オフロードを走破することはなくても、雪道やちょっとした未舗装路を安心して走れたらと考える人のために作り出されたのが、クロスオーバーSUVというクルマ。現在、世界中で高い人気を誇っています。そこで、初期の国産クロスオーバーSUVを5車種ピックアップして紹介します。

いま人気のクロスオーバーSUVは昔はどんなクルマだった?

 本格的なクロスカントリー4WD車のように、岩場や砂漠を走ることはないけれど、雪道などで一般的な乗用車よりも安心して走れたらと考える人のために作り出されたのが、クロスオーバーSUVです。

 一般的にクロスオーバーSUVは、乗用車のプラットフォームに4輪駆動のドライブトレインを搭載し、最低地上高を引き上げて、走破性を高めるというものです。

 ベースとなる乗用車は、キャビンの静粛性よりも荷室の容量や使い勝手を重視した方が便利なので、多くの場合、セダンよりステーションワゴン等が選ばれます。

 さらに、無塗装のバンパーや、グレーに塗装された樹脂パーツを外装に使うことで、SUVらしさを表現。

 現在、世界中で人気が高いSUVですが、主流はクロスオーバータイプです。そこで、登場初期の国産クロスオーバーSUVを5車種ピックアップして紹介します。

●トヨタ「スプリンターカリブ」

 ステーションワゴンとクロスカントリー車をクロスオーバーさせるというアイディアの先駆けとなったのは、トヨタの「スプリンターカリブ」です。

 1981年の東京モーターショーにコンセプトカーとして出展され、翌1982年に市販化されたこのクルマは、「スプリンター」の派生モデルのように思われますが、じつはその下に位置する「ターセル」のプラットフォームがベース。

 初代スプリンターカリブはパートタイム式4WDを搭載し、5速MT車では通常の1速よりギア比が低いエクストラローが装備されているなど、クロスカントリー車に寄っていたことがわかります。

 1988年に登場した2代目は晴れてベースがスプリンターとなり、4WDシステムも扱いやすいフルタイム式が採用されました。

 搭載されたエンジンは1.6リッター直列4気筒で、最上級モデルには走行中に油圧で地上高を30mmリフトアップできる「ワンタッチハイトコントロール」も搭載。

 中身もスタイルも洗練されたおかげで、都市部に住むアウトドア好きなオーナーからも支持を得ます。

 1995年に登場した3代目では、1.8リッターエンジンも設定され、2WDの追加や6速MTを搭載する高性能モデルもありました。

 その後、ステーションワゴン人気の低迷から、2002年に生産を終了。同時にスプリンターの歴史も幕を閉じました。

●三菱「RVR」

 三菱が1991年に発売した初代「RVR」は、当時ブームだったRVとトールワゴンをクロスオーバーさせたクルマでした。

 3列シートを備えるミニバン「シャリオ」のシャシを短縮するかたちで開発され、高めのルーフと片側のみのスライドドアを備え、さらに後部座席には一般的な3人掛けに加えて大きくスライド可能な2人掛けも設定することで、広い室内と使い勝手の良さが好評となりました。

 発売当初のエンジンは2リッターおよび1.8リッター直列4気筒という余裕ある排気量に、ビスカスカップリング式フルタイム4WDと2WDを設定。

 1992年にはフロントガードやアンダーガードを装備し、バックドアにスペアタイヤを背負った「スポーツギア」が追加され、RV色が一気に高まります。

 さらに、前席上のルーフが後方に電動スライドして開閉する「オープンギア」を1993年に追加し、「ランサーエボリューション」譲りの2リッターターボエンジンに、オーバーフェンダー、エアロパーツまで装備したモデルも登場。

 1997年にフルモデルチェンジして2代目となったRVRは、トールワゴンとしての実用性を重視した「RVR」と、オフロードを意識したRV風イメージを継承する「RVRスポーツギア」の2系統に分かれ、2002年に生産を終了。

 その後、空白期間があり2010年に3代目が登場し、幾度もマイナーチェンジやフェイスリフトを重ねながら現在も販売中です。

●ホンダ「CR-V」

 1980年代の終わりから1990年代前半に起こったRVブームでしたが、多くの人にとってやはり本格的なオフロード4WD車は大きすぎ、またその実力を発揮できる機会もそれほど多くありませんでした。

 そこで、1995年に発売されたホンダ「CR-V」は、全高の高い角形ボディで、背面にスペアタイヤを装備するという伝統的なオフロード4WD車のフォルムながら、都会的でスタイリッシュに仕上げたデザインは新しいジャンルのRVとして人気を博しました。

「シビック」のプラットフォームをベースにしたモノコック構造のボディは、オンロードにおける快適性も高く、従来のクロカン車より軽量な車重と2リッター直列4気筒エンジンの組み合わせによって、一般的な乗用車から乗り換えても不満を感じない動力性能を備えていました。

 一方で、205mmも確保された最低地上高は、未舗装路や雪道での高い走破性を発揮。

 室内はコラム式ATシフトレバーを採用することで前後左右のウォークスルーを可能としました。

 発売当初は全車4速ATスタンバイ式4WDの組み合わせでしたが、後に5速MTや2WD車も追加され、さまざまなニーズに対応しています。

 その後代を重ね現行モデルは5代目にあたり、国内での販売は苦戦していますが主戦場のアメリカや中国、インドネシアなど複数の国で生産がおこなわれており、世界でもっとも売れているホンダ車となっています。

新ジャンルを開拓したステーションワゴンとは!?

●スバル「レガシィ グランドワゴン」

 1990年代になると、アメリカでは都市部でもライトトラックをベースにしたSUVの人気が高まりますが、当時のスバルにはベース車がありませんでした。

 そこでスバルは1994年に、既存の「レガシィ」をベースに内外装にアウトドア向け装備を与えた初代「アウトバック」が誕生し、セダンとステーションワゴンをラインナップ。

 日本では翌1995年に、「レガシィ ツーリングワゴン」をベースにした「レガシィ グランドワゴン」の名で発売されました。

 日本で発売されたレガシィ グランドワゴンは、翌年の1996モデルイヤーとして車高が引き上げられるなどの改良が施されたアウトバックと基本的に共通で、前出のスプリンターカリブよりもSUVらしいモデルです。

 エンジンは自然吸気の2.5リッター水平対向4気筒エンジンのみの設定(北米仕様は2.2リッターもあり)、トランスミッションは5速MTと4速ATを設定し、駆動方式はフルタイム4WDを採用。

 アウトバックはアメリカで大ヒットし、スバルのブランドイメージを確立する立役者といえ、日本でも新ジャンルのステーションワゴンとしてヒットします。

 その後もモデルチェンジを重ね、車名を「レガシィ ランカスター」→「レガシィ アウトバック」となり、国内向けの現行モデルは5代目で、北米では2019年に6代目が登場しています。

 既存モデルのバリエーションとしてクロスオーバーSUVを作り上げたスバルの手法は、後にアウディの「オールロード クアトロ」シリーズや、ボルボの「クロスカントリー」シリーズの登場に大きな影響を与えました。

●ホンダ「Z」

 ホンダはCR-Vの大ヒットを受け、さらなるラインナップ拡大をおこない、コンパクトSUVの「HR-V」を1998年に発売。

 さらに、1998年10月に導入された軽自動車の新規格に合わせて開発されたホンダ「Z」が登場します。

 自然吸気またはターボの660cc直列3気筒エンジンを後部座席の下に横倒しで縦置に設置するユニークなレイアウトを採用し、4速ATのトランスミッションとビスカスカップリング式センターデフを組み合わせた4WDが採用されました。

 この駆動系のレイアウトは、ホンダの軽トラック「アクティ」をベースにしたものですが、荷台の広さが重視される軽トラック設計の利点をそのまま乗用車に生かし、Zでは広い室内空間を実現。

 また、駆動用の機械類がすべてホイールベース内に収まるため、大径の15インチタイヤをボディの四隅ぎりぎりに配置することができ、さらに195mmもの最低地上高を確保することで、悪路走破性も高められました。

 しかし、3ドアのボディでは広い室内にも関わらず乗降性に不便な印象は避けられず、凝った設計によって車重も960kgから970kgと、同時期に販売されていた軽乗用車「ライフ」の4WDより100kgほど重いなどが重なり、販売は低迷。

 その後、モデルチェンジも後継モデルもなく、2002年に生産終了。4ドアで設計していれば、いまも後継車が生き残っていたかもしれません。

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 本文中で出てくる「RVブーム」の頃は、現在のSUVとは比べ物にならないほどクロスカントリー4WD車が売れていました。

 1990年代の初頭はスキーブームもあり、スキー場の駐車場ではクロカン車が数多く見られたほどです。

 しかし、クロカン車は文字どおり悪路走行に特化して開発されたモデルですから、乗り心地や燃費が悪く、うるさい、高速走行に向いていないなど我慢が強いられました。

 そのため、乗り換える人も多く、ブームは沈静化します。2019年8月にRVブームをけん引した三菱「パジェロ」が国内販売を終えましたが、まさにひとつの時代が終わった証ではないでしょうか。