スズキ「ソリオ」が開拓した小型ミニバンというジャンルですが、いまではトヨタ「ルーミー/タンク」が人気を博しています。ソリオのフルモデルチェンジが噂されているなか、後発のライバルとどう戦うのでしょうか。

マイチェンでタンクが消滅! ルーミーへ一本化

 トヨタのコンパクトカー「ルーミー」(ダイハツ「トール」のOEMモデル)がマイナーチェンジを受けました。

 エクステリアデザインをリフレッシュしたほか、先進安全運転支援システムをバージョンアップ。

 衝突被害軽減ブレーキは二輪車や夜間の歩行者も検知できるようになり、全車速追従機能つきのACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)も新たに組み込まれました。

 興味深いのが、兄弟車だったトヨタ「タンク」がルーミーに統合されたこと。その背景にあるのは、これまで販売店によって取り扱い車種が分かれていた系列扱いを終了し、トヨタの全車種を全ディーラーで販売することとなった販売店サイドの事情です。

 これまで、ルーミーはトヨタ店とカローラ店、タンクはトヨペット店とネッツ店で販売されていましたが、2020年5月より全店舗での販売へ移行(東京地区は2019年4月から実施)。

 そして2020年9月15日のマイナーチェンジでタンクが廃止され、ルーミーに一本化されました。

 これにより、従来はルーミーとタンクで別々に集計されていた日本自動車販売公開連合会が公開している車名別の販売実績は、2台分が合計でカウントされることになります。

 2019年の年間販売台数は、ルーミーが9万1650台、タンクが7万4518台でした。この2台を1台のクルマとして合計すれば、なんと2019年に16万6168台の実績を誇る超人気車になるわけです。

 そしてこの台数は、単一ボディとしてもっともも多い販売台数(軽自動車を除く)となるのですから、小さいボディながらその存在は日本の自動車マーケットにとって偉大といえるでしょう。

 ルーミーとタンクが評価されている理由は、その使い勝手の良さに尽きます。

 3700mmと短い全長ながら、背を高くすることで広い室内空間を確保。なかでも後席の足元には車体の大きなミニバンのような圧倒的な広さが備わり、高い居住性を実現しているのです。

 また、後席にはスライドドアを組み合わせることで、狭い場所での乗り降りをサポート。ミニバンのような感覚のコンパクトカーであり、軽自動車で人気ジャンルとなっている「スーパーハイトワゴン」の使いやすさを反映しつつ、ひとまわり大きくしたパッケージングなのです。

 しかしじつは、このジャンルを開拓したのはルーミーやタンクではありません。スズキ「ソリオ」です。

 ソリオのルーツは1997年にデビューした「ワゴンRワイド」です。軽自動車の「ワゴンR」をベースに全幅を広げ(側面パネルやヘッドライトなどは同じものを採用)、ひとまわり大きな1リッターエンジンを搭載した軽自動車の兄貴分としてスタートしました。

 ワゴンRワイドは1世代のみ、しかも販売期間2年ほどで終了しましたが、実質的な後継車として入れ替わりで誕生したのが1999年に販売を始めた「ワゴンR+(プラス)」です。

 2000年12月の一部改良で「ワゴンRソリオ」へ、そして2005年には「ソリオ」として再び車名変更。このモデルが初代ソリオとなります。

安定して売れ続けるソリオのフルモデルチェンジは年末か?

 大きな変化が起きたのは、ソリオとして初のフルモデルチェンジを受けた2010年です。

 デザイン面で完全にワゴンRとは独立したモデルになったのに加え、背を高くするとともにスライドドアを組み込んだのです。実用性が飛躍的に高まったことを受けて、販売台数も増えました。

 2015年にはフルモデルチェンジを受けて3代目となっています。これが現行モデルです。

 そんなソリオは、後発ライバルのルーミーやタンクに販売台数でリードされているので、後塵を拝する状況になっていると思われがちですが、販売データを見ると興味深いことがわかります。

 年間を通じて新型モデルを販売した2016年の年間販売台数は、前年比26.8%増の4万8814台でした。

 翌2017年はルーミーとタンクが本格販売に入りましたが、ソリオは4万9742台と前年以上に販売(ルーミー+タンクはあわせて14万9529台)。

 その後2018年は4万4884台(同16万64台)、2019年は4万4488台(同16万6168台)と大きな波がなく安定して売れ続けているのです。

 つまり、ルーミーやタンクが大ヒットしても、それを受けてソリオの販売台数が減っているとはいえない状況なのです。

 ルーミーやタンクの存在がソリオの販売台数を奪ったとは考えにくく、むしろライバルが登場したことで市場が活性化したといっていいでしょう。

 ところでソリオは、2020年末にフルモデルチェンジを受けるのではないかと噂されています。

 スズキは毎年末に新型車を発表し、年明けに「初売り」として大々的に売り出すのが恒例で、サイクルを考えると間もなくソリオの順番だからです。

 新型はパッケージングや実用性に磨きをかけるほか、先進安全装備もより高度化するのは間違いないでしょう。

 ソリオが開拓した市場へ参入してきたルーミーに対しては、さすがに倍返しは厳しいかもしれません(そもそも販売台数の推移からみてダメージは受けていないと思われますが)。

 しかしソリオは、長期間にわたって一定数売れ続ける「安心できるクルマ」であり続けることは間違いなさそうです。