日本市場で人気の高いコンパクトカー。2020年2月にはトヨタ「ヤリス」やホンダ「フィット」がガソリン車とハイブリッド車を設定して発売されました。一方で、後発となる日産新型「ノート」は同社のハイブリッド技術となるe-POWERのみの展開です。なぜ、新型ノートではガソリン車が廃止されたのでしょうか。

なぜ新型ノートにはガソリン車が設定されないのか?

 近年、世界中で「ガソリン車/ディーゼル車の販売禁止」が検討されており、欧州や北米、中国などでは2030年から2040年に電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)以外のクルマの販売が出来ないという方針を打ち出しています。
 
 そのため、各自動車メーカーでは電気車のラインナップが拡充しつつあり、日産が新たに発売するコンパクトカー新型「ノート」でもガソリン車を廃止し、全車で「e-POWER」を搭載するといいます。なぜ、売れ筋モデルの新型ノートのガソリン車を廃止したのでしょうか。

 海外では、前述のように2030年から2040年に掛けて電気自動車や燃料電池車しか販売出来なくなります。

 一方の日本では、2050年に販売されるすべてのクルマをEVやハイブリッド車などのモーターを使った電動車とする目標を打ち出しています。

 海外とは異なり、2050年でもガソリンエンジン/ディーゼルエンジンとモーターを組合せたハイブリッド車の販売が認められる予定です。

 このように地域差は存在するものの、電動車が急速に普及していくのは確実ですが、2020年時点ではまだまだガソリン車の需要も高いのが日本市場の現状といえます。

 現在の日本市場では、ガソリン車、ディーゼル車、ハイブリッド車、電気自動車、燃料電池車が販売されており、販売台数上位のモデルの多くにはガソリン車とハイブリッド車を設定しています。

 過去10年ではハイブリッド車の比率は増えつつありますが、それでもガソリン車のほうが車両価格が安価なこともあり、近場の移動がメインな使用用途において人気のある軽自動車やコンパクトカーでは、ガソリン車のほうが支持される傾向です。

 そんななかで、2020年11月24日に発表された新型ノートは、全車に日産のハイブリッド技術となるe-POWERを搭載することが明らかになりました。

 e-POWERはガソリンエンジンとモーターを融合した電動パワートレインです。

 ガソリンを燃料にエンジンが発電機を回して電気をつくり、大出力モーターのみで100%駆動。電気自動車「リーフ」のようななめらかな走りを楽しむことができます。

 2016年に先代となる2代目ノートに初採用された後、2018年に現行セレナ、2020年にキックスと相次いで搭載。

 先代ノートや現行セレナでは、ガソリン車とハイブリッド車を設定していますが、実際に、ノートやセレナのパワートレイン販売比率では、購入者の約7割がe-POWERを選んでいるといいます。

 キックスは海外向けにいくつかのガソリンエンジンを地域によって設定しているものの、日本市場では新型ノートと同じくe-POWERのみの展開です。

 しかし、キックスはノートやセレナと違いタイの工場で生産されて日本に輸入されて販売されるという経緯もあり、売れ筋のパワートレインとなるe-POWERに絞るという「選択と集中」の結果といえそうです。

 では、なぜ国内市場で好調な売れ行きかつ国内生産の新型ノートでも、e-POWERのみの販売となったのでしょうか。

新型ノートに搭載される第二世代e-POWERが「ガソリン車廃止」の要因?

 新型ノートに搭載されるe-POWERは、システムを大幅に刷新しパワーアップした第二世代です。

 パワートレインのハードウェアとその制御を刷新し、より力強く上質な走りと効率化を高い次元で両立。さらに、スムーズで思い通りの「加速」や、なめらかな「減速」の制御、電動パワートレインならではの抜群の「静粛性」などを格段に向上させました。

 第二世代e-POWERについて、チーフビークルエンジニアの渡邉明規雄氏は次のように説明しています。

「先代ノート、セレナ、キックスに第一世代e-POWERを搭載してきましたが、新型ノートでは第二世代e-POWERということで、主要コンポーネントやそれらの制御技術の設計をすべて見直したことで、よりEVに近い力強く上質な走りを実現しています」

 具体的には、モーターとインバーターを刷新。モーターは先代ノートに比べ、トルクを10%、出力を6%(80kw→85kw)向上させ、よりパワフルで気持ちの良い発進加速と、中高速からの追い越しでの力強い加速感を実現。

 このように、先代ノートや現行セレナ、そしてキックスとは異なるe-POWERが搭載され、この第二世代e-POWERを搭載するのは新型ノートが初となります。

 また、日産は事業構造改革「Nissan NEXT」のなかで、「ホームマーケットとなる日本の再強化」、「2023年度末までにEV2車種、e-POWER4車種を投入」、「モデルの若返りを図り、車齢平均を4年以下」、「新技術は日本から投入」などを明らかにしています。

 そうしたなかで、新型ノートの投入背景を日産の執行役副社長・星野朝子氏は次のように述べています。

「新型ノートは、第二世代e-POWERを搭載したことで、世界中の日産車においてもっとも注目されています。

 さらに、日本で確実に成功を収めることが日産の電動化への道を確実なものにすると思っており、日産全体の期待を背負ったクルマです」

 日産復活の期待を背負ったクルマとして発売される新型ノートですが、販売面ではガソリン車の設定が熱望されています。なぜ、e-POWERのみなのでしょうか。

 これについても、前出の執行役副社長・星野朝子氏が次のように説明しています。

「ガソリン車があったほうが沢山売れると思いますが、日産としてゼロ・エミッションの社会を我々がリードして作っていくという会社のビジョンのためや、日産が進めている電動化に集中させていくということを決めています。

 それに則った代表的なモデルとして、この新型ノートをe-POWERだけで出すことになりました。

 必ずこれを成功させて低炭素社会への貢献を成し遂げていきたいと思っています」

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 ライバルとなるトヨタ「ヤリス」やホンダ「フィット」では、ガソリン車とハイブリッド車が設定されるなか、e-POWERのみの新型ノートがどこまで販売面で成功できるかが今後の鍵となりそうです。