アストンマーティン初となるSUV「DBX」がついに日本上陸。コンペティターである「ウルス」と「ベンテイガ」では、新たに家族で使用するというカスタマーも増えてきており、女性が運転する機会も多いという。そこで、女性モータージャーナリスト飯田裕子さんがDBXを試乗して感じたことをお伝えしよう。

満を持して登場したアストンマーティン初となるSUV

 アストンマーティンから登場した初のSUVモデル「DBX」は、ベントレーやランボルギーニ、そしてロールス・ロイスなどもSUVを市場に送り込んでいるいま、後発であることは否めない。

 しかしそれを少しもマイナスに感じさせぬほど、全身に他ブランドとは異なる「新しさ」を纏ったモデルであり、最新のアストンマーティンらしさがこの1台に凝縮されている印象を抱く。

 ここではDBXのより細かな部分に目を向け、DBXのアストンマーティンらしいSUVぶりをお伝えできればと思う。

●アストンマーティンのDNAが色濃く感じられるデザイン

 ドライブフィールとデザインや質感、どちらが気になるだろう。実はそのすべてを隅々までデザイン(設計)されているようで、結果、DBXの世界観が完成されているようだ。

 ただこれは少なくとも前述のブランドたちにも同じことがいえるワケで、だからこそそれぞれ魅力的な存在価値を認めることができるのだ。

 ではDBXの価値はどんなところにあるのか。今回はアストンマーティンといえばドライブフィールに期待する人も多いと思うけれど、それを魅力的にしている重要な要素、デザインやクオリティについて特筆したいと思う。

 まずエクステリアデザインでは、大きく開いたフロントグリル(「DBグリル」と呼ばれている)のカタチとその上に載るエンブレム、フェンダーに沿って吊り上がるヘッドライトのディテールや配置から「DB11」のテイストが感じられる。

 リアでは「ヴァンテージ」からインスピレーションを得たと明言するフリップ付きテールゲートが、ヴァンテージのソレを知らない人にとってもアストンマーティンらしい個性として目を引くのではないか。

 アストンマーティンらしさといえば、どこか上品ななかに「色気」を醸し出すところに女性も惹かれる。

 DBXは、ボディサイドにもアストンマーティン・ブランドとしての共通性が見られる。張り出しが強められたリアフェンダーは後輪駆動のスポーツカーのようなイメージを抱かせ、躍動感を演出するくびれと緩やかな弓を描くようなウエストラインは、前後タイヤの連続性をイメージさせる。そしてその上に流麗なキャビンが載る佇まいは、アストンマーティンのそのほかのモデルとの共通性を感じることができるのだ。

 曲面の凹凸の滑らかさや艶やかさは、スポーティなSUVながらエレガントでもある。これほど陰影を武器に情緒感が演出されたSUVはないのではないか。

 ちなみにこのフォルムは、単にデザイン=見栄えのためにデザインされたのではなく、空力をデザインしているという。車体の上方のエアはルーフの上、リアウイング、リアウインドウ、リアフラップへと流れるように計算され、空力に優れる上にリアウインドウが汚れにくく、またノイズレベルを最小限に抑えられているそうだ。

 実際、DBXは音や振動を抑制する補強もされているだろうけれど、とにかく雑音や雑味が排除されていた。

SUVでありながらGTである「DBX」とは?

 アストンマーティンの場合、インテリアについては様々な仕様をオーナーが選ぶことができるため、ここで紹介する雰囲気はその一例だ。つまりよりスポーティな仕様に仕上げることも可能だが、この個体は色や素材から抱く印象も含め、美しくて優雅、そして上品な仕上がりになっている。

●自然な素材にこだわったインテリア

 アストンマーティンが、DBXのインテリアでこだわったのは「自然な素材」だという。たとえば、上質なレザー(Bridge of Weir Leather社)と80%の天然ウールを組み合わせて構成されている点などがそうだ。さらに試乗車は、ウッドパネルも組み込まれ、本物感と高級感をクルマ側から過剰にアピールすることなく、心地よい空間が創出されている。

 おかげで最初に目が向いたのはダッシュボードやドアサイドに張られたレザーだった。レザーを摘み上げてステッチがほどこされるという手の込んだデザインが目を引いたのだ。このレザーがスピーカーをも覆っているのは珍しいのではないか。

 さらに今回採用されている新素材のフェルトのような仕上がりのウール素材は、自動車用ファブリックとしては初採用になるそうだ。合成繊維ながらウールの含有量が高く、ウールマークのウールリッチブレンド認証を取得しているとのこと。耐久性、自然の撥水性も備えているというこの素材が室内の印象に温かみを与えているのは間違いない。

 さらに天井のガラスルーフを覆うアルカンターラにも注目。ロールブラインド機構が採用され、アルカンターラの天幕が静かに開閉する仕組みとなっている。その薄さと開閉動作もDBXの実用を優雅に演出。指で軽く押すと、ピンピンとした張り感が保たれ、贅沢な気分も増すようだった。

 今回、DBXの開発にあたってはFemale Advisory Board(女性諮問委員会)や様々な富裕層に関するカスタマークリニックの専門家の意見を参考に、スイッチやダイヤル類、居心地の良さを追求しているのだとか。

 その成果として「あのアストンマーティンで!?」と驚かされたのが、収納スペースにも多大な配慮がうかがえたこと。手前に浮かんでいるように見えるセンターコンソールの裏側には、小ぶりなバックも収納できる(見えづらくデザインを邪魔しない)スペースが生まれ、ドアポケットまでちゃんとある。スペースについてはラゲッジもしかり。ボディサイズに相応しい収納量が確保されている。

 スイッチやダイヤル類の操作フィールは重さや軽さ、感触などの質感も申し分なく造り込まれており、視覚的な高級感のみならず隅々まで質感が整えられている。

●スポーツカー乗りも満足するドライブフィール

 アストンマーティン初のSUVは、ラインナップ中唯一、大人4人がゆったりと「快適に」移動できるモデル。ADAS(先進運転支援システム)機能もハンズオフこそできないもののようやく他ブランドに追いついた。

 DBXは、性能を優先した同社の他モデル(スポーツカー)とは異なるクルマづくりが随所でおこなわれ、実用&機能美にも新しいアストンマーティン流を見て取ることができる。が、だからといって走行性能が犠牲になってはいない、というのは想像の範疇であり、むしろどんな走りをするのかに興味があった。

 DBXのために新規で開発されたプラットフォーム、軽量化が図られたボディは、これまでのスポーツカー開発のノウハウが活かされ、それはパワートレインやドライブフィールにも同じことがいえる。

 4WDという新しい駆動力を得て、48Vエレクトリック・アンチコントロールシステムやエレクトリックダンパーなど、DBXのために最新技術が採用されている。

 AMG製の4リッターV8ツインターボエンジンに、9速ATを組み合わせた動力は発進のマナーも良く、高速領域まで厚みのあるトルクとパワーをリニアに優雅にコントロールすることができる。

 乗り心地は滑らか、室内は極めて静粛性に優れる一方で、エンジンサウンドは効果的に聞こえてくるし、同乗者を不快にさせぬ穏やかな動きに運転操作上のまどろっこしさなどは皆無。

 ハンドリングは良い意味で車体の重量感を正しく伝えながら、軽快感を伴って走るフィーリングは想像を超えていた。

 ちなみにDBXは同ブランド孤高のスーパーGTモデルである「DBSスーパーレッジェーラ」と同等のブレーキ性能が与えられているというのも頼もしい。

 またDBXには、走行モードに新たに悪路モードが追加されている。ツーリング気分で走らせれば滑らかにまさにGTカーのように走り、スポーツモードでなら動力系はもちろんエキゾーストのマネージメントも変更され、シャープなハンドリングと猛々しいサウンドとともにスポーティなドライビングを楽しむことができる。

 英国車らしさを気品と贅とクラフトマンシップ、そしてスポーツカーを愛するエンスージアストをもくすぐるパフォーマンスを併せ持つ、アストンマーティンの最新モデル、DBXはSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)でありながら、他のライバルでは得られない優れたGT(グランド・ツーリング)ぶりも併せ持つ、類い希なモデルといえそうだ。