三菱自動車といえば、かつては「ランサーエボリューション」や「パジェロ」などがパリ・ダカールラリーなどで活躍したことで、「ラリーの三菱」や「四駆の三菱」といわれるほど高い人気を誇っていました。しかし、燃費不正などにより企業イメージはダウンし、国内での販売台数も輸入車ブランドよりも下回っている状況です。今後、三菱自動車はどのような復活劇を描いているのでしょうか。

コロナ禍で大打撃も、「財閥パワー」で乗り切れる?

 かつては「パジェロ」や「ランエボ」などで存在感を示してきた三菱自動車ですが、近年では元気がないともいえます。今後、三菱自動車はどうなっていくのでしょうか。

 三菱自動車は2020年7月、2021年3月期の連結決算予想として、最終的な損益が3600億円の赤字となる見込みを発表しました。

 新型コロナウイルスの影響で世界での販売台数が急減し、工場閉鎖や人員削減などの構造改革に費用が必要だと説明しています。

 三菱自動車の2021年3月期予想では、売上高は前期比35%減の1兆4800億円、営業損益は1400億円の赤字(前期は127億円の黒字)の見込みであり、世界販売は25%減の84万5千台との計画です。

 コロナ禍の影響で、国内販売は2020年1月から9月期で5万4021台となり、前年同期比61.7%でした。

 加えて、主力市場の東南アジアを含め、北米や欧州などでも軒並み販売が落ち込んでいるため、やむを得ない数字のようには思えますが、それでもかつて「三強」の一角を占めていたメーカーとは思えない数字です。

 そして、決算予想を発表したその日、往年の稼ぎ頭であったパジェロを製造する子会社の「パジェロ製造」の閉鎖決定も発表しました。

 コロナ禍の影響を差し引いたとしても、そもそも自動車メーカーとして存続していけるのかどうかすら不安になる状況といえます。

 それでも三菱自動車は簡単には潰れないといえそうです。三菱自動車は、2000年のリコール隠しや、その後の不正な燃費発表などの不祥事を繰り返してきましたが、そのたびに大財閥・三菱グループの支援を受けて乗り越えてきました。

 三菱財閥の結束力は、同じ財閥系である三井や住友に比べて強いとされています。

 三菱グループ26社の社長・会長で組織する中核機関として「金曜会」と呼ぶ会議がありますが、グループ企業に大きな不祥事あった場合、御三家といわれる三菱重工業、三菱商事、東京三菱銀行の金曜会・代表幹事の指令で事務局が広報発表などの緊急対応をおこなうともいわれ、「組織の三菱」といわれるゆえんとされています。

 また、日本最大の複合企業、三菱グループの経済力は強力です。東京商工リサーチは2020年春、三菱グループと取引のある国内企業を含めた売上高の総額を割り出しました。

 それによると金曜会26社の仕入れ先企業、販売先企業、関連出資先企業の重複を除いた総売上高・市場規模は280兆円にもおよび。関係する従業員総数は約450万人に達するというのです。

 仮に、それらの関係者が三菱ブランドを積極的に購入するとすると、それだけでもかなりの市場規模となります。従来から三菱自動車の売上は、彼ら三菱グループの仲間たちが支えてきたといわれています。

海外では根強い人気、日産傘下で再建を図る

 現在、三菱自動車は日産自動車から約34%の出資を受け、傘下に収まって再建を目指しています。

 その再建途上で日産の会長だったカルロス・ゴーン元CEOによる「お家騒動」が勃発、そして今回のコロナ禍と、再建の道のりは険しいのが現状です。

 そんななか、三菱自動車は今回の決算予想発表において業績回復に向け、経営資源を東南アジア事業に集中する方針を示しました。

 そのうえで、インドネシアやフィリピンで日産と協業できないか検討を始めていることも明らかにしています。

 国内では、前述した不祥事でイメージダウンしてしまっている三菱自動車ですが、海外、なかでも東南アジア諸国での評判はよく、販売も好調です。

 三菱自動車によれば、2019年の海外への輸出実績は37万5512台です。また、海外生産台数でも74万9000台以上で、その拠点の多くが東南アジアに集中しています。

 例えば、タイには完成車工場とエンジン工場が、フィリピンには自動車生産工場と部品製造工場、加えて、インドネシア、ベトナムに完成車工場があるなど、販売のみならず雇用も生み出しています。このように、東南アジア各地域への経済的な貢献度が高いのも三菱自動車の特徴です。

 また、1997年から中国での合弁企業である「瀋陽航天三菱」がエンジンの現地生産を開始しています。

 拡大を続ける中国の自動車市場で、多くの中国メーカーにエンジンを供給し、2017年には累計500万基を達成しています。その後も、成長する中国市場でエンジン生産のライセンス供与や技術指導で収益をあげています。

 2018年には、広州汽車集団、三菱商事、三菱自動車による車両生産・販売合弁会社である広汽三菱汽車が、湖南省・長沙市の新工場で新型エンジンの生産を開始したほか、研究開発センターの起工も進めているなど、アジア戦略を積極化させています。

 国内では厳しい状況が続く三菱自動車ですが、東南アジアや中国でのビジネスが着実に収益を上げているといえます。

 一方、国内における三菱自動車の経営および従業員の雇用確保は、「NMKV」という組織に掛かっているようです。

 NMKVが設立されたのは2011年6月、日産自動車と三菱自動車が折半(資本金1000万円の50%をそれぞれ負担)してつくられました。

 設立の目的は、NMKVがイニシアティブを取って、日産と三菱が持っているクルマ作りのノウハウを融合し、新しい軽自動車を企画開発してマーケットに送り出すことです。

 ただし、NMKVはあくまで企画会社のため、生産設備などはありません。そのため、NMKVで企画された軽自動車はおもに三菱自動車水島工場で生産されます。

 日産としては、独自に軽自動車生産のための設備を新設するよりも、傘下となった三菱自動車の設備を使うほうが効率的と考えたものと思われます。

 つまり、国内において三菱ブランドの販売台数は決して多くありませんが、日産に供給している軽自動車も含めると、実質的な販売台数はより多いことになります。

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 パジェロやランサーエボリューションなどの名車を輩出してきた三菱自動車ですが、近年ではすっかりと影を潜めています。

 しかし、その圧倒的なグループ力や、海外での地盤を活かし、再起を図っているといえます。

 そして、クルマ好きや往年の三菱ファンのためにもランサーエボリューションやパジェロの復活を熱望したいところです。