エコやダウンサイジングが主流の現在、高性能エンジンの代名詞でもあるV型エンジンが減少傾向です。ハイブリッドやEVが主軸になり、絶滅しそうなV型エンジンですが、いまなら新車で買えるV型エンジン搭載車を5台ピックアップします。

かつては高級車の証であった「V型エンジン」

 昨今のクルマはエコで環境性能に優れたものが良しとされ、どのメーカーもパワーユニットのダウンサイジング化を目指すようになりました。

 その影響で、かつては高級車の証とされた「V型エンジン」の搭載が徐々に減少。パワフルかつスムーズで官能的なサウンドが魅力のエンジンが、このままいけば絶滅してしまいそうです。

 そこで今回は、絶滅の危機に瀕している、V型エンジンを搭載するモデルを5台ピックアップして紹介します。

●トヨタ「ランドクルーザー」

 トヨタ「ランドクルーザー(ランクル)」は、1951年から続く大型クロスカントリーモデルで、単一車種としては日本一長い歴史を持っています。

 国内では、ライトデューティの「ランドクルーザープラド」も併売されていますが、メインは2007年にデビューした「200系」です。2015年には大幅なマイナーチェンジが施されました。

 ランクルのボディは、全長4950mm×全幅1980mm×全高1870mm、車両総重量は3130kg(ZX)を誇る、まさにモンスターマシンです。

 心臓部は、3t前後の大きなボディをぐいぐい引っ張るだけのキャパシティが必要になることから、ランクルには318馬力を発揮する4.6リッターV型8気筒エンジンが搭載されています。

 それだけの重量感あるボディを走らせるためには、単純な最高出力だけでなくトルクも含めたエンジン全体のキャパシティが必要になることから、V型8気筒エンジンという大型エンジンが搭載されたのでしょう。

 なお、海外仕様には、4.6リッターV型8気筒ツインターボディーゼルや4リッターV型6気筒、5.6リッターV型8気筒など幅広いエンジンラインナップが用意されています。

 また、信頼性の高い4WD機構だけでなく、「AHC」と呼ばれる自動車高調整機能やサスペンションの減衰力を自動制御する「AVS」など先進技術を盛り込み、ラグジュアリーとヘビーデューティという相反する世界観を高次元で融合させました。

 ちなみに、現行モデルは2007年デビューで13年を経過しているものの、「プリクラッシュセーフティ(歩行者検知機能付衝突回避支援タイプ)」や「レーダークルーズコントロール」「レーンディパーチャーアラート」など先進の安全技術もフル装備しています。

●レクサス「LS」

 レクサスのフラッグシップセダンであり、海外でも最上級クラスに位置する「Fセグメント」に該当する高級セダンが「LS」です。

 レクサスが誕生した1989年当時から受け継がれるモデルで、当初はトヨタ「セルシオ」と姉妹車でした。

 2017年に誕生した5代目LSですが、2020年11月におこなわれたマイナーチェンジでは大幅に改良が加えられました。

 LSはFセグメントに属するだけあり、全長5235mm×全幅1900mm×全高1450mm(2WD)という堂々としたサイズですが、パワーユニットは、「LS500」が3.5リッターV型6気筒ツインターボ、ハイブリッドの「LS500h」には3.5リッターV型6気筒+モーターを搭載しています。

 3.5リッターV型6気筒ツインターボエンジンは、新しい共通燃焼技術を採用しトルクと燃費性能を両立させたロングストローク型です。

 これにより、422馬力ものハイパワーと61.2kgmもの大トルクを実現させつつ、WLTCモード燃費は10.2km/L(2WD)を記録しています。

 LSは3.5リッターV型6気筒という、高級感とエコ性能のバランスを取るのにちょうどいい排気量のエンジンを選択しており、実際、他社のFセグメントサルーンの多くも6気筒を採用していることから、このクラスのスタンダードともいえます。

 多気筒になる大排気量エンジンの全長をコンパクトにできるV型エンジンのメリットは、高級サルーンに求められる高い衝突安全性(クラッシャブルゾーンや各種安全装備など)も確保しやすくなり、ハイブリッドシステムの搭載に必要なスペースも稼げます。

 なおマイナーチェンジでは、エンジンの数値こそ変化はありませんが、トルク特性が見直されました。

 使用頻度の高い回転域でのトルクの立ち上がりを向上させるとともに、静粛性もアップ。

 また減衰力可変ダンパー「AVS」を採用し、優れたステアリングの応答性とスタビリティを向上し、レクサスらしいスポーティで上質な乗り心地を実現しています。

 これまでのFセグメントであれば、5リッター超えの大排気量エンジンを搭載するのが常でしたが、すでにこのクラスでもダウンサイジングターボやハイブリッド化は当然の流れのようです。

●日産「エルグランド」

 エンジンの基本設計に非常にお金がかかります。そのため1度開発したあとも各部に改良を加えたり、過給器(ターボやスーパーチャージャーなど)を追加することで、長い年月改良を続けながらさまざまな車種に展開していくことになります。

 2020年に2度目のマイナーチェンジを受けた「エルグランド」にも、熟成が進んだV型エンジンが搭載されています。

 現行モデルの3代目が登場したのは2010年。それまではFRを採用しV型6気筒エンジンを搭載したスポーツミニバン的な存在で一世を風靡しましたが、3代目からはスペース効率や低床フロア実現のためにFFベースに変更。しかしV型エンジンは継続して採用されています。

 エルグランドは全長4965mm×全幅1850mm×全高1815mm(2WD)と、ミニバンとしては十分立派なサイズ。

 このボディに組み合わせられるのが、2.5リッター直列4気筒エンジンと3.5リッターV型6気筒エンジンです。

 V型エンジンの「VQ35DE」は、1994年に誕生しており、30年近く使用されているエンジン形式。

 目新しさはないものの熟成が進み、8.7km/L(WLTCモード)の燃費を記録。3.5リッターとしてはまずまずの数字を記録しています。

 それでも3.5リッターならではの余裕ある280馬力というパワーと上質な回転フィーリングで、後付け装備では味わえない高級感を感じさせてくれるのが最大の魅力です。

 仮にエルグランドにハイブリッドモデルが追加されたとしても、V型エンジンは搭載し続けてほしいものです。

北米市場はまだまだ大排気量&V型が主流

●ホンダ「NSX」

 世界のホンダが送り出す、スーパースポーツモデルが「NSX」です。

 F1で培った技術をふんだんに盛り込み、世界各国のスーパーカーに負けない走行性能と美しいスタイリングで憧れの存在の1台になっています。

 マクラーレンとともに全盛を誇った第2期F1参戦時に「世界に通用するホンダのフラッグシップ」として、初代NSXが1990年に誕生しました。

 毎年熟成を重ね2005年に生産は終了しましたが、10年の時を経て、2016年に2代目と生まれ変わりました。

 現行モデルは、初代の特徴でもあったV型6気筒エンジンをミッド(運転席後方に)マウントするレイアウトを継承しつつ、3基のモーターと組みあわせたハイブリッドシステム「SPORT HYBRID SH-AWD」を採用。

 AWD(4輪駆動)とすることで、初代以上のハイパワーを余すところなく路面に伝え、スーパースポーツらしい走行性能を実現しています。

 ボディサイズは全長4490mm×全幅1940mm×全高1215mmと、低くワイドなスタイルです。

 それでもゴルフバッグが積めるリアトランクを装備するあたりは、初代と同様に「コンビニにも行けるスーパースポーツ」としての実用性も兼ね備えています。

 3基のモーターと組み合わせられたエンジンは、レーシングエンジンメーカーとして有名なコスワース社との共同開発となる3.5リッターV型6気筒ツインターボエンジンです。

 エンジンで507馬力を生み出しますが、ここにハイブリッドを組み合わせ、システム全体で581馬力ものハイパワーを実現しています。

 とくに旋回性能に優位なミッドシップにこだわるためには、エンジン本体のコンパクトさが必須。エンジン本体の全長を抑えることができるV型エンジン搭載は必然ともいえます。

 現在のF1でもハイブリッド化が進んでおり、さらにEV化が進む可能性すらある現在、ホンダにとってこの2代目NSXが最後のV型エンジン搭載スーパースポーツになる可能性もあります。

●シボレー「カマロ SS」

 V型エンジンがもっとも好きな国はアメリカともいえるほど、アメ車にはV型エンジンを搭載した大排気量モデルが数多くラインナップされています。

 アメ車の最大の魅力は、大排気量V型8気筒エンジンが持つ独特な走行フィーリングですが、そんな古き良き大排気量V型8気筒エンジンを正規輸入の新車で味わえるのが、シボレー「カマロ SS」です。

 大陸横断だけで1000km以上ある国土の大きいアメリカでは、昔からクルマが重要な移動手段でした。

 長距離移動中にエンジントラブルで何気筒か止まってしまっても走り続けられるようにと、大排気量かつV型の多気筒エンジンが進化してきた歴史があります。

 最近ではダウンサイジングターボ搭載など環境性能に配慮したモデルも増えましたが、いまだにアメリカ自動車文化の伝統である大排気量V型8気筒を好む人が多いのも事実です。

 2015年に誕生した6代目カマロですが、日本には、2リッターターボのクーペ「LTRS」とオープンの「コンバーチブル」、大排気量の6.2リッターV型8気筒(スーパーチャージャー付き)を搭載する「SS」の3種類が導入されています。

 高性能なスポーツGTの「SS」が搭載するV型8気筒エンジンの最高出力は461馬力と、さすがのハイパワーとなっています。

 カマロ SSは全長4785mm×全幅1900mm×全高1345mmのフルサイズボディながら、2ドアクーペという贅沢な1台。

 理論や効率とは違う世界観で作られた「マッスルカー」の伝統をいまなお受けつぐ、ロマン溢れるモデルです。

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 長きにわたりV型エンジンは高性能モデルの証ともいえ、今後も受け継がれてほしい伝統でもあります。

 あとどれくらい、レシプロ(ガソリン)エンジンが表舞台に居続けられるかは未知数ですが、なくなる前にV型エンジン独特の滑らかな回転フィーリングを堪能したいものです。