スーパーカーの代名詞であるフェラーリのエンブレム「キャバリーノランパンテ(跳ね馬)」に憧れる人は多いだろう。そこで、正式なキャバリーノランパンテを一発で見極めるための方法を伝授しよう。

1980年代まで、巷にはいろんな「跳ね馬」が氾濫していた

 モデナの皮革製造業のスケドーニ社は、1977年にフェラーリ「308」のトランクにぴったり入る旅行バックセットを製造したことを皮切りに、フェラーリとのコラボレーションが始まった。その絆は40年以上経つ今も続いている。

 1980年代に知り合ったスケドーニには、その後もモデナに出かけるたびに顔を出している。ある日、いつものようにスケドーニの工場内を見学していた時、ふと目にしたイラストがきっかけで、興味深いストーリーに巡り合うことが出来た。

 作業場に一枚の、少し年季の入ったフェラーリの跳ね馬のイラストが貼ってあった。しかも何やら角度や矢印が提示してある。

 なんだろう? 現社長のシモーネ・スケドーニに「これは一体なに?」と質問したところ、「登録商標されているフェラーリの跳ね馬のオフィシャルのイラストだよ。くわしい話は、当時の社長だった父マウロに話を聞くといいよ、彼はストーリーの背景をぜんぶ知っているから。いま、ちょうど会社に顔を出したところだよ」と、シモーネに教えてもらった。そこでさっそく、マウロの作業場へ向かった。

 マウロは会社を息子に譲って悠々自適の生活をしているところだが、今でも会社にちょくちょく顔を出して、なんやかやと手を動かしている根っからの職人だ。

「今、何を作っているの?」と聞くと、微笑みながら「はっはっは、先週モンツァで表彰台に上がったチームのちょっとした部品を作っているんだ。物つくりは楽しいよ」とのこと。さすがマウロ、引退してもF1チームから声がかかるなんて素晴らしい!

 今やスケドーニ家は、世界中の高級自動車メーカーと仕事をし、自動車関連の重鎮達とも個人的に関係を持っている。

 しかし、にも関わらず、いつまで経っても家族経営の親しみやすい姿勢は変わらない。どんなに世界の舞台で活躍しても地に足をつけ、「モデナの職人精神」をしっかり守っている。そうした彼らの生き方に共感して、モデナに訪れる際には、時間が許す限りスケドーニに足を運んでいる。

フェラーリが認める正式な「跳ね馬」のデザインはこれだ!

 さて、マウロからフェラーリの「キャバリーノランパンテ(跳ね馬)」について、当時の興味深い話を聞くことができた。

「1980年代、フェラーリのロゴを付けたグッズが世の中に溢れていたんだ。

 今は『ブランド』というものの価値が定着して、『ブランディング』という価値観がしっかりと企業に根付いている。しかし当時は、どこのブランドも結構適当だったんだ。

 フェラーリでいえば、実は跳ね馬でさえあれば良かった。でもよく見ると、いろんな跳ね馬があってね、向いている方向はみな左で同じなんだけど、ちょっと上向いていたり、太っていたり、足の高さが違っていたり、全体的な角度が違っていたり……と、デザインが統一されていない色んな形の跳ね馬がフェラーリのエンブレムとして世の中に出回っていたんだ。

 たぶん、この状況を見かね、ある時フェラーリ社から業者に向けて、商標登録された跳ね馬のイラストが送られて来たんだ。

 フェラーリのエンジニアが描いたらしいけど、角度が表示されているんだけど、どうもわれわれ職人には分かりにくい。もっと分かりやすくするにはことはできないものか……。

 そこでね、私は、送られてきたイラスト画(32度と58度)を描き直し、跳ね馬の中心に垂直線(矢印)を引いたんだ。それがこのイラストさ。跳ね馬の後ろの左足のつま先から垂直線を引くと右の耳の先にあたる。(矢印をなぞりながら)こうすると一目瞭然、とても分かりやすいだろう」

 確かに、たった1本の補助線を引くだけで、こんなに跳ね馬が凛となるとは。

「我々スケドーニ社は、旅行バッグには必ずフェラーリのマークを入れなければならない。そこで私は試行錯誤しながら自分なりに型押しの機械を作ったんだ。

 当時はフェラーリの職人も型押しに慣れていなくて、『どのように皮革にフェラーリのロゴを正確に入れられるのか』と、フェラーリ本社にレクチャーしに行ったものだよ」と懐かしそうに話してくれるマウロ。

「そのうちレクチャーに疲れてしまって、自家製の型押し機械をフェラーリに譲ったよ、これさえあればフェラーリのロゴを正確に反映することができるからな」

 1990年代に入ると、モンテゼモーロ体制になり、ブランディング部門が強化され、マーチャンダイジング商品が正式に発表されるようになった。

 それと同時に、マラネッロにオープンした「フェラーリストア」も次々に世界中で展開されるようになった。世界各地のハブ空港でフェラーリストアを見かけた人もおおいだろう。

 そしてこの現象に続けとばかりに、他の自動車メーカーも自社のブランディングに力を入れるようになったというわけだ。

 皆さんもこれを機に、手元にあるフェラーリの跳ね馬をよく見て、右の耳と後部左足のつま先に線を引いてみてはいかがだろう。1980年代以前は、いろいろな跳ね馬に出会うことになり、それはそれで面白いかもしれません。