現在販売されているモデルのいずれかが、将来デザインについて語られる存在になるのか、興味深いところです。