近年、欧州車を中心に普及したダウンサイジングターボエンジンは、日本でも一般的になりました。小排気量のエンジンにターボチャージャーを取り付け、出力を維持しながら小型軽量化や燃費の向上が期待できるため、多くのクルマが採用しています。一方で、数を減らしているのが、自然吸気の大排気量エンジンです。そこで、スポーティな大排気量エンジン搭載車を、5車種ピックアップして紹介します。

今はなき大排気量自然吸気エンジンを搭載した高性能モデルを振り返る

 1970年代に市販車に初めてターボエンジンが搭載されました。当初はとにかくパワーを追求したターボエンジンでしたが、2000年代になると、エコの観点からターボエンジンが利用されるようになります。

 現在、欧州車を中心に普及しているダウンサイジングターボエンジンは、小排気量で気筒数を減らしたエンジンに、ターボチャージャーを装着することで、エンジンの小型軽量化や、部品点数の削減、定速走行時の燃費向上など、数多くのメリットがあり、いまでは日本でも一般的になりつつあります。

 一方で、昔ながらの大排気量の自然吸気エンジンは、一部のアメリカ車やスーパーカー、高級車を除くと減少傾向にあり、とくにスポーティなモデルは激減してしまいました。

 そこで、かつて販売されていた高性能な大排気量エンジン車を搭載したスポーティなモデルを、5車種ピックアップして紹介します。なお、どれも中古車が比較的安価に手に入る実用的なモデルを厳選しました。

●日産「スカイライン 370GT」

 現行モデルの日産「スカイライン」は、シリーズ最強の405馬力を発揮する3リッターツインターボエンジンを搭載する「400R」が代表的な存在です。

 一方、2006年に登場した先代の12代目では、シリーズ最大排気量の3.7リッター自然吸気エンジンを搭載したモデルが存在しました。

 2008年のマイナーチェンジで、それまでの3.5リッターV型6気筒エンジンを、「フェアレディZ」などと同じ3.7リッターV型6気筒エンジンに換装し、最高出力は330馬力を発揮。

 出力の増大とともにアクセルに対してエンジンのレスポンスも向上させ、大排気量自然吸気ならではのスムーズかつ豪快な加速を実現しています。

 外観は抑揚のある流麗なフォルムを採用し、内装は重厚かつ高い質感で、プレミアムセダンにふさわしい意匠です。

 足まわりはフロントがダブルウイッシュボーン、リアにマルチリンクを採用し、サスペンションアームやリンク類にアルミ素材を多用するなど、スカイラインの名に恥じぬ運動性能と優れた乗り心地を両立しています。

 現在、比較的低走行の中古車が100万円台で、全体の相場は60万円前後と、コストパフォーマンスは高いといえるでしょう。

●「マークX 350RDS」

 トヨタのスポーティセダンの代表的存在だった「マークX」は、残念ながら2019年に生産を終了してしまいました。

 数少ない後輪駆動のセダンとしての伝統を守ってきたクルマで、最終モデルは2009年に登場した2代目にあたり、エンジンは203馬力を発揮する2.5リッターV型6気筒と、トップグレードの「350RDS」には318馬力を発揮する、高性能な3.5リッターV型6気筒自然吸気を搭載。全グレードとも6速ATが組み合わされます。

 外観は精悍な印象のフロントマスクに、均整の取れた流麗なサイドビューが特徴です。

 足まわりはフロントにダブルウイッシュボーン、リアにマルチリンクを採用し、前後重量配分をフロント54:リア46の理想に近いバランスにすることで、FRならではのシャープなハンドリングと、優れたコーナリング性能を発揮。

 現在、比較的高年式のモデルでも100万円台後半から200万円台前半の相場で、手を出しやすいですが、2019年3月に限定350台が発売された6速MTの「マークX GRMN」(第2弾)は、中古車はプレミア価格で販売されており、軒並み600万円以上の高値です。

●メルセデス・ベンツ「C63 AMG」

 1985年に日本で発売されたメルセデス・ベンツ「190E」は、BMW「3シリーズ」に対抗するために開発され、同社のエントリーモデルとして大ヒットを記録。

 この190Eシリーズの後継車が、現在も販売されている「Cクラス」です。

 初代Cクラスは1993年に登場し、ボディサイズは190Eよりも大きくなりましたが、十分にコンパクトで、日本でも人気となり、高性能なAMGモデルも登場しました。

 その後も、エントリーグレードからAMGモデルまで豊富なバリエーションを展開しながら代を重ね、2007年に発売された3代目では、シリーズ最強の「C63 AMG」が加わります。

 C63 AMGはセダンだけでなく、ステーションワゴンとクーペも設定され、搭載されたエンジンはEクラスやSLクラスにも採用された6.2リッターV型8気筒自然吸気で、最高出力は457馬力を発揮。

 スタビリティコントロールやトラクションコントロールをOFFにして走るのは、危険と称されたほどのパワーです。

 現在の中古車相場は初期の年式であれば200万円台前半から、後期のモデルでは300万円台に達してしまいますが、当時の新車価格が1100万円から1500万円だったことを考えると魅力的ではないでしょうか。

 なお、現行モデルの4代目Cクラスでは、メルセデス-AMG「C63 S」が最高峰のグレードとして位置し、エンジンは最高出力510馬力を誇りますが、4リッターV型8気筒ツインターボにダウンサイジングされています。

大排気量エンジンを搭載した欧州ホットハッチ2台

●フォルクスワーゲン「ゴルフ R32」

 1974年に、フォルクスワーゲン「タイプ1(ビートル)」の後継車として登場した初代「ゴルフ」は、巨匠ジウジアーロによる秀逸なデザインと、基本性能の高さから、後にFFコンパクトカーのベンチマークとなった名車です。

 日本には輸入されませんでしたが、初代ゴルフには高性能モデルの「GTI」がラインナップされ、代を重ねてもGTIの伝統は受け継がれていき、最新モデルの8代目ゴルフにもラインナップされる予定です。

 このGTIとは別に、高性能なゴルフが登場。それが2003年に追加された4代目ゴルフの「R32」です。

 車名は3.2リッターV型6気筒SOHCエンジンを搭載していたことに由来し、駆動方式もGTIが伝統的にFFのみだったのに対して、R32はフルタイム4WDを採用。

 さらに、2006年には5代目ゴルフにもR32が設定され、最高出力250馬力を発揮する3.2リッターV型6気筒DOHCエンジンに、先代同様フルタイム4WDが組み合わされました。

 このV型エンジンはユニークで、V型6気筒の場合、シリンダーのはさみ角が60度から90度に設定されるのが一般的ですが、R32のエンジンは15度と、いわゆる狭角V型エンジンです。

 狭角V型エンジンはコンパクトなサイズに収められるメリットがあり、同様な手法でつくられたエンジンは、フォルクスワーゲングループのさまざまな車種にも搭載されました。

 コンパクトな車体に大排気量エンジンの組み合わせは、重量バランス的には決して良いとはえませんが、GTIとは異なる豪快な走りのフィーリングは、R32ならではといえます。

 中古車の物件数はそれほど多くないのですが、相場は100万円台中盤が主流です。なお、現在のラインナップではR32は消滅し、代わりに「Rシリーズ」がラインナップされています。

●アルファ ロメオ「147 GTA」

 かつて、アルファ ロメオのモデルのイメージは、コンパクトなFRクーペやセダンで、高性能なDOHCエンジンを搭載する硬派なクルマでしたが、近年はコンパクトカーやSUV、FFのモデルなど幅広く展開しています。

 なかでも、1994年に登場した「145」は小型の3ドアハッチバックのFF車で、サイズ感の良さや高性能なエンジンを搭載していたため、日本でも人気のモデルとなりました。

 2000年には後継車の「147」が登場し、145の直線基調のボディから曲面を多用したグラマラスなボディに一新され、日本において145以上の人気を獲得します。

 そして、2002年に高性能なグレードの「147 GTA」が登場。

 GTAというグレードは1960年代のレースベース車に付けられた名前で、当時、大胆に軽量化した車体に高性能なDOHCエンジンを搭載していた、ピュアスポーツカーとしていまも語り継がれる存在です。

 147 GTAに搭載されたエンジンは3.2リッターV型6気筒自然吸気で、最高出力は250馬力を発揮し、トランスミッションは6速MTと6速AMTの「セレスピード」を設定。

 ボディも、サイズアップされたタイヤを収めるためにワイドフェンダー化し、迫力ある外観を演出しています。

 現在の水準ではそれほど高出力ではありませんが、大排気量自然吸気エンジンならではのレスポンスの良い加速感と、官能的と評されたエンジン音によって、アルファロメオファンを魅了しました。

 なお、147は2010年に生産を終了し、後継車は「ジュリエッタ」です。

 中古車はゴルフ R32と同様で、物件数は多いとはいえませんが、100万円未満が中心で、6速MTモデルの方が人気のためか、若干高く、100万円台前半が相場です。

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 日本の税法上、大排気量で古いクルマは手が出しづらい状況です。ルールとして仕方のないことなのですが、せっかく優れたクルマが安価で買えても、維持費を考えると二の足を踏んでしまう人も多いのではないでしょうか。

 ただし、今後、大排気量の自然吸気エンジンを搭載したクルマが出てくることはほとんど無いため、程度の良い物件があるうちに手に入れた方が、得策かもせれません。