2020年8月27日に発表され、同年10月30日に発売するホンダの電気自動車「ホンダe」。見た目はキュートで小柄なデザインですが、いざ街中に繰り出すと5つの魅力が体感出来たといいます。ホンダeにはどのような魅力があるのでしょうか。

ホンダeがもたらす5つの魅力とは

 ホンダ初の量産電気自動車となる「ホンダe」。ついに公道で試乗することができたので、その印象をお届けしましょう。

 ホンダeはエンジンではなくモーターで駆動力を生み出して走る電気自動車だから、静かでスムーズなのはいうまでもありません。
 
 そのうえで、今回は“ホンダeらしさはどこにあるのか?”を念頭に置いて試乗。すると、5つの個性や特徴、新しさを感じることができました。

 まず運転し始めてすぐ気が付いた新感覚は、ドアミラーが視界に入らないことによる周囲の見やすさです。

 ホンダeには一般的なドアミラーがなく、代わりにカメラで後方を撮影してインパネ端のモニターに映すカメラ式のドアミラーを採用しています。

 しかも、カメラは従来のドアミラーよりも低い場所に配置。張り出しが小さいのも特徴で前後フェンダーの端よりも内側にあります。

 そのため運転席からの視界にドアミラーが入らず、メリットとしてAピラー後方の斜め前方視界がクリアなので、右折時などに歩行者がドアミラーの死角に入らず安全確認もしやすくなります。このクリアな斜め前方視界は、これまでの常識を変えるものでした。

 ふたつめは、交差点でスッと曲がる爽快感。ホンダeはモーターを車両後部に積んだ後輪駆動なので相対的に車体前部が軽く、前後重量配分は理想といわれる50:50を実現しています。

 そんな前後重量配分が生み出すのは、軽快なハンドリングです。とくに曲がり始めるとき、ドライバーのハンドル操作に応じてスッと素直に向きを変える感覚はまるでスポーツカーのようです。

 それは何も峠道を飛ばすようなことをしなくても、交差点を普通に曲がるだけで「この瞬間が気持ちいいね」と感じられました。

 ホンダeは街乗りを主体に考えられたクルマですが、街中をゆっくり走るだけでも爽快感を感じられるのは魅力のひとつです。

 開発者にそんな印象を伝えたところ「街を走っていても動きの質感や運転の楽しさが際立つクルマとなるように仕上げた」と教えてくれました。

 いっぽうで、高速道路へ合流する手前のランプウェイなどでは、アクセルを踏み込みながら曲がる気持ちよさが際立っていました。これが3つめのポイントです。

 ホンダeは、前述のように後輪駆動を採用しています。回生効率を考えると電気自動車は前輪駆動(もしくは4WD)のほうが理にかなっています(後輪駆動は滑りやすい路面で減速時の挙動が乱れるのを抑えるために回生ブレーキを強められない)が、ホンダeは太いタイヤを履いてもしっかりとタイヤ切れ角を確保することとに加え、走りの楽しさを重視して後輪駆動を選択。

 そして後輪駆動はアクセルを踏み込んだ際でもステアリングフィールに悪影響を与えないのが美点とされていますが、運転しているとそんな後輪駆動らしさをしっかりと感じられます。

 旋回を終えながら直進に戻りつつあるタイミングでグッとアクセルを踏み込んだときの横Gを残しながら加速する心地いい挙動は、ホンダeが単なるエコカーではないことを主張しているかのようです。

ただのエコな電気自動車では無い!? キビキビ&小回り重視な楽しさとは

 4つめのポイントは、走行切り替えモードの変化の大きさ。ホンダeには走行切り替えモードがついていて、「ノーマル」と「スポーツ」を選択できます。

 その変化幅が大きく“キャラ変”の度合いはなかなかです。「ノーマル」だとリニアリティ重視で、アクセルの操作量に応じて忠実に加速。いっぽう「スポーツ」はアクセル踏み込み量よりも鋭く加速が立ち上がり、俊敏さが強調されるのです。その違いの度合いの大きさが印象的でした。

 違いが分かりやすいのはジワリと踏んだときの反応で、逆にアクセルを全開にするとどちらも同じ加速となります。どちらを使うかは、好みや状況に合わせればいいでしょう。「今は運転を楽しみたい」というときは「スポーツ」がおススメです。

 5つめの驚きは、道路でUターンしたときに現れました。片側1車線の道路でもスッと回れてしまったのです。驚くほどの小回りです。

 最小回転半径は、同社の軽自動車「N-BOX」(4.5m)よりも小さな4.3m。コンパクトカー「フィット」でも4.9mと聞けば、ホンダeがどれだけ小さく回れるかイメージできるでしょう。

 その理由は短いホイールベースに加えてタイヤの切れ角が大きいことですが、結果としてUターンだけでなく車庫入れなどでも小さく回れるメリットを実感。そんな小回り性能は、日常域での運転しやすさを高めます。

 こうして実際にホンダeを運転してみると、電気自動車だからといって単なるエコカーではないことがわかりました。動力性能に加えてハンドリングも含め、運転を楽しめるクルマに仕上がっているのです。

 ホンダeはバッテリーが35.5kWhと小さく、航続距離もWLTCモードで259km-283kmと昨今の電気自動車としてはそこまで長距離を走れるわけではありません。そこを短所とする判断はわからなくもありません。

 しかし、小さな車体とすることで、コンパクトカーならではの走りを実現させることで個性を際立てていると考えればキャラクターが分かりやすいでしょう。

「大は小を兼ねる」という考え方では理解しづらいのですが、街中での運転しやすさなど小さいからこその美点が存在するのです。

 もちろん、航続距離を考えると遠くに出かける際は不安で、ホンダeだけですべてのカーライフをまかなうのは現実的とはいえないという気持ちはよくわかります。

 だからホンダeは複数台所有の人が日常の街乗り用の贅沢なコンパクトカーとして選ぶのがもっともふさわしいスタイルでしょう。個人的にはキャラクターのまったく異なる「シビックタイプR」との2台所有のカーライフに憧れます。

 しかし、日常的に200kmを超える移動をする人は多くないでしょう。そこで「年に数回の遠出のときはレンタカーやカーシェアで済ませる」と割り切れば、ホンダeだけの所有でも充実したカーライフとなりそうです。